1. セーターを脱いで魚となりぬ夜 （なな・冬）
2. 闇に呼び合う白鳥の声 （葉・冬）
3. にぎやかに話はずみて果てもなし （準・雑）
4. 目つぶればある太古の記憶 （眞・雑）
5. 地球上のひとりひとりに月あかり （順・秋・月）
6. 林檎落ちて村静まりぬ （丹・秋）
7. 秋の夜半ゴーシュのセロに踊る猫 （葉・秋）
8. 雨ニモマケズ君ニハ勝テズ （なな・雑）
9. 橋越えて思ひも船も遠ざかる （眞・恋）
10. ふたたび出会ふことがあつても （準・恋）
11. 交はらぬ軌跡なぞつてチェスの駒 （丹・雑）
12. 白ひと色のヨットの孤独 （順・夏）
13. 夏の月少年兵の薄き胸 （なな・秋・月）
14. 時駆け抜けるキースのピアノ （葉・雑）
15. 星ふゆる森の息吹に応へては （順・雑）
16. 旅立つ鳥に朝焼けまぶし （眞・雑）
17. 山並みに一筆刷いて花の景 (準・春・花）
18. 烏丸通仔馬とび出し (丹・春）
19. 命ありてまた春に遇ふこの道で （葉・春）
20. 平凡と云ふ有難き今日 （なな・雑）
21. 振り向けば夕づく街に子等の声 （眞・雑）
22. 山茶花ほのと浮かんで消える (準・冬）
23. 冬の日の幻想鹿を野に追ひて （丹・冬）
24. 海の底めくイルミネーション （順・雑）
25. 舌先に過日の恋の戻るとき （なな・恋）
26. 重なる影にシャネルの香り （葉・恋）
27. 道は尽き愛が見えぬと君の言ふ (準・恋）
28. 強張る指にまはらぬ指環 （眞・雑）
29. 満月を自転車で飛ぶE.T.と （葉・秋・月）
30. 秋刀魚の味も家それぞれに （丹・秋）
31. 黄落のビル街だれも急ぎ足 （順・秋）
32. 介錯のごと根菜を切る （なな・雑）
33. 夢に見る竜宮城の魚たち （眞・雑）
34. うれひふくみてかんざしゆれる （準・雑）
35. 花吹雪ラヴェルのトリルゆるやかに （丹・春・花）
36. 木から木へ風行き風光る (順・春)
令和5年11月～令和6年1月