第五話 | TalesWeaver AnotherStory

第五話


#5 大邸宅

「・・・何であれ、一度調査してみる必要がありそうね、大邸宅」
「・・・お前の意見に賛成だ」
「私も行きましょう。門を守るアクシピターの騎士というのが気になります」
 頷きあう三人。
「えーっと、つまり」
 三人に割り込むユイ。
「大邸宅の調査にお二人がついてきてくださるということですか?」
「・・・姉さん、あとで説明するからちょっと黙ってて。話が進まなくなるから」
「・・・うー」
 恨めしそうな目でメイを見るユイ。
「じゃあどうする?早速行く?」
 そんなユイを無視して話を進めるメイ。
「そうだな」
「クライブ、護衛を頼めますか」
「任せてくれ。ノウェル、モズリ、お前たちも来い」
 手近に居た騎士に声をかけるクライブ。
「・・・ところであんた」
「・・・俺か?」
「名前とか教えて貰えないと呼びにくいんだけど」
「お互いにな」
「・・・私はメイ、でこっちが姉のユイ。世界を巡る冒険者ってとこかな」
「ユイ・・・だと・・・!?」
 驚いてユイを見る黒衣の男。ユイはぽけーっとした顔で「?」を浮かべている。
「ん、姉さんがどうかした?惚れた?やんないよ?」 
「あ、いや、なんでもない。人違いだ」
「・・・で、あんたは?」
「・・・俺もお前と同じようなものだな、世界を転々と旅している風来坊だ」
「名前は?」
「捨てた。名はない」
「・・・はぁ!?なにそれ!?」
「俺には名など必要ない」
「何カッコつけてるわけ!?今時そういうの流行んないよ!?頭おかしいんじゃない?姉さんに治療してもらう?」
「・・・おい、言い過ぎだ。流石の俺でも落ち込む」
「じゃあ今まで旅してきた先ではなんて呼ばれてたのよ?」
「・・・旅人さん、だ」
「・・・」
 頭を抱えるメイ。
「お前たちも好きに呼べばいい」
「じゃあいちごちゃん」
「・・・何?」
「ちょこちゃんとか、みるくちゃんってのも良いわね」
「待て、なんだその少女趣味な名前は」
「だって、好きに呼んで良いんでしょ?」
「・・・」
「・・・デュオさん」
「!?」
 再び二人に割り込むユイ。
 ぽかーんとした顔でユイを見るメイと男。
「・・・あれ、名前、考えてたんですよね・・・?あれ?違った・・・?」
「・・・いや、何でいきなりそんな名前がでてきたのかなぁ、と。っていうか姉さん話理解してたのね」
「あ、あはは・・・なんとなく思いつきで・・・ってさりげなく酷いこと言ってない、メイちゃん?」
「別に私はその名前でもいいけどね。いちごちゃんでもいいけど」
「いちごちゃんは勘弁してくれ」
「じゃあデュオで」
「勝手にしろ」
 デュオと名づけられた黒衣の男はユイを見る。
(・・・この女、何者だ・・・)
 相変わらずユイはぽけぽけと「?」を浮かべるだけだった。


