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本記事のテーマ
コルゲート・パルモリーブ社は、大胆な財務戦略により、利益をため込まず、積極株主還元策をしている会社です。
このため、日経Biz「企業の稼ぐ力ランキング米国No1」に選ばれた隠れた優良企業とも言えます。
企業概要・ビジネスモデルを確認しつつ、直近の4半期決算であるQ1決算の結果を踏まえ、今後の見通などを検討する上で参考となる記事となっています。最後まで閲読のほど、よろしくお願いいたします。
動画でも同趣旨の内容を解説しています。
コゲート・バルモリーブは、日本人にとってはなじみの薄い企業だと思います。
しかし、コルゲートは、世界的に展開する米国消費財メーカーであり、大胆な財務戦略により利益をため込まず、積極株主還元策では、米国No1の隠れた優良企業です。
米国企業No1のROEを誇るコルゲートは、配当性向などを重視し、自社株買いや増配に積極的です。また、このように株主還元を重視できるのも、盤石の経営態勢(環境)にあります。
ボラティリティは決して高くはないので、大きくキャピタルゲイン狙いの投資家にとっては、面白みに欠ける企業かもしれませんが、財務基盤や経営の安定性がしっかりしているコルゲートに関心をもってもらえればと思います。
コルゲート・パルモリーブ社(Colgate-Palmolive Co).とは、石鹸、洗剤、歯磨剤、ペットフードなど日常生活用品を開発、製造、販売しています。一言でいうと、歯磨き粉・ブラシの世界最大手企業と言えます。
1896年にチューブ入りの歯磨き粉を世界で初めて導入するなど、口腔衛生製品メーカーの老舗です。日本では無名なコルゲート製品ですが、世界中200以上の国と地域で販売されています。業界的には、日本の花王やライオンに近いと思います。
本社所在地はニューヨーク州にあり、1806年にウィリアム・コルゲートがニューヨーク市で石鹸などの工場を創業したことにはじまり、その後、1864年にB.J.ジョンソンがミルウォーキーで創業した石鹸など日用品製造会社のPalmolive Companyを合併して、概ね現在の会社を形作りました。
現在のCEOは、ノエル・R・ウォレス氏、56歳で就任は2009年となっています。コルゲートの前は、ケロッグ社、アメリカンクリーニングインスティテュートで取締役も務めました。ちなみに、学歴ですがテキサスA&M大学(The world university rankingsによれば、全米93位/2018年度)で学士号を取得しているようです。
コルゲートには、2つのコア事業があります。
まず、一つ目の事業は、オーラルケア製品・パーソナルケア製品・ホームケア部門です。歯磨き粉「コルゲート」、歯ブラシ、石鹸、シャンプー・リンス、制汗剤、脱毛製品のほか、洗濯洗剤、食器用洗剤、衣類柔軟剤、漂白剤などを製造しています。
2つ目の事業は、ペット栄養部門です。「ヒルズ・サイエンス・ダイエット」ペットフードなどを提供しています。
オーラルケア製品、パーソナルケア製品、ホームケア製品の売上高は、2020年の全世界の純売上高のそれぞれ44%、21%、18%を占めています。事業の地域的な展開は、オーラルケア製品はアジア太平洋地域での事業が全体の約81%を占めています。
犬と猫のための特殊なペット栄養製品の世界的リーダーであり、製品は世界80を超える国と地域で販売されています。ペット栄養製品の売上高は、2020年の全世界の純売上高の17%を占めています。
4.1 株価
6月21日の引け値で81.44ドルです。年初来では-2.89ドル(-3.43%) となっています。過去5年の単年度の株価上昇推移を見ても、デコボコしていて、平均すると年5%程度ほど上昇しています。配当率も加味しても年率7%台ほどであり、短期投資家にとっては面白みに欠けると思います。
