前回の「甑島旅行記 上」の続きになります。まだ読まれていない方はそちらから先に読んでいただけると幸いです。

 

 

  6.長目の浜

 

 里港に戻り、ターミナル内の観光案内所で電動アシスト自転車をレンタルします。ちょうど串木野からのフェリーニューこしきが入港するところでした。私が中学生で甑島旅行計画を立てた時はこの便で来るつもりでした。今思うと遅いですね。結局実行されなかったのですが。今度はこれも乗りたいけど、この船は朝一は島発、最終は島着の時刻表になるので本土側からは時間が中途半端で合わせづらいのです。

 里港から長目の浜までは3kmくらい、自転車で20分と少しで着きました。坂がかなりきつかったので電動アシスト自転車にしておいてよかった。長目の浜というのは、いわゆる砂州。砂州とは浸食や河川の運搬で海に流れ出た土砂が沿岸流によって海岸の沖合に堆積してできたものです。地理の試験問題でも地形図も含めよく見かけます。日本ではやっぱり天橋立が有名ですね(行きたいなぁ)。藩政時代に薩摩藩の島津光久がその眺めを褒め、「眺めの浜」と言ったことが名前の由来だそうです。そのまんまですね。また、砂州の内側の湖(ラグーン)は鍬崎池、貝池、なまこ池に分かれているのですが、池によって水質が異なるらしく(!)、学術的にも貴重だそうです。

 

長目の浜のパノラマ

 

 すごくきれいです。島津光久が褒めただけあります。東シナ海が一望でき、天気によっては長島や天草も見えるそうです。展望所から海岸まで降りることができます。海岸まで33mとの標識が。行きましょう。…あれ、なかなか着かない。これ絶対33mじゃなくね??(後になって写真を見直していると0が消えていてもとは330mだったことに気付いた。なるほど。)海辺まで降りました。全体的に白っぽい石が多い。しかも角が取れて丸い石です。これに違和感あるのは茶色くてごつごつした石と砂からなる海岸を見慣れている桜島島民の私だけでしょうか…。それにしてもきれいです。

 

海岸に降りてみた。石が白くて丸い。

 

  7.亀城跡

 

 先程のように電チャリで帰ってきました。下り坂だったので気持ちよかったです。里の街のちょっとした高台の上にあるのが、亀城跡です。亀城というのはもともと甑隼人(隼人っていうのは古代において鹿児島に居住していた人々のことで、しばしばヤマト政権に対して反乱を起こしていました)の城であり、鎌倉時代から戦国時代ぐらいまでは、甑島一帯を統治していた小川氏の、その後は島津氏の居城として使われた城です。かつてはすぐ近くに鶴城なるものもあり、二つ合わせて鶴亀城と言われていたそうですが、鶴城があった丘はどれなのか分かりませんでした。ここにあった城は残念ながら残っておらず、小さな東屋みたいなのがあり、ちょっとした公園のようになっていました。大きな釣鐘があり、明治時代にはこの鐘を鳴らして時刻を知らせていたそうです。ですが、古いうえに大正時代の火災時に強く鳴らしすぎてひびが入ったとかで打てませんでした。敷地内には戦没者追悼碑もありました。

 里はトンボロの上に発達した集落ですが、トンボロというのはさっき見たような砂州が進化したやつというか…砂州によって陸地と沖合の島がつなげられたところです。陸繋砂州とも言い、日本では函館や男鹿半島、串本町(潮岬)とかが代表的です。世界ではジブラルタルとかか?ジブラルタルは横幅が1kmに満たないトンボロの上に垂直に空港の滑走路があります。もちろん埋め立て。滑走路を横断する自動車道路もあり、世界でもトップクラスで危険らしいです。また、陸繋砂州の中には満潮になると海中に沈むものもあります。江の島とか指宿市の知林ヶ島とかフランスのモン・サン・ミッシェルとかです。こっちの方が有名そうだな。

 亀城跡からは里集落がよく見渡せます。ここを治めるにはいい立地ですね。当たり前か。里集落の奥、もともと島だったところは遠見山です。もともと海だった、砂州の部分がくびれている特徴的な地形がよく分かります。

 

亀城跡からの眺め。集落はトンボロの上に広がっています。

 

 

 

 

  8.里武家屋敷跡

 

 亀城の麓に広がっているのが日本遺産にも登録されている里の武家屋敷です。現存する建物はないのですが、石垣と生垣がかなり広い範囲にわたって残っており、八幡神社という神社もあり、結構雰囲気を感じます。散策にはもってこいです。だけどやっぱり違和感があるのは石垣に積んである石が白くて丸いことですよ。つるっつるです。私の実家の近くにも石垣があるのですが、桜島の溶岩からとった石で積んであり、全く雰囲気が違います。石が火山から来るか、海から来るかでこんなにも違うものかと強く実感させられました。

 

里武家屋敷跡の石垣。これまた石が白くて丸い。

 

