第1章 結衣が生まれるまで~7~
菜穂子が、難波にある串屋のドアをガラッと開けると、少し奥まったテーブルに、体の背中半分だけ見えている祐二の姿が見えた。店員の案内を目で断り、菜穂子は、そのテーブルに近づいた。菜穂子が来たことに気がついた祐二は、椅子から立ち、恥ずかしそうに「あーどうも」と言った。菜穂子はそのあーどうもという祐二の言葉が、妙におかしくてくっすと笑い、祐二の前の椅子に座った。
「なんか、おしゃれな店知らなくて、ここ学生時代からよく来てるんです、うまいですよ」
「そう、私、こう言うお店好きですよ」というと、なぜか祐二は顔を真っ赤にさせて、「おばちゃん、ビールお代わりちょうだい!、あっ近藤さんは?」
「私もビール下さい」と言うと、祐二は大きな手を半分まであげて、
「ビーツちゃうビール全部で2杯、生ね」と言った。奥から、お店のおばさんの軽快な声が「はーいよっと」と聞こえる中、祐二は、「おまかせコースがあるんですけど、そんで良いですか?」と菜穂子にメニューを渡す。「星野先生もおまかせコースですか」「はい」「じゃ私もそれで」とにっこりしながら言うと、祐二は、菜穂子のその笑顔にたまらないという様子で頭を書いた。
ドンっと店のおばちゃんが、だらだら垂れたビールのジョッキを2人の前に置いて、「ちょっとー、ゆうちゃん、こんなかわいい人、ええの?」と菜穂子の方を向いていうと、菜穂子はなんだか楽しくなりくすくす笑った。
料理は、串揚げ25本のおまかせコースだったが、祐二は2人前注文していた、2人は病院の事や祐二の実家も菜穂子の実家も開業医であり、祐二の実家は内科をしていて、城之崎に実家があるという。そして菜穂子は、もっとも聞きたかった質問を食事が終わった頃にした。
「星野先生の実家は内科やったら、産婦人科になっても良かったんですか」
「うん、兄貴も医者で、外科やけど跡継いでくれると思うわ」
菜穂子は、その祐二の答えに心でにやりのと笑った。
「なんか、おしゃれな店知らなくて、ここ学生時代からよく来てるんです、うまいですよ」
「そう、私、こう言うお店好きですよ」というと、なぜか祐二は顔を真っ赤にさせて、「おばちゃん、ビールお代わりちょうだい!、あっ近藤さんは?」
「私もビール下さい」と言うと、祐二は大きな手を半分まであげて、
「ビーツちゃうビール全部で2杯、生ね」と言った。奥から、お店のおばさんの軽快な声が「はーいよっと」と聞こえる中、祐二は、「おまかせコースがあるんですけど、そんで良いですか?」と菜穂子にメニューを渡す。「星野先生もおまかせコースですか」「はい」「じゃ私もそれで」とにっこりしながら言うと、祐二は、菜穂子のその笑顔にたまらないという様子で頭を書いた。
ドンっと店のおばちゃんが、だらだら垂れたビールのジョッキを2人の前に置いて、「ちょっとー、ゆうちゃん、こんなかわいい人、ええの?」と菜穂子の方を向いていうと、菜穂子はなんだか楽しくなりくすくす笑った。
料理は、串揚げ25本のおまかせコースだったが、祐二は2人前注文していた、2人は病院の事や祐二の実家も菜穂子の実家も開業医であり、祐二の実家は内科をしていて、城之崎に実家があるという。そして菜穂子は、もっとも聞きたかった質問を食事が終わった頃にした。
「星野先生の実家は内科やったら、産婦人科になっても良かったんですか」
「うん、兄貴も医者で、外科やけど跡継いでくれると思うわ」
菜穂子は、その祐二の答えに心でにやりのと笑った。
第1章 結衣が生まれるまで~6~
