人工網膜 | きくな湯田眼科-院長のブログ

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横浜市港北区菊名にある『きくな湯田眼科』

近頃、大阪大学で人工網膜の網膜色素変性症患者への臨床治験が行われることが報道されました。


人工網膜とは視細胞の機能が失われ、失明したひとの網膜を電気的に刺激して視覚を得る装置です。

早くは1968年に米国で脳や網膜を電気刺激して視覚を得る実験が行われています。これらは残念ながら実用に至るような成果は上げられませんでした。


1970年代は主として視覚野を電気刺激する人工視覚の研究が行われ、1980年代後半からは網膜を直接電気刺激する人工視覚の研究がなされて来ました。これらの研究では米国を中心とした海外勢が先行していましたが、我が国の研究も国家の支援も得て追いついてきた感があります。


人工網膜には超えなければならない問題がまだ山積している状態で、これから行われる治験がすぐに臨床応用に結びつくことは考えにくいとは思いますが、中途失明の患者さんたちには朗報であることに間違いありません。


一方でチャンネルロドプシンを用いる視覚再生も大いなる可能性を秘めています。


チャンネルロドプシンはクラミドモナスという単細胞緑藻で発見されたタンパク質で、光受容チャンネルとして働き、青色の光に反応し細胞に電気反応を生じさせるもので、Nagelと言う人が2002年に発見しました。これを光感受性のない細胞に組み込むと、その細胞は光感受性のある細胞に変化し、光に対し電気反応を起こすようになります。


網膜の神経節細胞にこのタンパクを組み込むと、神経細胞自体が光に反応するようになり、光を感知する視細胞が失われた場合でも視覚を得ることができるようになるのです。すでにマウスでは実験に成功しており、視覚が失われた状態のマウスが、再び視覚を得たことが示されています。


人体に応用するには安全性の問題等クリアーしなければならない問題も多くありますが、人工網膜よりは臨床応用できる可能性が高いように思われます。