その村には井戸があった。しかし井戸の中にある一族が住んでいて水の流れは止められていた。
「実はその水は飲めないのではないか」
と私はモグラに尋ねた。
彼女たちは薄暗い場所に住み、動作も鈍く、非合理的な行動が多いためにモグラと呼ばれていた。蔑称である。
「そんなわけがあるか」
とモグラの一人は嘲笑によって応えた。どうやら井戸の上にある村は単純な忌避の心によって水不足に甘んじているようであった。
レガリア、呪物。モグラはそれを持っていた。私はそれを「可能性の卵」と名付けた。それを持っている人間の思考が実現するという代物である。自他問わず影響を及ぼす。見た目は小さな虎のキーホルダーのようであった。
どうやら水の独占はそれによって地上の人の心を操った結果であるようだった。
幼いモグラがいた。私は彼女の赤いランドセルについていたそれをひょいと取って、そして祭りに紛れ込んでいるという噂であった二人組のレイプ犯を目の前にする。二人の男はスクラムを組んで動かなくなった。公衆便所の壁の物まねをする芸人に彼らはなりたがっていると私が考えたためである。
一族の秘密を知られることはタブーであったようで私はモグラにあまり好かれなかったようだ。
井戸の底を訪ね、そしてこの呪物自体が効力を持たなくなることを望むと考えた。栄養価値が異様に膨れ上がった井戸の底の水は白く濁っていた。その水が再び透明になる。モグラは激怒した。
「可能性の卵」はどうやら一つではなかったようで私はモグラの一人に呪いをかけられる。成功を望まなくなるという呪いであった。