J.GARDEN49ありがとうございました & SSその6・ユーキ×フィロ | Colorful paradise

Colorful paradise

サークル「Colorful paradise」に関するお知らせとサンプルです。

大変遅くなりましたが先日はJ.GARDEN49に参加してきました。

久し振りのイベント参加でとても楽しかったのですがスペースが風通しの良い場所だったので寒くて震えておりました…今の御時世、換気するのは当然ですし、もう少し厚着をして行けば良かったなと今更ですが後悔しております。

 

それでもとても楽しいイベントでした。

当サークルの頒布物に興味を持って下さった方、ありがとうございます。

これからもこんなケモ耳な子達の話をのんびりまったり書いていきたいと思っております。

次のイベント参加はJ.GARDENが来年秋以降に開催とのことなのでそのタイミングになると思います。当落次第になると思いますが。

その時はレオンハルトとカイの馴れ初め本を発行したいなと考えております。

 

 

御挨拶だけでは何なのでこの後はユーキ×フィロのSSです。

ユーキとフィロは友達から恋人へと関係が発展したカップルです。

よろしければお読み下さい。

 

 

『口の汚れ』

食欲の秋。その言葉通りに、ユーキは今日も昼食を元気良く頬張っていた。
本日のメニューはサンドイッチ。具はサーモンとキノコ、サツマイモサラダ、栗とタンドリーチキンと多種多様あり、どれも秋の味覚満載である。
そのサンドイッチを作ってくれた恋人のフィロは、目の前に座ってバスケットの中からサンドイッチを一つ取り、ゆっくりと食べていて。ユーキがムシャムシャと豪快に食べる様を見て、顔を顰めるどころかむしろとても嬉しそうに微笑を浮かべている。その顔が可愛くて、もっと喜んでもらいたくて、ユーキは右手に持ったチキンサンドイッチを食べ終えると、へへ、と声に出して笑う。
「このサンドイッチ、どれもすげえ美味い!フィロの作る料理はどれも美味いけど、特にこの栗とチキンのサンドイッチは絶品だな!」
「ありがとう、ユーキ。それは家族に好評だったけれど、ユーキにも喜んでもらえて良かった」
そう言って、少し照れ臭そうに微笑むフィロの姿に少しだけ見惚れながら、ユーキは次のサンドイッチに手を伸ばし、モグモグとしっかり咀嚼する。フィロが持参したバスケットにたくさん入っていたサンドイッチは、既に半分以上が姿を消しており、そのほとんどがユーキの腹の中に収まってしまったのだが、フィロもユーキもそんなことは気にしていない。ユーキの方がフィロより体格も良く食欲旺盛であるため、それを見越してフィロは大量にサンドイッチを作ってきているのだし、それを美味しいと言いながら食べることでフィロが喜ぶことを、ユーキは良く知っているから。
ぺろりとサツマイモサラダを挟んだサンドイッチを食べ終えると、次はカボチャコロッケのサンドイッチへ手を伸ばす。が、それに触れるより早く、不意にフィロが、あ、と小さな声を上げるから、ユーキは動きを止める。
「フィロ、どうした?」
「あ、あのね、ユーキ…口の端にソースが付いてるよ」
「ソース?…ああ、さっきのチキンにかかってたソースだな」
あれは少々甘辛くて美味しかったなあと味を思い返しながら、ユーキは舌を出してベロリと口の周りをひと舐め。しかし指摘されたソースの味はほとんどしない。まだ取れていないのだろうかとフィロを見れば、その視線に気付いたのか、フィロは食べかけのサンドイッチを手にしたまま、小さく首を左右に振る。
「左端の方に付いてるよ。…ほら、この辺」
言いながら、彼は片手をサンドイッチから離して自分の唇の端を指で示すから、それを参考にして再度舌を伸ばす。けれど残念なことにソースの味が舌に蘇ることはなく、ユーキは軽い苛立ちを覚えてしまう。
「あーもう、全然分かんねえ!」
「ユーキ、僕が拭いてあげるから、そのまま大人しくしていて」
そう言うと、フィロはポケットから真新しい白いハンカチを取り出してこちらへ手を伸ばしてくるから、ユーキは指示通り動きを止めてしばし待つ。すると柔らかい布が唇の左端に当てられ、軽くそこを拭うと離れていく。
