あの言葉が気になってしょうがない
何度も何度も録音を聴いているかのように頭の中で繰り返される
人気(ひとけ)の無い所で歩いている自分が嫌になる
せめて誰か、一人でも自分以外の「何か」が居たら
エンジンの唸り声でも雛の鳴き声でも良いから
この静寂を破ってくれ
トゥルルトゥットゥー
メールの着信音
懐かしくて目が潤う
葵...
「...大丈夫ですか?」
一秒前には居なかった人の姿
小柄で少し腰が曲がっていた
皺(しわ)で隠れた壮大な知識、記憶と感情を持つ瞳
雪白の髪は紺碧の簪で団子巻きにされていた
手にはしっかりと持った年季のある放棄
何度も何度も録音を聴いているかのように頭の中で繰り返される
人気(ひとけ)の無い所で歩いている自分が嫌になる
せめて誰か、一人でも自分以外の「何か」が居たら
エンジンの唸り声でも雛の鳴き声でも良いから
この静寂を破ってくれ
トゥルルトゥットゥー
メールの着信音
懐かしくて目が潤う
葵...
「...大丈夫ですか?」
一秒前には居なかった人の姿
小柄で少し腰が曲がっていた
皺(しわ)で隠れた壮大な知識、記憶と感情を持つ瞳
雪白の髪は紺碧の簪で団子巻きにされていた
手にはしっかりと持った年季のある放棄
オレは直ちに現実へ引っ張り戻された
あの独特な簪
あの独特な笑み
もしかして...
「皐子ばあさんだよ。覚えているかな?」
頭の中のフォトアルバムが開く
驚く事に全く変わっていなかった
「覚えていますよ。お久しぶりです」
「あの」夜以来初めて心から笑えた
「葵ちゃんはどう?元気?」
口に出してはいけない名前
禁断の「言葉」
歯車は一つ狂って、全てを狂わせる
オレの中の愉快な時計が止まった
「っはい、元気です」
おばさんはオレの目に偽りの色が見えたんだろう
重苦しい沈黙
オレはその間に何回息をし忘れたのだろうか?
何回二人の「記憶」が頭を横切ったのか?
何回蹲(うずくま)って消えたいと思ったのだろうか?
「薫」
おばさんは微笑を浮かべた
「行く所があるんでしょ? 早く行っておいで」
どうして分かったんだ?
昔と変わらず何でも見透かされる
「はい、失礼します」
お辞儀をして歩き始めるとオレは囁(ささや)いた
「いってきます」
自分の口から出た言葉なのに何故か不安になる
ペースを徐々に上げる
そしてオレはまるで逃亡中の罪人のように全速力で走っていた
走って、走って、ただ只管走っていた
気づくとオレはある道を辿っていた
萎(しお)れた植物の道
おかしい...周りはこんなに緑なのに
何でこの道だけが...?
道には終わりがあった
洞窟
目の前には先が見えぬ「口」が大きく開いていた
まるで永遠に叫び続けているかのように
入り込むと危うく頭を洞窟の「牙」に強打する所だった
天井からぶら下がる鍾乳石の姿は危険でありながら美しかった
壁に数え切れぬほどのクリスタルが埋め込まれている
5秒の間何度煌いたのだろう?
奥に進むと「口」へ流れ込んでいた光が弱まる
やがてオレは暗闇に包まれた
心の底から克服したはずの恐怖が甦る
恐怖と同時にある記憶を思い出す
小学校の頃、闇が嫌いで怖くてしょうがなかった
部屋の隅々まで侵す黒いベールに包まれて消えてしまうのかと思った
ある日、部屋の電気を消すと見えたんだ
天井に横たわっている男の子の姿を
その時、オレは「恐怖感」では無く「安心感」を抱いた
オレは闇が怖くなくなった
毎夜ぐっすり眠れるようになった
だけど中学校に入った頃彼は消えた
寝る時彼の姿が見えるのが当たり前だったのに
失って初めて知った
「一人」ってこんなに寂しいんだな
オレは突如記憶の海から浮上する
数メートル先には光の輪が見える
一秒でも早くこの闇から出たい
オレは走って、走って、洞窟を抜けるとそこには見た事の無い風景が待っていた
あの時、オレは不思議に思わなかった
何故崖から見る景色は真昼なのか
オレはただ喜びに溺れた
やっとたどり着く事が出来た...これで全てが...
恐る恐る端まで歩いて恐怖を誤魔化すように真っ直ぐ見た
まるで何処までも羽ばたけるような
雲は頭上を駆け抜け、大地は遥か遠くまで続いていた
こんな絶景で願い事が出来るなんて...
願い事を叫んだら崖から飛ぶんだ。願い事の代償として」
え...?
「代...償?そんなの聞いてないぞ!?」
振り返ってもまた誰も居ない
迷い始める
生か死か、どっちを選ぶべきか
生きれば...
「お前は生きる価値なんかねぇー!」
あの太くて、黒いがざつな文字が見える
大蛇のように首に巻き付く
「生きる価値が無い...役立たず...死」
オレはまた端に立つ
「葵が幸せになって欲しい」
小声で呟く
「幸せな人生を送って欲しい」
声が大きくなる
二度とあのような事が葵に起こらないようになって欲しい!」
涙を流しながらそう叫んで、死と向き合う
だが足は全く動かなかった
微動だにしなかった
「オレは本当に何も出来ない役立たずだ」
端で座り込んで、苛ただしく涙を拭いた
「違うよ、叶ったんだよ浅希の願い」
拳を固める
「何言ってんだよ? 何一つ叶ってないじゃないか!」
オレは素早く立ち上がって気づくと殴り掛かっていた
その苦しみの詰まったを拳は誰かが受けとめた
「「生きたい」って言う願いが」
うそ...
上宮だった
「僕と同じ過ちを犯してはいけない、そう思って浅希にここまで来てもらったんだ」
彼はオレの心臓の場所を指で指した
「分かったででしょ?例え何を言われようが、何が起きようが君はちゃんと「生きたい」って思ってる」
少し悲しげな色が上宮の瞳に表れる
「僕も君のようにそう言う強い願いがあったら良かったんだけど」
オレは眉を顰(ひそ)める
「お前まるで...」
この場から「何か」が消えて行く
気配? 存在? 何かが...
その言葉に天井の男の記憶が一瞬頭を横切る
「サンキューな」
「僕は今日「ここ」とお別れなんだ」
目の前にオレのダチが消え始めた
「ちょっと待てよ! 行くなって! まだお前と...」
「大丈夫」
彼は微笑む
「もう大人なんだから闇は怖くないだろ?」
その言葉に天井の男の記憶が一瞬頭を横切る
お前、いつからオレを見守ってくれたんだよ?
いや、「オレら」を
体が透き通って向こうの風景が見える
もうこれで...
「上宮!」
彼は振り向く
「サンキューな」
オレは笑った
そしてダチと拳を合わせた
...
...
...
アパートに帰った時、手紙が二通届いていた
一つは葵から
そしてもう一つは数ヶ月前に履歴書を送った会社から
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終わったぁーーーーーーーー! やっと。
何かもう最後は終わらしたくて、あまり考えずに書いてしまいました^^;
この連載を書いて一つ分かりました。
私は連載に向いていませんw

