みなさん、こんばんは。
本日は『野分(のわき)』の帖を解説致します。
この帖では夕霧が紫の上を垣間見てしまうという出来事がありますね。
私は個人的にこの場面が好きなのです。
というか、どのように抒情的に表すかというのに苦労しました。
夕霧の心情がこの場面では重要ですね。
ほんの一瞥で夕霧が恋におちる瞬間を表さなければなりません。
そして原典にある一文が私を悩ませました。
夕霧は紫の上の微笑みで一瞬にして魅せられるのですが、何故紫の上は笑ったのでしょうか?
風がびゅうびゅうと吹いて女房たちが右往左往しているなかで、紫の上は何に笑ったのでしょう?
原典では「どうしたわけか、紫の上が笑っておられる」という感じなんですよね~。
まったくよくわかりません。
そこで私は紫の上が植物の生命力を愛しく思いながら、皆を安心させるために微笑んだということにしました。
その慈悲深く思いやりのある笑みを夕霧は見たのです。
その艶やかさは春の暁に霞んだ樺桜のような美しさで夕霧は心を奪われたというようにしたわけです。
この帖では夕霧が源氏と玉鬘の関係をのぞき見てしまう場面もありますね。
私の中で夕霧は、融通は利かなくても、若く潔癖で真面目な好青年です。
そんな夕霧があんな痴態を垣間見て動揺するのは当たり前ですが、それを嫌悪する姿を描きました。
源氏の懸想は恥知らずで一方的なものです。
それをちょっと風刺した感じになりましたね。
明日は『行幸(みゆき)』の帖です。
『源氏物語』次回『梅枝(むめがえ)』は、9月28日(金)より再開いたします/ゆかり