菜穂子は、母の和子の電話の後も、なかなか祐二に電話できないでいた。思いっきりがつかないうちにとうとう、2週間が過ぎてしまった。そして、今日は日曜日、祐二も休みであると確認はできていたので、思い切って電話をしようと、3時間電話の前でスタンバイしていた。すると、突然電話が鳴った。この電話は寮の電話で、同じ階の人は共有のものであった。
菜穂子は電話をとり、「はい」
「あのー近藤さんお願いします」どこかで聞いた男の声であった。
近藤は同じ階に1人しかいないので、
「私が近藤菜穂子ですが」
「すみません、星野です」
「あーわたしも今かけようと・・・、ごめんなさい、長い間電話できなくて」「いや、女性に電話させようとした俺が悪かったんです、食事まだ一緒に行く気持ちある?」
「はい」
「じゃ、今夜はどうですか」
「良いですよ」と二人は、待ち合わせ場所と時間を決めて電話を切った。
菜穂子は、不思議な気持ちだった。なんだかあの人不思議に素直になれる。そして、菜穂子は、水色のワンピースを着て、出かける準備をした。
菜穂子は電話をとり、「はい」
「あのー近藤さんお願いします」どこかで聞いた男の声であった。
近藤は同じ階に1人しかいないので、
「私が近藤菜穂子ですが」
「すみません、星野です」
「あーわたしも今かけようと・・・、ごめんなさい、長い間電話できなくて」「いや、女性に電話させようとした俺が悪かったんです、食事まだ一緒に行く気持ちある?」
「はい」
「じゃ、今夜はどうですか」
「良いですよ」と二人は、待ち合わせ場所と時間を決めて電話を切った。
菜穂子は、不思議な気持ちだった。なんだかあの人不思議に素直になれる。そして、菜穂子は、水色のワンピースを着て、出かける準備をした。
第1章 結衣が生まれるまで~5~
祐二が結衣の働く病棟にやってきてから、3ヶ月が経過していた。祐二を含む3人の研修医は、毎日必死で研修医の役割を果たしていた。研修医は、どの医師よりも早くに働き始めて終わる、さらに、当直も多い。菜穂子が準夜勤でもう少しで、交代の看護婦が出勤する頃、女医の研修医陽子が、菜穂子に話しかけてきた。「近藤さん、お肌、綺麗だね」と看護記録を書く菜穂子の腕を見ながらいった。「そうですか」「そうよ、顔のお肌も綺麗。夜勤やってるなんて信じられない、私なんて・・」確かに、陽子の顔はニキビだらけであった。「仕方ないですよ、先生の方が相当激務なんやから」と菜穂かが言うと、近くの手洗い場の鏡に向かい自分の顔を見ながら、「そういえば、近藤さんの実家産婦人科なんやって?」と聞くと、菜穂子はどきっとした。「はい、そうなんです」と答えると、「何で医者にならんかったん?」と続けて質問をしてくる。菜穂子は心の中で、ちぇっと舌打ちをし、「勉強できひんかったから」と答えた。「そーなんや」と興味なく、ずっと鏡を見ている。そこへ、祐二が入ってきた。「星野先生、まだ帰ってなかったん?」と陽子が聞くと、無愛想に「う」と答える。その答えに菜穂子は思わず、くっすと笑った。自分の父親の返事の仕方に似た答え方だったからだ。「じゃもう私は寝ます」と言って、詰め所から出て行った。詰め所には、祐二と菜穂子の二人になったが、会話はなく沈黙が続いた。菜穂子も仕事を黙々とこなしていたが、突然祐二が菜穂子の隣に来て、「あのー」「はい」「今度、ご飯でも食べに行きませんか。」と大きな熊みたいな男が、耳まで真っ赤にしていた。「えっ、はい、良いですよ」と菜穂子が答えると、祐二は白い紙を菜穂子に手渡した。「これ、電話番号、電話して下さい」と言い残し、その場を去った。菜穂子は、心の中で、私が電話するの?・・・何でよ。と少々困惑した。 夜勤のクールが終わり、休みの日の夜、寮の菜穂子の部屋の電話が鳴った。