プラトーン | CINEMA道楽

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映画を見続けて40余年。
たくさん見過ぎて
忘れてしまうので、
映画館やテレビで観た
映画の鑑賞日記を
つけることにしました。
ネタバレもありますので、
未見の人は気をつけてね

 ベトナム戦争を扱ったハリウッド映画はたくさんありますが、ほとんどの作品のテーマに据えられているのが「狂気」と「善悪」の問題です。
 遠いアジアのジャングルの中で終わりの見えない長期の戦闘に身を晒したアメリカ人にとって、ベトナム戦争は「極限状態にまで追い詰められた狂気の記憶」なのだと思います。

 数あるベトナム戦争モノの中でも、この作品は大ヒットし、アカデミー賞も受賞しました。
 「自分探し」の感覚で志願してベトナムに来た新米兵士が、戦場での狂気を目の当たりにし、極限状態を経験し、ある意味「自分探し」を成功させるストーリーです。
 この若き兵士を演じたのがチャーリー・シーンです。
 ちなみに、私のベトナム戦争モノのマイベストはチャーリー・シーンのお父さん、マーティン・シーンが主人公の「地獄の黙示録」です。

 「プラトーン」はジャングルの中の戦闘シーンの尺が長いです。
 戦闘経験が少なく士気も低い部隊が、敵襲でパニックになり、グダグダになっている様子がリアルに描かれています。
 味方同士で疑心暗鬼になって銃を向け合ったり、現地のただの農民もみんなゲリラ兵に見えてきて、村ごと問答無用で焼き払ったり、目を覆いたくなるようなシーンが続きます。
 この作品に限らず、ベトナム戦争モノの映画に出てくる登場人物はみんな「頭おかしい」と思うような人ばかりですが、彼らの頭がおかしくなって行く過程がわかりやすく描かれています。
 でも、この作品の登場人物たちには「人間らしさ」が十分に残っています。狂気といっても「極限状態に追い詰められて錯乱してる人たち」という印象で、戦場を離れてアメリカに戻れば普通に暮らせるだろうな、と思うレベルの「狂気」なのです。

 その点、「地獄の黙示録」では、帰還しても普通の社会生活には戻れそうもないと思うような「完全にイっちゃってる」人たちが多数登場します。
 「フルメタルジャケット」では、映画の半分をベトナム派遣前の訓練施設のシーンに費やして、徴兵された若者を「狂気の殺戮マシーン」に仕立てて行く様子が克明に描かれています。
 この2本の「イっちゃってる度」があまりに凄くて怖いので、「プラトーン」も秀作だとは思いますが、私にとってはヌルい部類のベトナム戦争モノです。