毎朝、子どもの部屋のドアを開けるのが怖かった。
もしかしたら……
そんな思いが頭をよぎるようになっていました。
あの頃の私は、朝が来ることが怖かったのです。
長男の様子がおかしくなり始めたのは、小学校高学年の頃でした。
朝、起きられない。
学校を休む日が少しずつ増えていく。
「疲れているのかな。」
そのくらいにしか思っていませんでした。
ところが、中学受験が近づくにつれて、その症状はどんどん強くなっていったのです。
何とか受験を乗り越え、私立中学校へ入学。
これで少しは落ち着くだろう。
そう思っていました。
でも、現実は違いました。
朝、どうやって起こしても起き上がれない。
身体が鉛のように重くて硬い、ベッドから動けない。
やっと登校できても笑顔はなく能面・・、いつもマスク姿
以前のように走り回っていた元気な息子は、もうそこにはいませんでした。
学校の先生から言われた言葉を、今でも忘れられません。
「実は、お顔を見たことがないんです。いつもマスクをしているので。」
胸が締めつけられました。
原因が分からない。
何が起きているのかも分からない。
小児科へ。
心療内科へ。
「ここなら分かるかもしれない。」
そう思って受診しても、答えは見つかりません。
息子も、初めて会う先生をじっと見ていました。
そして、「この先生は自分の話を聞いてくれる人なのか。」
そう感じた瞬間に、心を閉ざしてしまうのです。
診察室で話すのは、いつも私でした。
ある先生は、たくさんの薬を処方してくださいました。
眠るための薬。
眠り続けることができる薬。
朝、起きやすくする薬。
気持ちを前向きにする薬。
でも、私たちは通院をやめました。
「何かが違う。」
夫も私も、そう感じたからです。
家では、息子はほとんど部屋から出てきません。
天井を見つめたまま、一日が終わる。
ある日、息子がぽつりと言いました。
「母さん……。
天井を見ながら、このまま死ぬのかなって思うんだ。」
言葉が出ませんでした。
涙だけが、あふれてきました。
私は毎朝、部屋のドアを開けるたびに、
「今日も生きていてくれた。」
そう思うようになっていました。
あの頃の私は、原因も分からず、出口も見えない暗闇の中にいました。
それでも、どこかに小さな光があると信じて、病院を探し続けていました。
(つづく)