母の和子からの電話だった。「今日は休み?」「うん」「あんた、お見合いあるとよ、どうする?」「うーん」「そっちに好きな人でもおるん?こん人は、養子でも良いっていってくれてて、父さんの大学の後輩やって。ええ話やって、みんな言ってるわ。どうする?」「今日ね・・・いや」「何?好きな人?」「まだ、誘われただけ、星野祐二先生っていう研修医やねん」「祐二?」「祐二やよ、何?」「祐二のじは、どんな字?」「数字の二」「そりゃ、ええわ」「何で?」「次男やから二の字を使ってる可能性がある、ものにしな」「ものにって、でも熊みたいなひとやねん」「父さんもそうやんか、そんな気にしたらあかん」「そうやね」少し何かを考えるように菜穂子は答えた。「父さんには内緒やけど、子どもが先でもええから」「はっ」菜穂子は母の過激な言葉にびっくりする。驚く菜穂子の反応を楽しみかのように和子は「じゃね」と一方的に電話を切った。
第1章 結衣が生まれるまで~4~
菜穂子が助産婦として大学病院で働き始めて1年が経とうとしていた。やっと仕事にも慣れ、何とか先輩からも認められるようになってきた。しかし、お産は、毎日が緊張の連続、看護婦寮と病院との往復ばかりで、町に出ることはほとんどなかった。その上激務の為に、菜穂子の体重は6キロも減った。もともと細い体型だったが、最近骨盤が見ただけでわかる程になってきた。勤務前に白衣に着替えるとき、何気なく自分の顔を鏡で見ると、「ちょっとやせちゃったな」と菜穂子はため息をつく。
この日の勤務は、分娩係。病院の産婦人科病棟には、助産婦と看護婦の両方がいて、助産婦は、入院している患者を看る病棟係と分娩係とに別れる。分娩係のこの日は、分娩がなく、褥婦(お産をしたおかあさん)のおっぱいの様子を見たり、分娩室の整理をしていた。そうすると、「ここが分娩室だ」と中谷講師が3人の若い医師を連れて入ってきた。中谷医師は、菜穂子に気がつき
「近藤さん、来年度からの新しい研修医の先生だ。お手柔らかにな」というと
「はい、こちらこそよろしくお願いします」とぺこりと頭を下げた。3人の若い医師も頭を下げ、中谷医師と分娩室から出て行った。3人の医師は、男子が2人女性が1人だった。「女医さんか・・・・」と菜穂子は心の中でつぶやいた。そう、菜穂子の両親は菜穂子に医者になってもらいたかったのだ。「それにしても、男の先生のうちの1人、大きい男やったな、熊みたい」とくすっと笑い、仕事を再開した。この出会いが、後の夫になる祐二とのはじめの出会いであった。
この日の勤務は、分娩係。病院の産婦人科病棟には、助産婦と看護婦の両方がいて、助産婦は、入院している患者を看る病棟係と分娩係とに別れる。分娩係のこの日は、分娩がなく、褥婦(お産をしたおかあさん)のおっぱいの様子を見たり、分娩室の整理をしていた。そうすると、「ここが分娩室だ」と中谷講師が3人の若い医師を連れて入ってきた。中谷医師は、菜穂子に気がつき
「近藤さん、来年度からの新しい研修医の先生だ。お手柔らかにな」というと
「はい、こちらこそよろしくお願いします」とぺこりと頭を下げた。3人の若い医師も頭を下げ、中谷医師と分娩室から出て行った。3人の医師は、男子が2人女性が1人だった。「女医さんか・・・・」と菜穂子は心の中でつぶやいた。そう、菜穂子の両親は菜穂子に医者になってもらいたかったのだ。「それにしても、男の先生のうちの1人、大きい男やったな、熊みたい」とくすっと笑い、仕事を再開した。この出会いが、後の夫になる祐二とのはじめの出会いであった。
第1章 結衣が生まれるまで~3~
