「永倉君。こんな所で何してるの?」


「それはこっちの台詞だろ。まさか男と逢瀬か?」



みたらし団子を頬張っている優好を横目に身ながら

冗談可笑しくそう問い掛け総司の横にどかっと腰を下ろす。



「そんなわけないでしょ?

近藤さんにお守を任されてるだけだよ」



総司は顔色を変えず、興味なさそうに答える。

すると茶屋からもう一人の背の高い男が顔を出した。



「近藤さんの願いだから、断れなかったってとこか。

ってことはそいつは新しい門弟かなんかか?」


「やっぱり、左乃さんは物分りがいいね」


「おいおい。それは俺が物分りが悪いってことか?」



永倉君こと永倉新八が自分を指差しそう怪訝に答えると

左之と呼ばれた男はそれを肯定するように鼻で笑った。



「当たり前だろうが」


「おい!左之!てめぇな!!」



新八は抗議の声をあげるが、

左之はそれを気にも留めず優好の前へ来る。



「俺は原田左之助だ。左之って呼んでくれ」



軽く右手を差し出される。

優好はそれを軽く握り返した。



「愛音優好です。宜しくお願いします」


「俺は永倉新八だ。よろしくな、優好。

しっかしよ。お前、なりも名前も女みてぇなだな」



新八が目を瞬かせ不思議そうに優好を一見する。

その質問に答えようと優好が口を開こうとすると

総司は軽く優好を制止し、悪戯な笑顔を見せる。



「僕も最初は女の子だと思ったんだけどね。

この子は列記とした男の子だよ」


「なっ!」



反論しようとする優好の口を右手で塞ぎ、

冗談めかした口調でそう言い、爽やかに笑う。

どれだけ人をからかうのが好きなのかと恐れ入る。

新八は新八で自分が騙されている

なんてことは微塵も思っていないのだろう。

変に納得している様子だ。



「そういえば総司。お前、試衛館に収集かけられてないのか?」


「収集?何それ」



左之助の言葉に思案顔になる総司。

総司のその様子に目を丸くする新八。



「近藤さんから、大事な話があるって聞いてねぇのかよ」


「近藤さんが…?

そんな事、僕は言われてないけど」



近藤と言う言葉に敏感に反応する総司。

顔から表情と言うものが消え失せ無になる。

そして不快感を露にし、立ち上がる。



「優好。帰るよ」


「えっ.…。うん…」



背を向けているせいで表情は伺えないが、

只者ではない威圧感を感じた優好は素直に小さく頷いた。