クリスマスを目前に控えた金曜日。私は大学での講義が終わり、2時間半の道のりを経て家についた。約束は18時30分。急いでメイクを直し、紺色のワンピースに身を包み、約束の駅へと向かった。駅のホームを見渡す。まずはひかりと合流し、心を踊らせながら比嘉と恭也の待つ改札の外へ。長いエスカレーターを上がると二人がいた。2人を見つけた途端に、私の隣を歩いているひかりのテンションが一気に上ったのを感じた。ひかりはとても興奮していた。その興奮はただ一人。恭也に対するものだった。

「キャー!お久しぶり~!お2人とも元気だったあ!?

(テンションたっかいなあ)心のなかで若干引きながら、私もひかりに続いて2人に声をかけた。

「ほんと、久しぶりだね!恭也、背伸びたよね!比嘉は変わらないね、笑 2人とも元気だった?」

私は務めて平静を装っていた。

ひかりが恭也を見て興奮したのも無理はない。私達が初めて出会ったのは中学一年の春。当時の恭也は背が低かった。クラスで一番低かった。顔は悪くなかったが、あれぐらいの年齢の女子の間では、背の低い男性は恋愛対象というよりかは、かわいい、というふうに見られがちなのだ。だが努力をする人であった。テストでは学年一番になるほど。だが、背が低かったのだ。

 そんな恭也が、そこそこの顔立ちに成長し、背も成人男性平均並に伸び、おまけに来春から国立大学への編入がきまっているという。つまりひかりは、そこそこのハイスペック男になろうとしている男を目の前にして興奮する女であった。というだけの話なのだ。

こんなつまらないことを、『親友』という関係であるはずの彼女を目の前に考えていた。もっとも、彼女にはすでに同棲している恋人がいる。そして、恭也には半年後には恋人ができる。その恋人が私であった。恋人というにはあまりに冷めていて、他人過ぎた2人だったが。

 

 その夜は4人で酒を飲み、人生ゲームをし、一晩中騒いだ。今どんな生活しているの?恋愛経験は?……数年ぶりに顔をあわせた4人は、お互いの近況報告から始まり、あの頃のように無邪気にはしゃいでいた。ひかり以外の3人は学生であり、揃って交際経験がなかった。地味で真面目な学生生活。似たものが3人集まったと笑っていた。笑いながら私は、恭也と付き合うことを心のなかで決めていた。国立大に編入を控えているのだ。話していると地頭は良くないが、知識を叩き込んできたことが伝わってくる。努力ができる人なのだ。もっとも、大学で学んでいる専門の知識を長々と話されるのは苦痛ではあった。しかし当時の私は、話がつまらない人が格好いいと思っていた。