『落窪物語(2)』 | YUKARI /紫がたりのブログ

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紫がたりのブログ-おちくぼ2

さてここで平安時代の貴族の姫がどのような生活をしていたのかをお話ししましょう。


身分の高い姫君というものは、邸の一番奥深いところでかしずかれ、屏風や几帳で遮られた空間に寝起きしていたもので、顔をさらすということはありませんでした。

また顔を見られるということは、嗜みがないとされていたのです。


女房と呼ばれる侍女たちが姫の世話をまかされています。

季節にそぐった着物を選び、香を焚き染め、長い髪を梳いてまめやかに世話をするのです。


中納言の北の方腹の四人の姫君たちは、贅沢な着物と食べ物をたっぷり与えられ、深窓の姫君らしく大切にかしずかれていました。


しかしおちくぼ姫の部屋には几帳の一つもありません。

粗末な夜具と手回りの品を収めた箱、それから筝の琴だけです。

ケチな北の方は姫に最低限のものだけを与えて、使っていたのです。


筝の琴を手元に置くのを許されたのは、十歳になる弟の三郎君(三男)に琴を手ほどきさせるためで、姫を思ってのことではありませんでした。


おちくぼ姫は中納言の姫君の中で最も美しく、皇族の血を引くらしく気高い様子でしたが、このように不憫な境遇だったのです。


三の君が裳着(成人の儀)を迎え、それと共に婿を取ることが決まりました。


相手は当代一、二を争う人気の貴公子・蔵人の少将(くろうどのしょうしょう)です。

家柄もよく、将来有望なだけではなく、美しい殿方なのでした。


北の方の采配が見事に決まったわけですが、そうなると忙しくなるのはおちくぼ姫です。

婿になる蔵人の少将の衣装を一揃え縫わなくてはなりませんし、新婚の三の君の為の衣装も後に控えています。

時には眠ることもできずに、ひたすら縫い物だけをさせられているのでした。


これを口惜しく思っていたのが阿漕(あこぎ)です。

阿漕は自分の大切なお姫様をいつか立派な公達に嫁がせて、何とかこの境遇から救ってさしあげなければ、と強く心に刻みました。



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