しかし、株価推移の全期間のチャートを見ればわかりますが、長期的にみれば安定しており、着実に株価は上昇していることがわかります。19世紀末にはチューブ入り歯磨き粉もでき、既にこの業界は成熟期でありながら、コルゲートは業界No1のシェアを誇っており、株価のボラティリティこそありませんが、資産形成をする上では非常に安心できる銘柄だと言えるのではないでしょうか。
4.2 過去5年の状況
損益計算書の推移をみると、売上高は15000M~16500M、純利益は2000M~2700M、営業CFマージンも概ね20%と安定しています。決して若い企業ではないので、毎年毎年右肩上がりというわけにはいきませんが、営業CFマージンは15%以上あり優良といえます。
(CL Investor Presentation)
貸借対照表の推移は、自己資本比率(株主資本÷総資産)のS&P500の平均が32%のところ、コルゲートは毎年10%以下です。今回はじめて計算してビックリしました。何かの間違いではないかと何度も決算書を見直してしまいました。恐らく、自己資本比率が低くても、一般消費財メーカーとして確実に売上、純利益が見込めるため、銀行からの融資も受けやすいことが背景にあるとみています。事実、流動化比率(流動資産÷流動負債)はほぼ毎年1以上あり、経営的に安全性を保っている状況です。すなわち、流動負債(=短期返済額)以上に流動負債(=短期返済能力)があるため、倒産する可能性はほぼないと言えます。
出典:CL Investor Presentation
キャッシュフロー計算書においては、過去5年間、フリーCFはすべて黒字です。営業CFが高いため、積極的な投資や自社株買い等ができるのだと思います。
出典:CL Investor Presentation
4.3 2021年1-3月期;Q1決算
EPSは、結果0.8ドルに対し、アナリスト予想0.8ドルでEven、売上高は、結果 4.33Bに対して、アナリスト予想4.23BとBeatで、Q1決算は概ねよかったのではないでしょうか。また、粗利率、営業利益率、純利益率はそれぞれ、60.7%、23.1%、15.9%と非常に高い状況です。純利益691Mのところ、配当支払いに376M、自社株買いに372Mと純利益を越える株主還元を実施している状況です。
5.1 大胆な財務戦略;積極株主還元策では、米国No1の隠れた優良企業
ROEが一番高いということを説明しましたが、一般的にこれは好配当や株価上昇の期待が大きい銘柄の指標としてみなされています。好配当性で言えば、2019年の資料ですが、コルゲートは57年連続増加配当をしています。米国ではROE(自己資本利益率)が高い評価を基準にコーポレート・ガバナンスが確立されていて、企業の株主還元意識が強いことは米国企業の特徴です。ROE(自己資本利益率)、配当性向などを重視し、自社株買いや増配に積極的なのです。このような評価基準の中で、コルゲートはNo1と言えます。
出典:CL Investor Presentation
ROEは当期純利益÷自己資本で算出します。つまり、与えられた資本をどれだけ効率的に生かし利益を出したかを示す指標です。米国企業のROEは平均的に日本企業の倍近いといわれます。日本は法人税が高く、ROEが低くなりがちな面もあり、あまり関心が持たれていませんが、米国ではROEが高い企業への評価が高いのです。
ほかにも、有名なところで言えば、米国のジョンソン・エンド・ジョンソンやプロクター・アンド・ギャンブル(P&G)などは、50年超も連続増配を続けています。
また、配当と並び重要な株主還元策が自社株買い。米国企業の総還元性向((自社株買い+配当金)/純利益)の平均は、日本企業の倍以上になっており、S&P500企業で言えばここ最近の推移は90%前後です。そのような中、コルゲートは過去5年120%前後で推移しています。
5.2 圧倒的な世界市場シェア
コルゲートは世界最大の歯磨き粉メーカーです。下の図はちょっと古いですが、2014年頃まではコルゲートの歯磨き粉は44.5%の世界市場シェアを持っていました。最も近い競合他社の世界市場シェアは14%で、コルゲートの巨大な市場シェアと比較してはるかに小さいです。
