中将家の若君誕生後、春の司召(位の任命)があり、中将は中納言に、父である左大将は右大臣に、妹姫の婿である蔵人(くろうど)の少将は中将にそれぞれ昇進しました。
父と祖父が一挙に昇進したことから、まるでこの若君が幸運を運んできたように思われて、ますます愛おしまれるおちくぼ姫と若君です。
(おちくぼ姫の夫と実父である源中納言とはこれで位が同じになりましたので、区別しやすいように便宜上姫の夫・道頼のことを『新中納言』と呼ぶことにします)
おちくぼ姫は自分が幸せに恵まれれば恵まれるほど、父の源中納言はどうしていることか、と考えずにはいられません。
もうかなりの高齢なので、ここに自分が元気で幸せに暮らしていることを知らせてあげたいのですが、夫である新中納言は
「まだその時期ではない」
とよい顔をしないので、賢い姫はそれ以上何も言わないでいるのでした。
そうしてまた今年も賀茂祭りの時期がやって来ました。
今年は例年にも増して盛大な催しになるということです。
新中納言家では祭り見物用に大きくて立派な牛車を何台もしつらえさせ、女房たちの衣装も新調させました。
当日は相当の混雑が予想されたので、少将は家臣たちを先に行かせて場所取りを命じておきました。
そして車からゆったりと祭り見物をしようという趣向です。
新中納言家は昼近くにゆるゆると出かけましたが、立派な牛車が何両も続き、それはきらびやかな行列に人々は道をあけて貴人の通り過ぎるのを眩しそうに眺めたのでした。
新中納言家の家臣たちが場所取りをしたところにつくと、一台のボロい牛車が打っておいた杭を無視して停めてあります。
新中納言家の雑色たちは、不快に思ってその車をどかそうとしました。
「なぜわざわざ人が取っておいた場所に車を停めるのだ」
あちらの雑色も負けてはいません。
「ここがいいと主が言っているのだ。少しぐらいはみ出したってかまわないだろう」
雑色は気の荒い者が多いので、この小競り合いが何やらあやしい方に向きそうな気配です。
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