文久三年二月四日、江戸小石川

伝通院塔頭の処静院内大信寮にて

浪士組結成についての会合が開かれた。


何時もより閑散としている試衛館道場には

胡坐をかき右腕に木刀を抱え、おにぎりを頬張る優好と

後ろに両手をつきだらしなく脚を伸ばす総司の姿があった。


今日もまた優好は総司に剣術の稽古をつけてもらっていた。

無理にでも行こうとする総司を宥め、

優好はある計画を持ち出したのだ。


そう、今日はただの会合なのだ。

勇がそう言っていたのを聞いた優好は

ぴんといい案を思いついたのだ。



「浪士組とは、攘夷を断行する・文武の長けた者を

重要とすることが条件である。

とすれば、腕に覚えがある者は、

例え農民だろうと未来人だろうと宇宙人だろうと、

身分、年齢を問わず、参加できると言う画期的な組である」


「だから…?」


「今は大人しくしとくの!そうして近藤さんたちを油断させて

明日、伝通院に潜入して名簿に名前書けばいいんだよ。

年齢問わないなら、総司も入れるし、腕に覚えがある私も入れる!

書いたもん勝ちや!でしょ?」


「そんな簡単にうまくいくと思う?

それに…君、うでに覚えないじゃん」


「思いが強ければ強いほど叶うんだよっ。

それに、剣術はもっと頑張るし!総司が教えてくれたらいいじゃんか!

私だって…こっちの世界に来たいって願ってたら…」



そう言って頭に思考を張り巡らせる。



「あれ…?」


「どうしたの?」


「記憶が…」



欠落していた。



.