みなさん、こんばんは。
本日の解説は『胡蝶(こちょう)』です。
この帖の最初はまたもや雅やかな貴族の春の宴から始まります。
タイトルの胡蝶とは秋好中宮が前年の秋の挨拶のお返しに紫の上が返してきた趣向が気に入り、自身を胡蝶になぞらえたものですね。
それとともに暗示的に私には思えます。
胡蝶とは本来、胡の国(=今のモンゴルあたり)の蝶という意味です。
平安貴族の装束にはこの蝶の文様が多く織り出されておりますが、蝶というのは神秘の生き物だったのです。
卵から幼虫になり、蛹に変わり羽をもつ成虫となるのです。
地を這うものが変態して空に舞い上がる様はまさに『羽化登仙』。
美しい形もさながら昔の人はあこがれを持ったのですね。
さて、胡国の蝶はこの国には伝わらず、文様が入ってきたわけです。
その形状から蝶と蛾はあまり区別されませんでした。
蛾は光を求めて寄って行く習性がありますね。
時は平安時代。
庭先に焚かれた篝火に向かって己を焼き尽くす蛾もいたことでしょう。
まるで源氏の恋のようではありませんか。
玉鬘に惹かれていく源氏はとうとうこの帖の最後で愛を告白します。
この恋は御仏が禁じたものです。
というのは仏の御法には親と子が契ってはならぬとあるのです。
義理とはいえ親と子、それは禁じられた恋なのです。
もしも破れば御仏の導きを得られないと信じられていました。
源氏はすでに藤壺との恋でこの禁を犯していますが、源氏のエゴで玉鬘まで罪を負わせるのはなんとも気の毒なことです。
その煩悶がまるで火に飛び込んでいく蛾のように思われてなりません。
明日は『螢(ほたる)』です。
『源氏物語』次回『常夏(とこなつ)』は、8月6日(月)より再開いたします。





