「ここ…だょね…?」


静まり返る一室の前に
何故か正座して眉間を寄せる優好。

襖に手を差し出しては引っ込めるを繰り返す。
さきの総司の態度からただならぬ何かを感じた優好は
入る事を戸惑っているのだ。

大きく息を吐き、胸に手を当てる
意を決し襖に両手を添えると
行き成り襖が開かれた。


「わあっ!!」


意表をつかれ素っ頓狂な声と共に前に倒れる。
起き上がり畳にこすれ赤く晴れた額に手を当てる。


「ねぇ。入るんなら早く入ってくれないかな?
人の部屋の前でうじうじされたら流石に鬱陶しいんだけど」

「そ~う~じ~!!」


微かに笑を含んだ声の主を見上げると
やはり顔には、あの笑みが張り付いている。

優好は目尻に涙をためその主を睨みつける。
総司はそんな優好を部屋に引っ張り込み、
襖を閉める。


「それで、僕に何か用?
…同情なんていらないからね」

「総司なんかに同情するわけないじゃん!」

「酷い言いようだね。
まるで僕が人間じゃないみたいじゃん」

「人間だったの?」


口を尖らせそっぽを向く優好。
総司はそんな優好の手を取り自身の左胸に当てる。


「んなっ!」

「僕も一応、血の通った人間なんだよ?」

「わかってるよ!」


総司によって押さえられた右手から伝わる
規則正しい生きている心音。
紅潮していく頬を逆の手で隠し小さくもがく。


「ほら!これっ」


早くなる自らの心拍数から背くように
懐から小さな包み紙を取り出す。


「何、これ?」

「いいから、食べて!」

「もしかして、僕を元気付ける為に作って
わざわざ持ってきてくれたの?」

「別に…」


ふて腐れたように総司に背を向ける優好。
先程まで総司の胸にあった手を
もう片方の手で包み込んだ。