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毎日新聞

 全盲や弱視など目の不自由な子を支援する場所が京都市北区にある。42年前に開設された「視覚支援 あいあい教室」。遊びや運動を通じて視覚障害児の能力を引き出すことを目標とし、0歳児から受け入れているという。どのような教室なのか、のぞいてみた。【国本ようこ】

 「かわいい猫さんやな。ほら、足が、いち、にい、さん、し」。「絵本」を読んでいた女性職員が全盲の女児(5)の手を取り猫の足に持って行く。布や毛糸が貼られた絵は立体的で触ると何が描かれているかわかる。「ヒゲはどこ?」と職員が続けると、女児が手を顔の中心へ少しずつ動かす。「そうそう!」と褒められるとうれしそうな顔を見せ、今度は「目」を指先で確かめ始めた。

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 視覚障害者総合福祉施設「京都ライトハウス」内にある「あいあい教室」は市の委託を受け1976年、「盲乳幼児母子通園事業」としてスタート。80年、目の「eye」と「愛」を組み合わせた現在の名称となった。

 対象は0歳から小学1年までで、週1~3回通園する。現在の利用者は約60人で、そのうち25人が市外や近隣の他府県から通う。在宅訪問も含めると「卒園者」はこれまで400人を超える。

 未就学児向けの教室は全国の盲学校にもあるが、3歳からが一般的。この教室が0歳から支援するのは、乳幼児期が発達や教育に重要と考えるからだ。「視覚に障害がある子は一般的に物が見えないという恐怖心から体を動かしたり、外に出たりすることが苦手。苦手意識をなくすには、小さな頃から『遊ぶ』経験を積むことが大切」。教室の古川千鶴所長(51)が解説する。

 教室にあるのは「触れる絵本」のほか、音の鳴る積み木や手触りの異なる素材を貼ったパズルなど。キャラクターが大きく描かれた紙芝居や光るおもちゃもあり、障害の程度に合わせて使う。運動の時間は職員と手をつないで走ったり、マットで作った段差を上り下りしたりもする。

 ◇子の変化、実感

 5年前から通う京都市中京区の主婦は全盲の娘(6)の変化を実感する。「通う前は見えない不安から警戒心が強く、他人に抱っこされればずっと泣いていた。ここで先生を好きになって友達にも興味が向き、世界が広がった」と振り返る。

 弱視の長女(2)と通う山科区の自営業、福田法香さん(42)は「どうやって育てたらいいか悩んだが、今では幼稚園にもなじめている。悩みを共有できるママ友がいるのもありがたい」と話す。

 古川所長は「子供たちの『知りたい』『楽しみたい』という意欲を引き出すことが、視覚以外の触覚や聴覚などを伸ばすことにもつながる。不安を抱えた母親が情報共有できる場も必要だ」と話す。

 ただ、あいあい教室のように0歳から視覚障害児を受け入れる教室は全国的に珍しい。古川所長によると、聴覚や手足に障害がある子供に比べ、目が不自由な子が少ないことが大きな理由という。視覚障害児の教育に詳しい大阪教育大の山本利和教授(61)は「行政などが各地に小規模な教室を開設することが理想。一方、既にある教室について知らない保護者もいると思うので、情報発信にも取り組むべきだ」と語る。

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 「あいあい教室」(075・462・4462)は子供の視覚障害に関する相談を電話でも受け付けている。