仕事の関係でトロントと言う東方カナダの都市に行って、本業のクライアントのご家族と一緒に花見を楽しんだ。トロントはカナダ最大の都市で、北米で三番目に人口の多い都市である。トロント近郊域を含めると約8百万人がすし詰めで住んでいると言われている。北米一はもちろんニューヨーク、そしてサンフランシスコ、トロントというわけだ。
東京近郊域は英語ではGreater Tokyo Areaと呼び省略呼称はトロントと同じGTAとなる。ちなみに東京は近郊域を含めると約3千万人で名実ともに世界最大の都市である。そんな略称を同じくする都市同士の友好関係のしるしがこのソメイヨシノなのだ。
1959年に東京都とその住民から贈られたというソメイヨシノは2000-3000本に及ぶという。日本人が贈呈文化をまだ大事にしていた頃の話である。そんな温帯地域に育つソメイヨシノを冬には氷点下10度程まで下がるトロントに送ってしまうあたりも日本人らしいように思う。
日本から贈られた2000本の樹齢2-3年の苗木はハイパーク(High Park・丘公園)に植樹された。トロントに在住した大富豪ジョン・ジョージ・ハワードが所有していた個人の庭園をトロント市に寄付して完成した公園は、このようにして日本とカナダをつなぐ友好関係の証となったわけだ。
公園を散策しているとまるで東京にいるかのような錯覚に陥った。特に雰囲気は砧公園だ。目前に広がる美しく満開のソメイヨシノと背後に見えるビル群の光景は私が慣れ親しんだ皇居付近の東京の風景そのものだったからだ。日本の桜はカナダに移住してからすっかり拝見することは無かったので、このようにしてカナダに居ながらに日本を肌と香りで感じることができたのは幸いであった。

