桜の園 | 秒速5センチメートルのblog

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秒速5センチメートル それは桜の花びらの舞い落ちる速度 そんな風にひらりひらり優しく揺れながら書いていたいかな。

8月はあまりにも多忙過ぎて・・・舞台はひとつだけ。

それが「桜の園」でした。2012年に上演された時

そんなにも興味はなく行かなかったのですが知り合いが

悲劇のような喜劇のような喜劇のような悲劇のような?

とても面白い感想を述べていて、その時にああ、観ておけば

良かったなあ・・・という気持ちになった覚えがあったのです。

なので今回は速攻チケを取っていました。

 

内容と言えば没落した貴族?が所有していた桜農園を

売って借金返済にあてるというだけのお話。

その農園を売り払うまでの人間模様が面白可笑しくそして

切なく描かれているといった感じでした。

 

大きく分けると4幕に分かれています(パンフにありました)

休憩は1回でしたけど。

 

1幕(5月)

家の借金問題で川島海荷さん演じる娘のアーニャに連れ戻された

この土地の持ち主である原田美枝子さん演じるラネーフスカヤが

パリより戻ってくるところから始まります。

夫を亡くしたラネーフスカヤは恋人とパリで暮らしていたのです。

家では松尾貴史さん演じる兄ガーエフと安藤玉恵さん演じる養女のワーリャ
村井國夫さん演じる執事のフィールスが待っています。

昔は裕福な暮らしをしていた一族でしたが現在は借金を背負う没落一家と

なっていました。

商人や家族がどんなに説明しても散財癖が抜けず、危機状況が分かっていない

ラネーフスカヤ。なのにどこか憎めない。

ほあっとした原田さんの演技がラネーフスカヤの人となりを

提示しているようでした。

それにしてもいまひとつ耳馴染みのないロシアの名前が飛び交うので誰の事を

語っているのか把握がなかなか出来なかった<(_ _)>

2幕(7月)
天野はなさん演じるメイドのドュニャーシャはこの家の管理人であり

世界一運の悪い男と呼ばれる前原滉さん演じるエピホードフに好意をもたれ

ていますが、メイドはパリでラネーフスカヤに仕えていた男

堅山準太さん演じるヤーシャに夢中になってしまいます。
一方 この家の借金をなんとかしようと必死になっているのは

八嶋智人さん演じる商人のロパーヒン。

ロパーヒンはもとは農家の出、貧しい家庭に育ったけれど

努力して商人となり実業家となった男です。

桜の園を別荘地として売って借金を返済するべきだと必死に説明

しているのですがラネーフスカヤには何も通じてません。

真面目に必死に正論を語る八嶋さん。器としてはちっちゃい感じが

らしい役で面白かったです。


3幕(8月22日)

なぜか、桜の園の競売落札の日にパーティが開かれています。

呑気なラネーフスカヤはパリでもう一度恋人と暮らす事を考えていて

相変わらずふあふあしたまま。

成河さん演じる昔、この家の亡くなった息子の家庭教師だった

トロフィーモフに冷たい言葉で現実をみろと指摘され喧嘩。

それぞれがそれぞれの思惑、態度や言い方に気持ちを爆発させてしまう。

そんなところへ競売に行っていた商人のロパーヒンが帰宅。

自分がこの桜の園を買った事を話すのです。

4幕(秋)

ラネーフスカヤはパリへ戻りこの家の住人達は家を出る事となりました。

持ち主となったロパーヒンは自分が留守の間に桜の木を切っておくよう

業者に命じます。
そして出発の日、全員が荷物を持って出た後、

ロパーヒンは鍵をかけ自分も出かけてしまいます。

そこへ、体調を崩していた執事のフィールスが屋敷から現れます。
だれ一人として、彼の存在を思い出さなかったのです。
鍵のかかった敷地で彼は出る事も出来ず一人、横たわります。

眠ってしまったのか・・・亡くなってしまったのか・・・

 

ここで幕が下りるのです。

 

知り合いが観た時の演出は三谷幸喜さんで今回は

イギリス人の演出家ショーン・ホームズさん

三谷さんの時を観ていないのでどうだったのかは実際には

解らないのですが、出てくる人達の浮世離れした

考えや行動に私的にはどこに主観を持っていいのか

ちょっと悩んでしまう所が・・・(-_-;)

なぜ、そこで?と突っ込みたくなるシーンが・・・

ああ、その突っ込みが欲しかったのか? みたいな

とりあえずクスリと笑って観ながら最後はどう終わりに

するんだろう・・・後半はそんな感じで観ていました。

そしてその最後は村井さんの年老いた執事が横たわる。

栄枯盛衰、彼はこの家族に最後まで寄り添って生きてきたのに

誰も彼をみていない。

この家族にとっては執事もこの桜の園の一部だったのだろうか

競売にかけられ、人手に渡った時点で自分達は少しの思い出を

胸に新たなる生活へとそれぞれが旅立つ。

はやく、車がもうきているから! そうせかされ名残惜しむ

わけでもなく去っていく。そこには未練は感じない。

つまりは彼らの興味は切られていく桜の園にはないわけで

桜の園と過ごした思い出同様執事がいた記憶すらも興味のないもの

となってしまったのだろうか・・・

ふとそんな思いが過った最後でした。

 

チェーホフの作品を知らない私にはいささか

難しいものだったような気がしました<(_ _)>