ザンビアの伝統的な布であるチテンゲで、ずぼんを新調した。町の片隅で30年以上チテンゲ服の仕立てをしているというそのお母さんは、ミシンとチテンゲと笑顔の似合うとても温かい人だった。人の肌に直に触れ、人を包む衣服のあの優しさは、彼女のような製作者の愛情のこもった作業あってこそだと、僕には思えた。

できあがりを楽しみにして彼女の作業場へ行くと、「待っていたよ。ポケットを3つ作ったよ。」と、完成したずぼんを広げて見せてくれた。手にとってみると、本当だ、左右2つのポケットに加えて、お尻の部分にも3つ目のポケットをつけおいてくれた。注文するときにポケットをつけておいてと頼んだから、僕がポケット好きであることを見抜いたのかもしれない。うれしかった。

お代のK10,000(約200円)を払うと、僕はその場で(棚の影で隠れて)新しいズボンに着替えた。「似合っているよ!」と言われ、照れくさいのを隠して僕はポケットに手をつっ込んだ。僕の癖だ。「ありがとう!」と言って別れを告げると、僕は家路についた。

家に帰るまでの道で、町の人たちの視線が僕に集まるのを感じていた。黄色と赤と黒、僕にしてはちょっと派手だったかな。ザンビアの伝統着チテンゲをまとった僕は、逆に異国感を助長していたかもしれない。それでも、すれ違う生徒たちに「センセ!ナーイス!」と気持ちのいいお世辞に、僕は満更でもないのと、少しの照れに、またしてもポケットに手をつっ込んで、そそくさと家路を急いだ。あの優しい笑顔を思い出しながら。


青年海外協力隊(理数科教師)の一生一句~アフリカから一句、詠ませていただきます。~-お母さん(ミシンが似合う。)
                お母さん(ミシンが似合う。)


※おかげ様で、本日200首達成しました!ザンビアに来て詠み始めて1年半、残り半年余りのの任期も、感謝の気持ちを忘れず、ザンビアで感じた心の揺れを、読者の皆様と共有できたらと思います。これからも、何卒よろしくお願いいたします。