顔面を紅潮させ、初めて家族の目の前で自分の感情をさらけ出した、信輝であったが、何とか自分の怒りを自制し自室に隠ってしまった。菜穂子は、それまで父親にほとんど怒られたことがなかったので、呆然としていた。仕事があまりに多忙で、ひとり娘である菜穂子と接するときは、その貴重な時間を、仲良く過ごしたいと言う父の気持ちから、何となく菜穂子を叱る事をしなかった。さらに、信輝が怒らずとも、看護婦らの中に、母親役父親役が決まっていて、父親役の強面の看護婦が決まって菜穂子を叱る構造ができあがっていたので、あえて信輝が菜穂子を叱らなくて良かったのである。
父の雷が落ちてから、2週間ほどしたある夕食時、それまでほとんど会話がなかった親子に、何とか自分から話しかけようと、菜穂子から父に話しかけた。
「お父さん、将来のこと何やけど・・・・」
「おう」と、菜穂子を見ずに黙々とご飯を食べながら答える。
「私、助産婦になろうかなっとおもっちょる」
「うん」
「今から、勉強しても医学部は、無理やし、医者ちゅう職業は私には気が重い、ごめんなさい」
「いや」
そこへ母の和子が「そしたら、医者の旦那見つけたらええ、お見合いもあるし、そーしちょき、婿養子にしたらええ」和子のその言葉に、菜穂子は軽くうなずき、父も、それに合意したかのような表情で、食事を続けた。
それからは、何の問題もなく、無事に菜穂子は大阪の看護師学校を卒業、その後進学した助産師学校にも合格し、助産師として大阪大学大学病院に勤務する事になった。大阪に出ることに家族からの反対もなく、近藤産婦人科医院で働く、看護婦らからは、「ええ男ゲットして帰って来るとよ~」と送り出された。
父の雷が落ちてから、2週間ほどしたある夕食時、それまでほとんど会話がなかった親子に、何とか自分から話しかけようと、菜穂子から父に話しかけた。
「お父さん、将来のこと何やけど・・・・」
「おう」と、菜穂子を見ずに黙々とご飯を食べながら答える。
「私、助産婦になろうかなっとおもっちょる」
「うん」
「今から、勉強しても医学部は、無理やし、医者ちゅう職業は私には気が重い、ごめんなさい」
「いや」
そこへ母の和子が「そしたら、医者の旦那見つけたらええ、お見合いもあるし、そーしちょき、婿養子にしたらええ」和子のその言葉に、菜穂子は軽くうなずき、父も、それに合意したかのような表情で、食事を続けた。
それからは、何の問題もなく、無事に菜穂子は大阪の看護師学校を卒業、その後進学した助産師学校にも合格し、助産師として大阪大学大学病院に勤務する事になった。大阪に出ることに家族からの反対もなく、近藤産婦人科医院で働く、看護婦らからは、「ええ男ゲットして帰って来るとよ~」と送り出された。
第1章 結衣が生まれるまで~2~
菜穂子が大人になる間に、日本の世の中の様子も大きく様変わりした。戦後アメリカ軍が日本を占領し、日本の民主化がおし進まれ、女性も参政権が与えられようになった。それまでにも、女性の医師の存在はあったが、より女性が学問を修め、社会進出がしやすい時代となっていた。その時代の流れの中で、父信輝も菜穂子が女医として生きていきやすい時代となったと感じるようになっていた。
菜穂子は、無事に何とか地元の女子高等学校に入学し、青春時代を送っていた。子どもの頃から、美しい菜穂子であったが、その美しさは、年を重ねるごとにぞっとするような美しさに変化していった。しかし、相変わらずの素っ気ない話し方と、世の中を冷めてみるような考え方は、そのまま持ったまま大人になりつつあった。