「…はい、これでもう大丈夫だよ」
「ありがとな、フィロ。俺、食べ方が雑だって良くルーイに言われるんだけど、フィロのおかげで助かったぜ」
「どう致しまして。ユーキの食べ方は豪快だけど、とても美味しそうに食べるから僕は良いと思うよ。それに食事中に口が汚れるのは仕方のないことだし…うちの弟や妹はまだ上手に食べられないからいつも口の周りをベタベタにしてしまって、毎回僕が拭いてあげてるんだ」
「フィロの弟と妹はまだ小さいもんな、上手く食べれないのは当然だ…って、まさか俺のこと、弟扱いしてないよな?」
自分とフィロは同い年であり、体格は自分の方が大きいけれど生まれたのは数ヶ月、フィロの方が早い。その事実を気にしたことはなかったけれど、普段から弟妹の面倒を見ているフィロからすれば、自分もまた図体のでかい弟、と認識されていてもおかしくはない。
ふと生まれてしまった疑問をぶつけると、ハンカチをポケットにしまったフィロは、驚きに目を見開く。それから慌てて首をブンブンと左右に振る。
「お、弟だなんて、考えたこともないよ!ユーキは僕より体が大きいけれど、カイと同じで学校へ入学した時から仲良くしてくれている、大事な友人で…」
「…それで、今は恋人、だよな?」
途中から台詞を引き継ぐと、フィロは俯きながらも、こくりとはっきり首を縦に動かし、急いで食べかけのサンドイッチを懸命に口に運ぶ。その頰が、耳まで真っ赤に染まって見えるのは気のせいではないだろう。人見知りで恥ずかしがり屋のフィロは、ユーキのことを恋人だと認識するだけで赤くなってしまうのだから。
――そんなところも可愛いなあ。
フィロのいじらしい姿を、無意識に鼻の下を伸ばしながら見つめていたユーキは、くる、と腹が小さく鳴ったことで我に返り、次のサンドイッチを掴んで一気に口に放り込む。既にフィロが作ってくれたこのサンドイッチを何個も食べているはずなのに、それでもまだ胃は、美味い物を寄越せ、と訴えてくるのだ。
その訴えに従ってあっさりとカボチャコロッケ入りのサンドイッチを食べ終えたユーキは、再びバスケットへと手を伸ばし、次のサンドイッチを選ぶ。そしてすっかり気に入った栗とタンドリーチキンのサンドイッチを掴むと、それを口に入れる前に、なあ、と目の前で俯いたままのフィロへ声をかける。
「俺のことを恋人だと思ってくれてるなら、次に汚れた時は舐めとってくれよ」
「なっ、舐め…!」
ユーキの台詞に驚いたのだろう、顔を上げてこちらを見たフィロは、ユーキと目が合った瞬間、さらに顔を、首まで真っ赤に染めてしまう。バスケットの脇に添えたポテトにかけたトマトケチャップよりも、イチゴよりも、さらに赤く。
「恋人だったら、そのぐらい普通だろ。それとも俺の口元を舐めるのは嫌なのか?」
「い、嫌じゃない、けど…そんなの、恥ずかしくて…で、でも…ユーキがどうしてもって言うなら…やる、けど…」
言いながら、どんどん小声になっていくフィロの瞳にはじわりと涙が浮かんでいて。これは相当困らせてしまったなと悟ったユーキは、サンドイッチを手にしたまま、もう片方の手を伸ばしてフィロの赤くなった頰をそっと撫でる。羞恥に頰を染める恋人の姿は可愛くて食べてしまいたいほどではあるけれど、泣かせてしまうのは本意ではないから。フィロの泣き顔が綺麗だということは誰よりも良く知っているけれど、笑顔の方がその何倍も素敵なのだ。
「悪い、フィロの反応が可愛くて無理言った。反省してる。だから今のは全部忘れろよ」
「ユーキ…」
「さっきも言ったけど、俺、食べ方には無頓着だから、フィロが指摘してくれてすげえ助かってるんだぜ。これからも汚れてるって教えてくれればいいよ。ついでに拭いてくれると、もっと嬉しいけど」
「…うん、ユーキの口が汚れていたら、僕がちゃんと拭いてあげるね」
そう言ってようやくフィロは笑みを浮かべる。
ほんのりと泣き濡れた瞳で笑う顔は、それまで目にした表情よりも可愛くて。こんな顔が見られたのだからよしとしよう――そんなことを考えながら、ユーキはフィロから手を離し、新たなサンドイッチを食べることにしたのだった。