春歌ふ命の弾む野を街を     (葉・春)
 光こそあれ小径の菫      (準・春)
今年また礼拝堂に燕来て     (順・春)
 川面をゆらす魚背の銀波    (眞・雑)
ベロ藍にベルガマスクの月ほのか (丹・秋・月)
 新酒に酔ひて遠い日思ふ    (葉・秋)
青蜜柑弁当箱と晴れた空     (準・秋) 
 紙飛行機を未来へ飛ばし     (順・雑)
セピア色記憶の中の恋模様    (眞・恋)
 寅さん老いて笑顔少なし    (丹・恋)
降り注ぎ場末に消えた歌一つ   (葉・雑)
 ビリヤード台隅に燻る     (準・雑)
潮流がさらふ雑念月涼し      (順・夏・月)
 隣家の筍軍団めきて      (眞・夏)
雨上がり博物館の扉閉ぢ     (丹・雑)
 蝶々を追つてどこまで行かう  (葉・春)
人去りてのち公園に桜散る    (準・春・花)
 残りし鴨にみづうみ凪ぎて    (順・春)
思ひ出は褪せず小瓶の桜貝     (眞・春)
 混乱の夜は紅茶にラム酒    (丹・雑)
捨てられし旋律うたふ星あかり  (順・雑)
 気まぐれフレア極光響く    (準・雑)
日向ぼこおや女房が傍らに    (葉・冬)
 未踏の雪原我パイオニア    (眞・冬)
取決めは白紙撤回蕎麦啜る    (丹・雑)
 いつも横顔Мyモーツァルト   (順・恋)
みかへさぬ交換ノート菓子箱に  (準・恋)
 ゴッホ浮世絵パリの蜜月    (葉・雑)
境内に心ざわつく赤き月    (眞・秋・月)
 身体の歪み踊りて正す     (丹・秋)
森深きフルートの音に秋気澄み  (順・秋) 
 目印のパン鳥がついばみ    (準・雑)
待ち針のそこまで縫つて立ち上がる (葉・雑)
 朝の光に包まれて逝く     (眞・雑)
いそがずに生きて行かうと花筏  (順・春・花)
 ブランコ傾げ地球を覗く    (丹・春)
 

令和六年 四月十日〜五月二十六日