会社から自宅へ帰りついた時、

家族はどこかよそよそしい表情で私を見つめていた。

私がその理由を聞くまでには至らず、

両親は開口一番に、ただ簡潔に、言った。

あまりに突然でそして、また、そうか、とも納得もした。

9度超の熱にうなされ、兄は寝込んでいる。

数日前に兄の友人と遊びに出たことがきっかけだったようだ。

昨日話した時の彼には具合の悪そうな素振りもなく。

恐らく、急に熱が上がったのだろう。

私も1か月ほど前に感染し、10日休みを頂いたばかりで、

部屋のドアから覗き見えた兄の寝顔に、心の中でドンマイと呟く。

兄などには、それほど心配はしない。

まずなにより、今はどう対処すべきかが重要なのだ。

私は両親と話して

しばらくの間、近くの祖母の家で過ごすことに決まった。

やや面倒くささと不安感に煽られる。

身支度は簡潔に、今日明日で必要なもの限りを持っていく。

思ったよりも手が一杯だ。

車に乗りこみ、祖母に電話をかける。

祖母の家には祖母と、同居人のオジサンが住んでいるが、

普段からよく会って話すので、

孫の数日の同居に快く了承してくれた。

両親と、薄暗くなった駐車場で何言かで別れ話をし、

長居せまいと車のエンジンをかける。

母はまるで一生の別れかのごとく、名残惜しそうにしていたが、大袈裟だと思う。

まあそんな母につられて私も少し名残惜しそうな顔にして、

ヘッドライトを点ける。

祖母の家に向かう間の話はここでは省かせてもらう。(終始無言、無心であった為。)

続きはまた明日書き留めようと思う。