肉体的には女性だが、性別不明(中性)。アニメ大好き、漫画大好きのヲタクで、家事・育児壊滅的。がさつで男っぽい。しかもADDやADHDという発達障害まで持っている。

 すまぬが、君の母親はこういった人間なんだ。

 一般常識的な部分から見ると、たぶん負け組と言われ、ダメな人間に分類されるだろうが。

 しかし、私からすればそんなことはどうだっていいよ。

  勝ちとか負けとか。男とか女とか、健常者とか障害者とかも。

 問題なのはさ、中身。中身なんだよ。つまり人間性だよ。人間性。



 なんだかわからないが、私は君を妊娠中に性別は男だとわかっていたとしても直感的に「こいつは女になるかもしれんっ!」と感じ、男でも女でもどちらになっても困らないようにと名前をつけるような母親だ。

 私は自分の名前で相当悩んだからね。心は男に近いのに名前は○子だからね。女の子特有の「○子」っていう名前がめちゃくちゃ嫌いだった。自分の名前を聞いたり、見たり、書くたびになんとも言えない嫌悪感を感じたものだ。

 だから占い師の名前は「ゆうき」という中性的な名前なんだ。男でも女でも通用する。氏でも名でも通用する。

 性同一性障害の人は絶対名前で悩むだろうな。特にめちゃくちゃ女の子らしい名前なのに心は男とか、めちゃくちゃ男らしい名前なのに心は女とか。

 戸籍上の名前や性別を変えたくなる気持ち、よくわかるよ。この葛藤は当事者じゃないとわからないだろうなぁ・・・。



 私は君に生まれてからは「男でも女でもどちらでも良いぞ。好きな方を選べ。」と言い続けて、「好きであれば相手が嫌がらなければ同性を好きになっても良い。問題は人間性だからな。」と言っているような、一般から見るとちょっとズレた母親だ。


 まぁ、しかしそんな母親だが君はアスペルガーやADHDという性質を持っていながらもとりあえず真っ当に育ってくれているから安心している。

 人と違う事は悪い事ではない。

 一番良くないのは人と違う事を非難することだ。

 非難する前にお互いに違いや個性を認め合う努力をしよう。

 君の良いところは人を非難しないというところだ。それはとても素晴らしいことだ。また、その状況を理論的に説明できる。そしてどうすれば良かったかも考える事ができる。そういった良い部分をどんどん伸ばしてもらいたい。





 私と君は他の人と感覚が多少違うから、君が将来大人になってから困らないように小さい頃からいろいろやらせてきた。

 人間いつ死ぬかわからない。

 なにか突発的な事故や病気を起こして、私も明日この世にいるかどうかもわからない。

 だから私がいつ死んでも一通りの日常生活は出来るように仕込んできた。

 掃除、家事、料理等。

 小さい頃からそんなにやらせるの?って言われるけど、やらないから出来ないんだよ。やりゃ少しずつ出来るようになっていくんだよ。最初から上手に出来る人間なんていない。一つずつの積み重ねで出来るようになっていくんだよ。


 こういった技能的なことや学習的なことは積み重ねで上手・下手はあるだろうが、ある程度は出来るようになる。


 だけどね、性質っていうものはいくら努力しようが変わる事はない。

 私は運がよかった。幸い、私の父や母は私の男っぽさを受けいれくれていた。女の子らしくしろとは言わなかった。

 私は小学生の頃、男になりたくてたまらなかった。なんで女に生まれてきてしまったのだろうと自分の肉体を恨んだ。女の子が好む様な遊びは一切しなかった。女の子と遊ぶより男の子と遊ぶ方が楽しかったし同級生の女の子達がリカちゃん人形やサンリオが大好きだったのに対し、私はミニ四駆やガンダムに熱中していた。漫画だってりぼんやなかよしよりコロコロコミックやジャンプが好きだった。別にそれが悪いとも思わなかったし、何より私は自分の事を「僕」と呼んでいた。これは小学生を卒業するまで続いたかな。


 私の父親や母親が私のこういった性質を受け止めていたから、私も私の父と母のように君を「一人の人格のある人間」として受け入れたい。君が将来、大人になったときに普通の人と違う感覚を持ったとしても、私はそれを受け入れるよ。



 私はいつも言っているだろう?

 「おまえはおまえらしくあれ。他の人はどうだっていい。おまえがどうしたいかが問題なんだ。」

 考えてごらん。他の人はいろんなことに口出しするよ。だけどその人達が君の生活を保証してくれるわけでもなんでもないんだ。口出しするならそれなりに保証しろって思うけど、そうじゃないからね。保証もしないし責任もとらないけど口だけは出してくる。そんな人達の意見をまともに受け取って落ち込む方がバカらしい。

 他の人の言葉は良いところだけ受け取って、自分にとって不必要な、また自分を落ち込ませるような言葉は受け取るな。

 

 選ぶのは自分。そう、すべて自分なんだ。

 周りが受け入れてくれるとか、受け入れてくれないって言う前にさ、自分がこの自分を好きじゃなきゃあまりにも自分が可哀想じゃないか。

 だからまず自分を好きになろう。

 どういった性質を持ったって良いよ。とにかく性別とかより人間として「魅力的な人間」になることを目指すんだ。

 私のお客さんたちは私の性別とか性質よりも「人間としてどうか」で見てくれている人たちばっかりだ。だからまずは「男磨き」とか「女磨き」よりも「人間磨き」なんだよ。魅力的な人間になれば、自然と周りは受け入れてくれるようになるからさ。

 そう、目的や目標は、

 性別や個性・性質を越えた「魅力的な人間」になることなんだ。