しかし、父や母の医師になってほしいという思いに反して、学校の成績は今一つであった。菜穂子の通っている女子高等学校は、進学する女子もいるが、どちらかといえば、難関大学に向かって勉強している人よりも、短期大学等に花嫁修行でいくような女子が多かった、いわゆる「お嬢様学校」なのである。仮に、医学部等の難関校を目指すのでれば、菜穂子は学校でかなり上位の成績を収めていないと難しい事になる。
ちょうど、高校2年の学年終了日の夕食時、信輝が菜穂子に
「菜穂子、おまえ、今の成績じゃ、医学部に入学でできんぞ、どうするつもりじゃ」と、不機嫌な様子で聞くと、菜穂子は
「そうやな」とふっと笑ったような表情をした。すると、信輝の顔は見る見るうちに赤くなり、「何がおかしんじゃ!」と大きな声を張り上げた。
菜穂子は、無事に何とか地元の女子高等学校に入学し、青春時代を送っていた。子どもの頃から、美しい菜穂子であったが、その美しさは、年を重ねるごとにぞっとするような美しさに変化していった。しかし、相変わらずの素っ気ない話し方と、世の中を冷めてみるような考え方は、そのまま持ったまま大人になりつつあった。
しかし、父や母の医師になってほしいという思いに反して、学校の成績は今一つであった。菜穂子の通っている女子高等学校は、進学する女子もいるが、どちらかといえば、難関大学に向かって勉強している人よりも、短期大学等に花嫁修行でいくような女子が多かった、いわゆる「お嬢様学校」なのである。仮に、医学部等の難関校を目指すのでれば、菜穂子は学校でかなり上位の成績を収めていないと難しい事になる。
ちょうど、高校2年の学年終了日の夕食時、信輝が菜穂子に
「菜穂子、おまえ、今の成績じゃ、医学部に入学でできんぞ、どうするつもりじゃ」と、不機嫌な様子で聞くと、菜穂子は
「そうやな」とふっと笑ったような表情をした。すると、信輝の顔は見る見るうちに赤くなり、「何がおかしんじゃ!」と大きな声を張り上げた。
第1章 結衣が生まれるまで~1~
昭和13年、第二次世界大戦の最中、鹿児島県鹿児島市にある近藤産婦人科医院で一人の女の子が産声をあげた。名前は菜穂子。菜穂子は産婦人科医である父信輝にとり上げられてこの世に生を受けた。菜穂子の母和子は、穏やかで色白で目鼻立ちがしっかりとしている、とても美しい女性だった。
菜穂子が生まれた直後から、菜穂子の両親は次の子が授かることを願っていた。産婦人科医院の跡取り息子がほしいかった。しかし、菜穂子が生まれてからすぐに、第1次ベビーブーム時代になり、医院はお産続きで大変な忙しさになっていた。普通の主婦であった和子も何かと診療所の手伝いを行わなければならなり、子育てと診療所の手伝いをしているうちに、とうとう体を壊し、腎臓病を患い入院することになった。和子の入院は、思いのほか長引き、菜穂子を生んだときは、退院したときは、すでに38歳になっていた。やむなく、両親は2人目の子供を諦め、菜穂子に医者になって、この医院を継いでもいたいと考えるようになった。
一方、菜穂子は、母親が不在であっても、病院の助産婦や看護婦らに世話をしてもらい、すくすくと成長し母親が退院した年には14歳の、美しい少女になっていた。しかし、その美しさとは異なり、菜穂子の性格は同じ年齢の子どもより、おませな成熟した少女であり、少し冷めた子どもでもあった。それも仕方ない、菜穂子は幼い頃から、分娩室に出入りしたり、女性の内診しているさまを見てきた。そして、時に痛みで興奮した産婦さんのわめき声を聞きながら、病院の隅っこでお昼寝もしてきた。少し、大人びた冷めた子どもに育っても仕方ない。その為、近所の男の子達が、菜穂子のファンクラブを作ったと報告に来ても、「そう」と素っ気なく返事をする子であっても当然といえる。
