噂のNODA・MAPです。

チケットをなんとか入手し、行ってきました!

1年半前、前回の『パイパー』にはとても衝撃を受けました。
演劇ってコレだよな!
というパワーやワクワク感も全身に感じました。
宮沢りえさんや橋爪功さんのエネルギッシュさにも感銘を受けました。
私もアンサンブルに出たい!と思って事務所に相談したりしました……叶いませんでしたが。

で、今回『ザ・キャラクター』

前回に引き続き、宮沢りえさんと橋爪功さん。
加えて古田新さん、藤井隆さん等など。

「町の小さな書道教室、そこに立ち現われるギリシア神話の世界、
それが、我々の知っている一つの物語として紡がれていく。
物語全てが、ギリシア神話さながらの、
変容(=メタモルフォーゼ)をモチーフとしたお話になっています。
信じていたものが、姿を変え、変化を遂げていく物語。
その最後に立ち現われる、我々が知っている物語とは…。
物語尽くしの物語です。乞うご期待!(野田秀樹)」

幕が開いた瞬間から野田さんの世界に引き込まれる。
異様でパワー溢れおどろおどろしくも美しいアンサンブルの群舞。
漢字をバラバラにして新しい意味を持たせる言葉遊び。
場違いなギリシア神話が形を変え現実になっていく。
次から次への言葉の嵐、全部拾って理解しようなんて思ったらついて行けないから、
とにかく嵐に身を任せ、感じるに任せる。
でも一つ橋爪さんが広げた書道の家元が書いた掛け軸の文字
『物忘れ』
見た瞬間は???となるけど、心に残る。
次から次へと展開される舞台は余りにバラバラで、
誰が何を考え、何が起き、どれが現実なのかよく分からない。
けれど2時間15分の間、飽きることは決してない。
文字通り釘付け。
終盤、バラバラだった断片が勢いよく、見事に重なり合い一つになっていく様には本当に驚嘆した。
ゾクッとした。
そしてある事件の記憶と結び付いた時、
最初の掛け軸『物忘れ』が強いメッセージを持つ。
オブラートに包まない、あまりに現実的で生々しい終り。
舞台にしてしまっていいの?と一瞬思ってしまう、けど、
舞台だから出来るのだと思った。
舞台表現の存在意味の片割れは、そこにあるから。

舞台が終わってしばらくは、
何て重い話、何だったんだろうと思う。
けれど時間が経つにつれて、色々考える。
浴びるに任せた言葉の嵐がよみがえり、
未完成のパズルの穴が埋まっていくように、少しずつ、
全部がつながっているのが分かりだす。
もう一度見たい、もっと深く読み解きたいと感じる。
言葉遊び、二重の意味、台詞のアンサンブル、物語の二重構造。
シェイクスピアによく似ている。
でもこの作品は、日本人にしか理解出来ない。

「弟の俤(おもかげ)をおってマドロミは儚(はかな)い夢の世界を旅する」
「すがったものは袖だったのか、神だったのか」
「感じたら、信じろ」

言葉の意味の取り方一つで世界が表裏一転してしまう。
暴れれば暴れるほど身動きが取れなくなって、
間違っていたと気づいた時には、もう遅い。
すべてを忘れ、知らなかった振りをするしかない。
けれどそれはいずれ、自らに返ってくる。
自ら考える事を怠った、あまりに幼稚な自分自身に。

忘れたい記憶、でも忘れきれない記憶。
それは伝えていかなければいけない、未来への記憶。
『父と暮らせば』のように、
辛いけれど語っていかなければいけない。
語るために、生かされているのだから。。。

池袋芸術劇場での公演は明日8日(日)が千秋楽です。
が、
9月27日(月)23:00~ WOWOWにて放送です。
すっきりする作品ではないのをご承知の上、でも見る価値のある作品です。