「総司。俺…女に見えないよな?」


水面に自分の姿を写して見る。
長い髪を一つに結い、
少し大きな男物の袴を着、
腰には刀を刺す。

たどたどしく発せられる言葉は
如何にも男を演出させるが、
その声は男に相応しくない声である。


「見えるね。すごく」

「うっ…。
そんなハッキリ言わなくてもいいじゃんか!」

「黙っとけば、男に見えなくもないけど」

「本当…?」


確かに見た目は頑張れば
か弱そうな男に見える。

話さなければ、ばれないだろう。


「僕が君の分まで
話してやらないこともないけど」

「むっ…。なんかムカつくいいよう」

「そんなこと言っていいの?」

「わかったよっ!!」


苦虫を噛み潰したように総司を睨みつけると
総司は小さく肩を竦めて嫌味ったらしく笑う。


「で?」

「なによ。」

「お願いします。とか
言えないわけ?」

「はっ…?」


総司は笑みを絶やさず
優好を見下げる。
優好の反応を見て楽しそうな総司は
まるで子供のような目をしている。


「人にものを頼む時、
お願いするのは当り前なんじゃないの?」

「…します…」


優好は少し間をおいてから
小さな声で呟いた。
が、総司は腕を組み口角をあげる。


「聞こえないなぁー」


明らかわざとな棒読み、そして態度。
優好は腹の底に
沸々と沸き上がるものを感じながら、
顔を上げた。


「お願いしますっ!!」

「なにを?」

「あぁーっ!もうっ!
早くいかないと遅れるよ!」


どすどすと足音を立て歩いて行く優好。
総司はその後姿を見、
もう一度肩を竦めてから歩き出した。


「本当、素直じゃないよね」

「うるさいっ!」

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