在宅勤務が開始され1か月が経とうとしていたある日の晩
テンから着信が入っていた。
『最近音沙汰がないと思ったら、珍しい
こんな夜にどうしたんだろう。』
・・・・冒頭のシーンへ↓
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
1人会社の事務所に残り、
いま担当している仕事をまとめていたベンジャミン
まとめている間、とても悲しくなってきて冷静ではいられなかった。
『もう、訳が分からない
なんで突然こんな事になるの？
売上なんて、前からほとんどなかったし
会社の経営が難しいなんて、いま初めて聞いた
しかも・・
テンと田辺はなんであんなにあっさり受け入れられるんだろう。
明日から職がなくなるっていうのに、笑ってしょうがないかって・・・そんな問題じゃないでしょう
テンなんて小さい子供も2人いるのに。
もしかして、
事前に知っていたのかな
テンはよく社長と連絡を取り合っているし、
知らされているから、今日驚かったのかもしれない
じゃあ田辺さんは？
田辺さんは母親と2人暮らしで、母は働いていないって言ってたし
収入がなくなると厳しいはずなのに
しょうがないですね、ってあっさりサインするかなぁ
なんか、おかしい・・・。』
色々な考えを巡らせながら
ベンジャミンはせっせと仕事をまとめていた。
2時間は経っただろうが
明日から職を失うという現実に
半泣き状態になりながらもまとめ終えた
『ノートパソコンと鍵、返却しに行かなくちゃ・・・』
ベンジャミンはパソコンを持って
社長のいる上の階の部屋へ向かった。
ドアは常に開いている状態だ。
ドアを開け中に入って挨拶をするが
社長の姿は見当たらなかった。
すると、隣の部屋から社長の奥さんが出て来た
奥さん「あ・・・・」
ベンジャミン「お疲れ様です。
パソコンと鍵を返却しに来ました。」
奥さん「どうもね・・・。
社長は、ちょっと外出してます」
バツが悪そうにベンジャミンを見る奥さん
ベンジャミン「ここに、置いたらいいですか。」
適当にテーブルの上に置こうとしたが、
その時ふと気になった。
テンと田辺は先に帰り、
その前にパソコンを返却すると言っていたが
2人のパソコンが何処にもないのだ
比較的狭い社長の事務室、パソコンを置く所といったらこのテーブルしかないけれど
2人のパソコンは何処にいったんだろう？
他に置く場所もないし
・・・？？
奥さん「・・・・
そこに置いて良いですよ。」
ベンジャミン「あ、はい・・・
短い間でしたがお世話になりました。」
奥さん「はい・・・・。」
ふと、奥さんがいた隣の部屋をチラ見したが
ソファーやテーブルの上に2人のノートパソコンはなかった。
『あれ、なんかおかしいな。』
とりあえず鍵も返却した為、帰るしかないベンジャミン
駅まで向かう間も
ベンジャミンはモヤモヤと考えていた
『あの2人、パソコン持ち返ったって事？
パソコンは皆返却するはずだけど・・・
田辺さんなんて、携帯で適当にまとめるって言ってたのに
どういう事？
そもそも、私より担当企業が多い田辺さんが携帯でささっとまとめられる訳ないよね』
何かがおかしい、ベンジャミンは疑問を抱いていた。
その日の夕方、ベンジャミンにテンから連絡があった。
社用のYahoo!メールのIDとパスワード、同様に宣伝用instagramとネットショップの情報も送るよう依頼があった
『何か怪しい、聞いてみるかな
でも、正直に言う訳ないよね』
とりあえず指示された情報を全てテンに送ったが
やはり気になり
ベンジャミンはテンにかまをかけた
「2人のパソコンはなかったですよ 持ち返ったんですね。」
テン「いいえ、もう会社に返しました。」
『おかしい、2人のパソコンは何処にもなかったのに
何処に置いたか聞いてみるかな
いや、聞いてもはぐらかすはずだ。
もう黙っておこう。』
10分後、何故かテンから着信があったが
ベンジャミンは出なかった
すると
いつも携帯からログインしていた社用アドレスに1通のメールが届いた。
instagramからだった
”あなたのEメールアドレスは変更されました。
新しいEメールアドレスは〇〇です。”
新しいEメールアドレスと表示されているもの、
それは田辺のアドレスだった。
『田辺さんのアドレスに新しく変更されたの？なんで？
会社なくなるなら、もうインスタも更新する必要ないよね。
田辺さん、解雇通知書にサインしてたよね。
どういう事？』
つづく