新春のポルカかの地は晴れ渡り   (丹・新年)
 初観音へ続く人波        (眞・新年)
淡雪の古里の市賑はひて      (葉・春)
 沖は明るみ初虹の立つ      (順・春)
カンバスへ春満月を転写する    (なな・春・月)
 円環閉ぢる露地の白牛      (準・雑)
窓叩く風の強さかポロネーズ    (眞・雑)
 夢さへぎられ面影を追ふ     (丹・恋)
あれこれと思ひ沈めし海の青      (順・恋)
 闇を砕いて線香花火       (葉・夏)
太陽の塔夏空を見上げをり     (準・夏)
 蠢いてゐる脳内麻薬       (なな・雑)
しなふ月ここの主人は病気です   (丹・秋・月)
 楽に乗り来るラ・フランスの香  (眞・秋)
芙蓉咲きふと笑み浮かぶ訳もなく  (葉・秋)
 パレットに無き色北の空     (順・雑)
浜離宮水面にゆらぐ花あかり    (眞・春・花)
 種池浚ひ怠りもせず       (準・春)
チョコレート柔らかく割れ春一番  (なな・春)
 煉瓦アーチの酒倉誇る      (丹・雑)
主無き古城に星の舞踏会      (順・雑)
 小澤の第九祈りの除夜に     (葉・冬)
つねのごと白鳥翔けて薄日射す   (準・冬)
 有精卵を宇宙へ翳す       (なな・雑)
この瞳たしか前世で巡り合ひ    (丹・恋)
 貝殻ひろふ稚き逢瀬       (眞・恋)
テレサ・テン小さく歌ひて最後の恋 (なな・恋)
 メール打つ間に季節はうつり     (順・雑)
月青くクジラの哀歌海に満つ    (葉・秋・月)
 岩の山麓鹿鳴きかはす      (準・秋)
峠路の空広々と柿たわわ      (眞・秋)
 機運熟して都をめざし      (丹・雑)
かもめ舞ひ波の奏でるハープ橋   (順・雑)
 補聴器が追ふ春風の歌      (葉・春)
誘はれて角を折れれば初桜     (準・春・花)
 海馬を染める春の微粒子     (なな・春)
        令和六年一月二十六日〜三月十七日