『紫にそまる恋』解説 ~翳ろふ(2) | YUKARI /紫がたりのブログ

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みなさん、こんばんは。

デザインの仕事が大量に舞い込みましたので、ちょっとお休みをいただいておりました。

どのようなデザインを描いたかはまた今度紹介させていただきますね。


本日は翳ろふの章について続きを解説してゆきます。


前回ではこの章が原典蜻蛉の帖に相当すると記しました。

さて、浮舟の死は世に知られぬものの、彼女に縁のあった者たちには暗い翳を落としたのです。

薫は浮舟が匂宮と通じたことさえあの宇治という寂しい里にあったゆえ、ひいては己の罪科であると自身を苛むのです。


匂宮も儚かった浮舟との縁を嘆き、病人のように床に臥せりますが、浮舟への想いを共有できる妻の中君がおります。

浮舟を失った今となってはその恋も過去のものとばかりにすべてを中君に白状した匂宮に中君はいささかの恨みを滲ませながらも許すのです。

そして心裡では自分たち姉妹の只ならぬ運命に心を痛めるのでした。


薫と中君の胸に去来するのは、もしも浮舟が匂宮と出会わなければささやかながら幸せなビジョンがあったであろうか、という夢。

しかしながらそれは蜻蛉のごとく儚く潰えたのでした。


匂宮が病床にあると聞いた薫はそれが浮舟の死による宮の精神的なダメージからだと看破し、憎くも気の毒であるようにも思われる。

世間体を鑑みるにやはり貴族たちが見舞いに二条院を訪れるのを自分も習わなくてはと腹を括るわけです。

浮舟と宮との密通はすでに薫の中では確信に変わり、実際に匂宮を前にしては平静を保てなくなる薫はとうとう浮舟のことを宮にぶつけたのでした。

普段沈着で物事に囚われない薫の激情に宮は初めて犯してはならぬ物もあるかと反省するわけですね。

薫自身も自分の裡にこれほどの嵐が存在するとは知らず、改めて人を喪うことの辛さを思い知ったのです。


大君を喪った悲しみと浮舟を喪った悲しみ、同じ悲しみではありますがそれは全く別々のもの。

人は生を受けた時から出会いと別れを繰り返してゆく生き物である。

そしてそれを深く捉える生き物であると思わされる所でした。


明日も翳ろふの章について解説致します。






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