 最後に向かったのは西側の海岸です。九州本土へのアクセスや地形的なこともあり甑島列島は西側にはあまり集落がなく、下甑島の瀬々浦と片野浦くらいです。東西ともに海に接している集落はここだけです。とはいえこのトンボロは東西300mほどしかないので西っていうほど西でもないです。こちらは松の防風林が1km以上連なっています。甑島より西側には中華人民共和国まで陸地がないのでやはり風が強いのでしょうか。さらに砂浜も相まってまさに白砂青松です。澄んだ水色の海にはカモの親子が泳いでいました。ほのぼのとします。自転車で駆け抜けると本当に気持ちよかったです。

 

まさに白砂青松

 

 いつの間にか時刻は15:00です。高速船の出港が16:30なのでぼちぼち帰る方向へ向かいましょう。途中の喫茶店でゆっくりとアイスクリームをいただきました。本当は塩味のアイスが食べたかったのですが残念ながら売り切れていたみたいです。ベタだけどバニラもおいしいよね。その後名産品の塩を使ったクッキーなどをお土産に買って、自転車を返すと16時前になったのでフェリーターミナルでチケットを購入しあとは港でゆっくりします。結構しっかりしたターミナルで、待合室にお土産屋と観光案内所も併設しています。30分前ですが高速船待ちの方がたくさんいました。海が澄んでいてきれいです。鹿児島市の海はこんなにきれいじゃないな…魚が泳いでいます。のどかだなぁ。

 

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  9.帰りは揺れなかった高速船

 

 16:30、もう出港時刻ですが下甑島・長浜港からの船はまだ来ません。結局8分遅れでの出港となりました。ついに離島です。あっという間だったなぁ。帰りは波が穏やかであまり揺れませんでした。展望デッキも開放されており、風が心地よく、美しい夕日も見られて満足です。上甑島を離れてもしばらくははっきりした地層が特徴的な岩や島が見えます。

川内川の河口の右手側(南側)には九州電力川内原子力発電所が、左手側(北側)には行くときも見た川内火力発電所が並んでいるのが見えます。原発の緑と青の模様の原子炉建物が目立っています。そろそろ建設40年を迎え、20年の運転延長のために特別検査とかもするようですが。しばしば天文館で運転延長反対の演説を見かけます。賛否両論ありますよね。(2023注:当時の話です。今はもう運転延長が決定してますね。)

 

当時話題の川内原子力発電所

 

 川内に近づくと多少揺れが出てきました。本日は西風だったので、甑島が風を防いでくれるところは波も高くない一方で、島から離れると西からの風を防ぐものがなくなるから波も高くなり、船も揺れるのかなぁとか考えました。17:20入港の予定でしたが4分ほど遅れての到着です。

 

 

 

 

  10.川内市街地

 

 今朝も乗ったシャトルバスで川内の中心部、川内駅まで帰ってきました。ターミナルでゆっくりする暇がなかったのが残念でした。時刻は18:00です。バス停から鉄道のホームが見え、肥薩おれんじ鉄道の車両が停まっていました。そういえば初めて見たな。考えてみるとここら辺はあまり来ることはなく新幹線で通過するぐらいなのです。

 駅から川内のメインストリートを歩いていきます。鹿児島市ほどではないですが、立派なアーケードがあります。アーケードが低く、歩行者用信号機が縦向きには入らないようで赤と青が横に並んでいました。アーケードの屋根の上に河童がいるのがまた面白い。ここ川内は川内川のガラッパ(河童のようなもの)伝説にちなんでなんでしょうが、河童を結構見かけます。かわいい。18時を過ぎているので人通りもあまりなく、シャッターを下ろしている店がほとんどです。鹿児島市でも夜は早い(店の閉まる時間が早い)と言われますが、県内の鹿児島市以外はさらに早く、さらに新型コロナの感染拡大もあってこの時間には閉まってしまう店が多いんでしょう。というわけで川内市街地歩きはあまり楽しめず、バス停でバスを待ちます。

 

アーケードの屋根の上の河童。かわいい。

 

薩摩川内市のアーケード街

 

  11.自宅へ

 

 朝のように高速バスで帰ります。18:31の便です。数便が運休中の鹿児島空港リムジンの余剰車両なんでしょうか、行先表示器には上から紙で「鹿児島⇔川内」と貼ってありました。時刻表には2台で運行とあり、確かに2台連なってきましたが、僕が乗ったほうの乗客は4人でした。もう1台は乗客いるのかな?車内では高速道路に入ってからずっと寝ていまして、起きたころには鹿児島市の中心部まで来ていました。すっかり日も暮れています。終点の鹿児島駅前バス停に19:30頃に到着し、これにて今回の一人旅は終わりです。

 

 

 旅行記は以上になります。途中に無駄な話が多いような気がしますがゆるゆると読んでいただけたら幸いです。甑島、楽しかったです。今回は日帰りで上甑島しか行くことができませんでしたが、断崖絶壁に砂州、トンボロと地理的にも面白く、大変充実した一日を過ごすことができました。今度は下甑島にも足を延ばしてみたいなと思いました。例の甑大橋も渡りたいし、塩作り体験とかもしてみたい。離島っていいですよね。遠くまで来た感じがします。このようなプランだと、時間的にも金銭的にも、高校生でも行きやすいと思いますので、皆さんぜひ行ってみてください。

最後まで読んでくださりありがとうございました!!下の写真は亀城跡からのパノラマ写真です。

 

 

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