ひな祭りも終わり、今日こそ先日購入したミニ熔解炉をテストしてみようと思ったが、すっかり昼寝をしてしまった。日中は本業、夕方から火縄銃の研究、そして家族の時間を過ごしたあと皆が寝静まると津田流砲術の復元の練習や古文書の読本をしていた疲れがたまっていたようだ。とくに首が痛かったので奥様と一緒にカイロプラクティックへ午前中行ってきた。カイロプラクティックとは日本ではまだそこまで認知が少ないが、骨をポキポキ鳴らしながら骨を矯正したり、筋の緊張を緩和して態勢を整えたりする医療だ。カナダでは博士課程まで修了しないと就業できない。たまたま同い年の日系四世の友人がクリニックを経営しているのでいつもお世話になっている。元来人に体を触られるのが好きではないがカイロの施術は5分ほどで終わる上スッキリするので大丈夫だ。
さて、そろそろ座学で学んだ内容を実践に活かす時がきた。真鍮部品の復元だ。先日届いたミニ熔解炉は値段の割によくできていて、試すのが楽しみだ。そこで溶かすものが必要になるが、真鍮が必要になる。真鍮というのは高いのである。金や銀ほどではないが、その次に来るくらい実は高い金属である。恐らく江戸時代も同じであったように江戸幕府は一時的に真鍮座という公立取引所を設けて真鍮生産や真鍮価格の安定に努めた。産業史の本によると、日本の真鍮と火縄銃の産業は対の存在であり、真鍮座の出現は火縄銃生産の追跡にも役立ったことだろう。
鋳造型となる木製の火バサミ
そんなことで真鍮が高いと文句を垂れていたところ地元のガン友達が薬莢で良ければあげるよよ申し出てくれた。彼は近代西洋銃の射撃友達で私が行っている復元作業に興味がある様で色々と助言や手伝いをしたいと申し出てくれたわけだ。彼は私よりも四歳年上で、ハンドガンの競技に参加したりしているガンマンだ。以前はカナダ有数の有名通信会社でIT技術者として勤務していたが現在は地元の大学で宇宙物理学専攻の大学生をやっている。
友人が譲ってくれた9mm拳銃の薬莢
そんな彼から貰ってきたのが写真の薬莢だ9mm拳銃の薬莢でこれがたまたま江戸中期から後期にかけての仙台筒と同じ黄銅の比率なのだ。江戸時代以前は亜鉛の欠損から四分一等の銀銅合金が使われていた事も判明しているが、江戸時代に入り亜鉛の輸入が安定したようだ。
薬莢は特に便利な存在だ、なぜなら薄い形状の為熔解に時間がかからず、短時間で熔解できる、短時間で熔解できるという事は融点の低い亜鉛の損耗を回避でき、熔解したまま砂型に入れて鋳造することが可能である。この薬莢も実は買うと高いので無料で譲ってもらえたのはうれしい限りだ、今度雪が解けたら拙宅の食事会に誘うつもりである。

