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Colorful paradise

サークル「Colorful paradise」に関するお知らせとサンプルです。

J.GARDEN48の新刊予定だった本が届きましたので記念に表紙画像をアップ。

しかし今見たら盛大なミスに気付いてしまったのでどうしようか悩み中です。何でもっと早く気付かなかったかなあ・・・・。

昨夜、J.GARDEN48の中止を知りました。

非常に残念です。

この御時世なので仕方がないとはわかっていますがそれでも残念です。

次回は無事開催されることを祈るばかりです。(スタッフ様、色々大変かと思いますが応援しております!)

 

ということでJ.GARDENの初サークル参加は次回に延期となりました。

新刊頒布も次回に延期する予定ですが(既に入稿済でこの週末には届く予定です・・・)内容が『お花見』をテーマにしているので次回開催が秋となると季節外れになってしまうのでどうしようかと少々悩み中です。

 

ひとまずイベント参加まではこちらのブログでちまちまとSSをアップしていきたいなと思います。

よろしければ遊びに来て下さい。

J.GARDENの新刊、入稿終わりました!あとは無事に印刷して頂けるよう祈るばかりです。(印刷所様よろしくお願いします!)

今回は初のオリジナル本ということで3つのカップリングの短編集となっています。

1つは先日SSをアップした『レオンハルト×カイ』、他2つは追々紹介していく予定です。

 

イベント自粛期間が延びてしまったのでJ.GARDENの開催もどうなるか怪しいところですが、開催されれば参加する予定です。

せっかくなのでペーパーラリーも参加したいと考えております。恐らく新刊と関連したレオンハルト×カイのお話を書くことになるかと思います。

 

それでは新刊見本をアップする前に2つ目のカップリングSSを。

 

 

【登場人物】

アキラ(沼沢輝):この世界に存在する唯一の人間。元々飛び級するほど頭が良く、医学を学んでいた。現在はスチリアの自宅に居候しながら彼の手伝いをしている。

 

スチリア:鳥の一族の青年。盲目。レオンハルトとは学生時代からの友人。森の中で暮らしており、薬師として生計を立てている。

 

『雨の日』

薄く開いた窓から入り込んでくる、湿った空気。
今日は朝から雨模様。空を覆った灰色の雲が晴れることはなく、雨が止む気配もない。
――今日は外に出られそうにないな。
森に入って足りない植物を採ってくるのは明日になりそうだ――静かな部屋の中から外を眺めていた輝は、小さくため息を吐き、目の前に広がっている黄色い花を瓶の中に詰めていく。
スチリア曰く腰痛の薬を作るために使うこの花は、三日前に森に入って採取し、昨日の夕方まで外で風に当てて干していたもの。取り込むのは明日でも良いとスチリアには言われたけれど、昨日のうちに取り込んでおいて正解だったなと思う。
乾燥させた花を全て瓶に詰めると、輝はそれを近くの棚の中段に置く。そして同じ中段に並んでいる別の瓶や袋の中身を確認し、不足しているものを書き出していく。スチリアが薬を調合する時に材料が不足していないように調達する、それが輝が主に行なっている作業なのだ。
不足している植物を書き出した後は、どれを優先的に採取するか、順番を決める。一言で森の中で採取出来ると言っても、この家の裏に広がる森はとても広大で、植物によって採取出来る場所も異なる。おまけに輝はまだこの森に慣れていないため、少しでも効率良く植物を採取しなければ、あっという間に時間が過ぎてしまうのだ。
湿気を含む空気によって少し柔らかくなった紙を眺めながら、うーん、と輝は一人、悩む。すると不意に扉が開き、彼は顔を上げて音のする方へと目を向ける。
「アキラ、お茶を入れてきましたから少し休憩にしましょう」
優しい声でそう言いながら部屋に入ってきたのは、この家の主人ことスチリア。彼が持つトレイにはポットと二人分のマグカップ、そしてクッキーが乗った皿が並んでおり、輝は頷くとすぐさまテーブルの上を片付ける。
「ありがと、スチリア。さっきのお客さん、もう帰ったの?」
「ええ、雨が酷くならないうちに買い物を済ませたいから、と言っていたのですぐに帰りましたよ。……少し雨脚が強くなってきたようですね」
言って、窓の外へ顔を向けるスチリアの瞼は閉じたまま。彼の目は幼い頃に光を失ってしまったため、窓の外へ顔を向けたところでその光景を見ることが出来ない。
けれど視覚が不自由になった代わりに他の感覚、特に聴覚や嗅覚が敏感になったらしく、ちょっとした雨音の変化に気付いて雨が強くなったことを悟ったのだろう。五体満足で生きている輝からすれば、それはとても凄いことだなと思わずにいられない。
「確かにさっきより雨が強くなったかな。風も冷たくなってきたし、窓、閉めておくよ」
「ええ、お願いします」
椅子から立ち上がった輝は、すぐさま窓に近付き、隙間のないようにピッタリと閉める。その間にもスチリアはまっすぐテーブルまで進み、カップとお皿を並べていく。その動きには全く迷いがなく、その目に何も映っていないとは思えないほど。スチリアに言わせれば、長年暮らしているため、家の中やその周辺は不自由なく動き回ることが出来るらしい。やはりそれも、輝にすれば感心せずにいられないのだが。
――いつか、見えるようにするんだ。
窓から離れ、席に着きながら輝は密かに己自身に誓う。
輝は薬師であるスチリアの家に居候をしながら、薬草作りに必要な植物の採取を行なっているが、スチリアの手が空いた時には薬の調合方法も教わっている。かつては医学に携わっていたこともあり、これまで蓄積した知識と、新たに加わった知識とを合わせてスチリアの視力を回復させる手段を懸命に模索しているのだ。スチリアは『この状態で慣れていますから気にしなくて良いですよ』と言っているけれど、輝にとってスチリアは恩人であり、大切な相手だからこそ、彼の役に立ちたいと願って止まない。
椅子に座った輝は、己の決意を改めて胸に刻むかのように、そっと服の上から胸元に触れる。
そこにあるのは、以前、スチリアから貰った彼の羽。鳥族であるスチリアは背中に大きな翼を携えており、普段は服の中に隠しているそれを、時折日に当てることがある。以前、偶然目にしたその姿があまりにも綺麗で、運良く抜けた羽を一枚貰い、紐を付けてお守り代わりに首から提げているのだ。
「今日はシベリアンジンセンをメインにしたハーブティーを入れてきました。それからこちらのクッキーは、先ほど薬の御礼に、と頂いたものです。一緒に頂きましょう」
「ちょうど小腹が減ってたんだ。……このクッキー、レーズンが入ってるんだな。美味そう」
明るい声で言うと、輝は早速手を合わせ、まずは白い湯気の立つカップを口元へ運ぶ。薄茶色の液体を口に含めば、ほんのりと口の中に広がっていく甘味と、鼻から抜ける爽やかな香りに自然と肩から力が抜けていく。
続いてクッキーへと手を伸ばせば、レーズンの程良い甘さと柔らかいクッキー生地とがとても合っており、輝は夢中でそれを頬張る。見えなくても雰囲気で輝の喜ぶ様が伝わったのか、スチリアは静かに笑みを浮かべ、そっとカップを口元へ運ぶ。
こんな穏やかな時間がいつまでも続きますように――輝は再びカップを傾けながら、願わずにいられなかった。