神経軸索の形成 | きくな湯田眼科-院長のブログ

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横浜市港北区菊名にある『きくな湯田眼科』

ここで神経の構造をもう一度復習してみましょう。



神経は本体である細胞体、信号を受け取る入力部分である樹状突起、信号を出す部分である軸索の3つに分けることができます。他の神経や感覚器からの軸索は、樹状突起か細胞体にシナプスを形成し入力しています。



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樹状突起には多数のシナプスが見られます。その数は運動神経で1万、小脳プルキンエ細胞では15万ほどにもなります。



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樹状突起により生じたシナプス後電位が合わさり、ある値(閾値)を超えると軸索丘で活動電位を生じます。



シナプスを介して入力された他の神経からの信号は、シナプスで神経伝達物質によるイオンチャンネルの開閉によりシナプス電位に変換されますが、この電位は連続的に大きさの変わるアナログ信号です。


シナプスには興奮性シナプスと抑制性シナプスがあり、それぞれのシナプス電位をEPSP(興奮性シナプス後電位 : excitatory postsynaptic potential)、IPSP(抑制性シナプス後電位 : inhibitory postsynaptic potential)と呼びます。


EPSPとIPSPの電位方向は逆で、互いに相殺し合います。これらの電位変化が集合し、閾値に達すると軸索丘で活動電位が発生し、活動電位は神経インパルスとなり軸索を伝わっていきます。シナプス電位が閾値に達しなければ活動電位は生ぜず、神経インパルスは1(活動電位が発生する)か0(発生しない)かのデジタル信号となります。



こうして感覚器などで集積されたアナログ情報は、神経細胞により電気通信分野のFM(周波数変調)と同じようにデジタル化され、活動電位の頻度として他の神経細胞に伝えられることになります。



シナプスの形状には樹状突起の幹にある幹シナプスと樹状突起の棘(スパイン)にある棘シナプスがあります。


幹シナプス


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棘シナプス

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スパインの構造は図のようになっています。



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スパインは神経インパルスの増加などにより樹状突起より発芽することが知られており、可塑性を持ちます。(この点に関してはまた別の機会に述べます。)



神経細胞が発生または再生するとき、細胞体から神経突起が出て、この突起は何らかの因子により誘導され成長していきます。標的まで誘導されると、そこでシナプスを作ります。


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成長過程にある神経突起先端を成長円錐growth coneと言います。成長円錐の構造は図のようになっています。



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フィロポディア(糸状偽足)内ではアクチンの重合・脱重合が並行して起こっており、この結果フィロポディアは伸びたり縮んだりした動きを生じます(その様子はあたかも昆虫が触覚であたりを探っているように見えます)。




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基質のタンパク分子(ラミニン等)にフィロポディア内の受容体(インテグリン)が結合すると、フィロポディアは固定されその方向へ神経突起が誘導されていきます。



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のように軸索形成はラミニンなどの細胞外基質に組み込まれたタンパクにより誘導されていきますが、このような接着型の誘導因子を短距離作動性誘導キューguidance cueと呼びます。



これとは別に濃度勾配により軸索を誘導する因子があり、これを長距離作動性誘導キューと呼びます。長距離作動性誘導キューとしてはネトリン、NGF(神経増殖因子)などのニューロトロフィンファミリー、HGF(肝細胞増殖因子)などが知られています。


長距離作動性誘導キューの濃度勾配に従って、軸索は成長していきます。


下の図はNGFにより軸索の成長が誘導されているところです。




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また、反対に阻害的に働く因子:反発キューrepellent cue も知られており、この反発キューは錐体交叉や視交叉の形成で重要な役割を演じていることが知られています。こうしてこれらの遺伝的に発現したタンパクの誘導により、軸索はそのあるべき位置へと誘導されていくことになります。