先週、演劇集団円の『ガリレイの生涯』をシアタートラムで観て来ました!

休憩10分含め3時間20分の作品、
ブレヒト作、千田是也訳、ガリレオを題材にした作品・・・
実は観る前からちょっと腰が引けていました。。。

でも、とっても面白かった!

前にも書いたことがあるけれど、
私は小学生の頃、天文学の本を読むのが大好きでした。
だから冒頭部分の、ガリレオが少年に地動説を論証してみせるシーンは
とってもワクワクしました!

途中でふと、ガリレオはシェイクスピアと同時代人だと気づいてちょっと嬉しくなった。
帰って調べてみると、なんと同い年でした!
ガリレオはイタリア、シェイクスピアはイギリスなので
お互いを知ることはなかったと思います。
でも二人ともコペルニクスの地動説の影響を受けた。

シェイクスピアの戯曲の中にも
「この世界の関節が外れてしまった」
「天も地も崩れ去るがいい」
なんてあるのは、きっと影響なんだろうと見ながら思ってた。
ハムレットは地動説、クローディアスは天動説の代弁者だって学説もあるらしい!

彼らが生きた16世紀は、まだ宗教と哲学が科学を支配していた時代。
地球が宇宙の中心であるという天動説が、当たり前の事実として信じられていて
他の星と同じように公転する小さな星に過ぎないという地動説を支持しようものなら
聖書を冒涜する異端者として火あぶりにされてしまいます。

そんな時代にガリレオは、
生きること、美味しいものを食べることに懸命だけど、
当たり前とされていることに疑問を持ち、自分の目で見て考えることにも貪欲だった。
そして地動説を裏付ける証拠を次々と発見する。
それゆえ異端審問所から自説の撤回を強要され死ぬまで幽閉されることになるけれど、
密かに研究を続けていた。

でも彼は最後に科学者の在り方を愛弟子に問う。

「君たちは何のために研究するんだ? 
私は科学の唯一の目的は、人間の生存条件の辛さを軽くすることにあると思うんだ。
もし科学者が我欲の強い権力者に脅迫されて臆病になったり、
知識のための知識を積み重ねることで満足するようになったら、科学は片輪にされ、
君たちの作る新しい機械もまた
ただ新たな苦しみを生みだすことにしかならないかもしれない。
(中略)
遂には君たちが何か新しい成果を獲得したといってあげる歓喜の叫びは、
全世界の人々がひとしなみにあげる恐怖の叫びによって答えられることにもなりかねない。
(中略)
だのに私は、自分の知識を権力者に引き渡して、
彼らがそれを全く自分の都合で使ったり使わなかったり、
悪用したりできるようにしてしまった。」

作者ブレヒトは、ナチ時代のドイツの劇作家。
広島長崎への原爆投下を目の当たりにし、この作品に手を加えたそうです。
ガリレオを通して、アインシュタインや人類に投げかけられているかのような台詞。
そして今回の上演に際して、
「いま、まさに取り組むべき作品だと確信し」
と語った演出家、森新太郎さんから私たちへのメッセージ。

震災や原発、人類の未来についての問いかけはもちろんですが、
私が一番感じたのは、
「当たり前」にもう一度目を向けるということ。
目の前にあるものに新鮮な興味を持って、自分の目で見、考えること。
劇中、ガリレオはポケットの中の石ころを何度も投げて
「なぜ石は落ちるのか、不思議に思う感覚は世界を変える」
と言うようなことを何度か言います。
「不思議に思う」「疑う」ということは
「否定する」のではなく「正しい根拠」を見つけること。
「思い込みの正しさ」を排除すること。
私にとっては、芝居や仕事のことへのヒントになった。


長々語っちゃったけど、とにかく今回は楽しかった☆
観に行って良かった!
なにより、主演の吉見一豊さんが素晴らしかった!
吉見さんはいつもステキな役者さんだけど、今回はさらに惹き付けられました。
3時間をあっという間に感じさせてくれたのは、
吉見さんの力量だったと思います。

来年は文学座でもこの作品をやるそうです!
誰がどんな風に作るのか、楽しみです☆