出典:CL Investor Presentation
2021年1月29日のプレスリリースによれば、『歯磨き粉におけるコルゲートのリーダーシップは、年初来で39.8%の世界市場シェアを維持し続け、手動歯ブラシにおけるコルゲートのリーダーシップは、年初来で31.1%の世界市場シェアを維持』していると公式発表をしているので、口腔衛生産業の皇帝と言えます。
また、その世界シェアは、新興国へ拡大しています。1994年、コルゲートは世界の練り歯磨き市場で31%のシェアを獲得し、その後、20年以上にわたって市場シェア拡大してきました。その強力なグローバルプレゼンスには、アジア太平洋地域とアフリカの新興市場への足がかりが含まれており、その地位は強化されることが期待されています。同じ期間に、コルゲートの2つの最も近い競合他社は市場シェアを失っています。
これは、コルゲートが研究開発とマーケティングにおける強みを活用して、世界の練り歯磨き市場でのシェアを拡大したことの証拠です。世界の人口約70億人のうち、約50億人は現在も虫歯に苦しんでいると言われています。新興市場の消費者の購買力は高まっており、コルゲートは、口腔衛生市場に、優れた機能性と強力なブランドイメージを備えた世界トップの練り歯磨きを今後も提供していくと考えられます。
5.3 大手歯ブラシメーカーとして成長
コルゲートは過去20年間で市場シェアを大幅に拡大し、2006年から2007年にかけて世界をリードする歯ブラシメーカーになりました。1994年、コルゲートは世界の歯ブラシ市場シェアの18.4%を占めました。コルゲートは何年にもわたって市場シェアを拡大し、2014年までのデータでは世界の歯ブラシ市場の33.5%を占めています。最も近い競合他社は、以前は1994年に26.2%の市場シェアでナンバーワンの地位を占めていましたが、その後その優位性を失い、2014年にはそのシェアは20.4%に低下しました。なお、現在のコルゲートの歯ブラシ市場におけるシェアはやや下がったものの、31.1%で業界No1を誇っています。
出典:CL Investor Presentation
5.4 ブランド力・技術力をもった才色兼備
年次歯科医追跡調査によれば、コルゲートは世界中の口腔衛生専門家によって最も頻繁に推奨される歯磨き粉のブランドとなっています。この調査では、47%の歯科医が患者にコルゲート歯磨き粉を推奨していることが明らかになっています。口腔衛生専門家からの大きな支持は、コルゲートが他の練り歯磨きブランドと比較して一流で効果的な口腔医療を提供していることの強力な証拠です。
事実、優れた製品品質と言えます。コルゲートは、研究開発を通じて製品の機能を改善し、従来の練り歯磨きと比較したコルゲートの糖酸中和剤処方の有効性をテストを8年間にわたって世界中で実施され、14,000人の子供と大人が参加しました。その結果、コルゲートの糖酸中和剤の処方は優れた結果をもたらし、初期の虫歯を半分に減らしました。ブランド力だけでなく、技術力も兼ね備えていることがわかるかと思います。
出典:CL Investor Presentation
大きくキャピタルゲイン狙いの投資家にとっては、面白みに欠ける企業かもしれません。しかし、財務基盤や経営の安定性がしっかりしているコルゲートの株式をポートフォリオに追加すると、ポートフォリオのボラティリティを減らすことができるかと思います。
コルゲートは、株主還元性でNo1企業である前に、世界の口腔衛生業界を支配しており、明確な優位性を持っています。20年以上にわたり、練り歯磨きおよび歯ブラシ市場で世界市場シェアを拡大することに成功するとともに、歯科医が最も推奨する歯磨き粉のブランドです。投資家の考え方によりますが、株主還元性に優れ、経営も盤石であるコルゲートは、長期的かつ安定した優れた投資対象になるかもしれません。
というわけで以上です。
動画でも同趣旨の内容を解説しています。