 ユイ、メイ、アレン、クライブ他二名、そしてデュオは大邸宅前へとやってきた。
「ん、またあんたたちかよ。こっちは入れんと言っただろ?」
 大邸宅の門を守っている騎士はユイたちの姿を見つけるとシッシッと虫でも追い払うかのように手を振った。
「通りたきゃアクシピターのシュワルターの・・・」
「アクシピターのナルビク支部長代行のアレンです。ここの警護などという指令はだされていませんが?」
 アレンが門番に詰め寄る。
「そもそも、貴方がたはアクシピターの騎士ではありませんよね、見ない顔です」
「げっ、あ、あんたシュワルターの看病でずっと篭りっきりだったんじゃ・・・」
「事情が変わりまして。で、これはどういうことです?」
「・・・仕方ない、ここで消す!」
 突然手にしていた斧を振り上げ襲い掛かる門番。
「危ないっ!」
 ガキッ!
 クライブがアレンの前に割り込み、剣で斧を受け止める。
「下がってアレン!」
 アレンの後ろからメイが踊り出る。
「ハッ!」
 クライブの肩に手をかけ、そのまま跳躍、クライブと門番を飛び越えた。
 ストッと門番の背後に着地する。
「・・・ったく、状況が悪くなったらいきなり攻撃とか、あんた脳みそ筋肉?・・・せいっ!」
 門番の横っ腹に回し蹴りを叩き込む。
「げふぁっ」
 門番は蹴りによって吹き飛ばされ、ごろごろ地を転がり、デュオの前で止まった。
「・・・魔法使いだと思っていたら、まさか武闘家の修行も積んでいたとはな。恐れ入った」
「ふふん、見直した?」
「最初から見下しちゃいないがな」
 ドン!と足元に倒れている門番の顔の真横に武器を突き立てるデュオ。
「・・・さて、どういうことだ?説明して貰おうか?」
 門番に語りかけるデュオ。
「・・・断る」
「・・・そうか、仕方ない、ここで首を撥ねるか」
 棒のような武器の先端を包んでいた布を解くデュオ。先端には刀のような反り返った刃が鈍い光を放っていた。
「遥か東洋のアマツという国に伝わるナギナタという武器だ。大丈夫だ、苦しむ間も無く一瞬で撥ねてやる」
 ぐるん、とナギナタと呼ばれた武器を180度回転させ、刃の方を突き立てる。
「ひ、ひぃぃぃ・・・」
 ガクガクと震えだす門番。
「・・・どうだ、話す気になったか?」
「・・・断る」
「・・・そうか」
 ぴたぴたと刃で門番の顔を叩くデュオ。
「・・・なんだか、私たちが悪役みたいね・・・」
 様子を静観していたユイが言う。
「そこで何をしている!!」
 大邸宅の中から別の騎士が出てくる。
「・・・ちっ、援軍か」
「う、うわぁぁぁぁぁぁ」
 デュオの注意が援軍にそれた隙に起き上がって援軍と合流する門番。
「む、逃がしたか」
「・・・お前たち、ここで何をしている」
「アクシピターの騎士だ。任務により大邸宅を調査させていただく」
 クライブが一歩前に出る。
「・・・む、あれはアクシピターのクライブとアレンか。・・・なるほど」
「貴方たちは何者ですか。アクシピターの騎士ではないでしょう」
「いかにも、我々がアクシピターの騎士だということは真っ赤な嘘だ」
「・・・ここで何を?」
「それを知る必要はない。貴様ら全員ここで死んで貰う」
 各々の武器を構える、大邸宅から出てきた騎士たち。
「・・・全部で6人か。俺が4人やろう。クライブたちで一人、メイで一人」
「・・・えらく自信過剰じゃない?一人で4人?」
 拳を構えながらメイが言う。
「この程度の奴には負けんさ」
「あの、私は・・・?」
「ユイは法術師なのだろう?」
「私も戦えますっ」
「よかろう、一人預ける。メイと二人で二人殲滅だ」
「わかりましたっ」
 背中から杖をとりだすユイ。
「アレンは下がっててくれ」
 アレンを背後に促すクライブ。
「皆さん、お気をつけて・・・」
 クライブたちから距離をとるアレン。
「来るぞ!」
 

※ということで第五話です。
 今回で黒衣の男の名前が判明しました。っと言っても仮名状態ですが。
 因みに鎌を持ったモビルスーツ乗りや時間を止めるスタンド使いとは何の関係もありません、あしからず(ぁ
 アクシピター前にいたおっちゃんことクライブと、アレンの護衛に同行しているノウェル、モズリですがオリジナルキャラではありません。
 ルシアン、ボリス以外だと馴染みが薄いかも知れませんが(特にS&A側)彼らのライバル的位置にいるアクシピターの騎士です。
 貴族の生まれでルシアンをコケにしてた人です。
 なんだかやたらとユイの影が薄くなって、作中でもないがしろにされていますが一応主人公です、一応。
 このままだとメイに食われそうな気もしないでもないですが(ぁ