アルジャーノンに花束を 2023年 | 秒速5センチメートルのblog

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秒速5センチメートル それは桜の花びらの舞い落ちる速度 そんな風にひらりひらり優しく揺れながら書いていたいかな。

「アルジャーノンに花束を」

大千秋楽でしたね。お疲れ様でした。

 

 

ちゃんと東京公演観ましたよ。

初演の時の浦井さん観られなかったから楽しみでした。

前回観たのは矢田悠祐君

 

このお話はやはり皆さんおっしゃるように

あまり心地良いストーリーではなく誰も幸せじゃない。

なのになぜこの物語を観たいのか。

 

この物語には人間としての強さ、そして人間としての

弱さが明確に記されていると私は思うのです。それは

決して美しいものではない。SF小説でありながら

ありうるのではなか、むしろ近未来に於いては

あってもおかしくはないといった憶測を出て

想定が出来る内容だからこそ人間としての是非が

浮き彫りにされる、そんな人類への問いかけが

私達の心に響く作品だからなのではないかと思うのです。

 

チャーリー(浦井さん)は知的障害をのある青年

彼はいつもにこにこしていて誰にでも笑顔で

返します。

 

彼はパン屋で働いていますが、仲間達はそんな彼に

暖かく接してくれます。

彼は常に賢くなりたいと言います。それは母に

愛されたい、褒めてもらいたいという異常なほどの

欲求があるから。

幼い頃に起こった出来事が彼と母親との確執を産み

家族がバラバラになってしまったという事実。

チャーリーは自分が賢くなればみんな戻って来てくれると

信じているのです。

 

そんな彼が障害者の専門クラスの講師である

アリス(北翔海莉さん)の推薦をうけ

ストラウス博士(東山義久さん)と

二―マー教授(大山真志さん)の研究チームが

研究している人為的に知的能力を向上させるという

手術の被験者候補となります。

術後チャーリーの知的水準はどんどんとあがり天才に

なります。

 

彼は念願通り賢くなったけれど、彼が賢くなるにつれ

彼は沢山のものを失っていきます。

今まで知的障害者として受け入れていた仲間達も

賢くなった彼の言動について行けず彼を避ける様になります。

1人また1人と知的障害だった彼を支えていた人達が

去っていきます。

たくさんの笑顔と愛で包まれていた彼の日常は一変します。

 

彼自身も仲間だと思っていた人達に本当はバカにされ

利用されていただけだった事など確認などしたくもなかった

彼自身の状況を理解して行きます。

 

周囲との関係に苦悩する彼は一人暮らしを始めるのですが

同じアパートで親しくなった女性を通し彼は自分の中に

自分では理解できないもう一人の自分の気持ちがある事を

知ります。

幼い頃、なんでも不思議に思う彼は自分の妹の身体が

自分とは違う事を口にし親たちを困らせ、彼にとっては

通常の不思議な疑問のひとつであったのかも知れませんが

意味の違う異性への興味としてとらえた母親は彼を罵倒し

彼を変態扱いをしてしまいまいます。

対照的に彼を反故しようとする父親、夫婦の間にも

大きな溝が生まれ結局彼は施設へと預けられることになります。

 

天才になった彼にも自分が女性に対して抱く感情の理解が

上手く出来ない。母親、妹、若い女性、自分を理解して

くれていたアリスへの気持ち、全てが理解できずにいる。

幼い心と天才になった頭脳はちぐはぐなままだ。

 

そんなある日、彼は研究所から一緒に連れてきた

白ネズミのアルジャーノン(長澤風海さん)の様子が

おかしい事に気づきます。

アルジャーノンは彼が受けた手術の最初の被験者。

天才になったアルジャーノンはチャーリーの先輩であり

彼の心の支えだった。

アルジャーノンの衰退はやがて訪れるであろう彼自身の

姿でもある事を彼自身が把握しているのです。

そしてアルジャーノンは静かに息を引き取ります。

 

やがて彼は自分が出した結論通り、彼自身の衰退を

止める事は出来ないと理解し自ら障害者施設への

入所という選択肢を選びました。彼は元の知的障害者の彼に

もどり笑顔をとりもどしていました。

 

端折って物語を簡素化するとこんな内容です。

私が前回拝見した時は脚本演出が荻田浩一さんで

私は荻田さんの演出結構好きで好んで観ていました。

今回の演出は上島幸雪夫さん

前回と全く違う演出でかなり新鮮でした。

というか・・・多分前回の時はほぼ同じ舞台上での

3時間だったと思うのですが、歌はあっても特に

ミュージカルといった感覚は薄く、感動しているのに

長いなあ・・・と不謹慎な事を呟いた気がm(__)m

今回は場面の展開もあり飽きさせない演出であったと

感じました。

 

チャーリーを演じたのは浦井さん。

前回の矢田さんの時には賢くなったチャーリーが

周囲の愚かさを皮肉るイメージが淡々とクールで

チャーリー嫌な奴になっちまったなあ~みたいに

感じていたのですが、浦井さんのチャーリーには

勿論周囲を皮肉る嫌な部分はあるのですが、その状況にも

どこか不安を隠しきれないもう一人のチャーリーの

存在が見え隠れしていて、どこか儚く見えました。

お歌の方は前回のピュアな矢田さんでしたが

やはり安定の浦井さんチャーリーを拝見できて

良かったなあ・・・と。

 

ストラウス博士は東山義久さん。

あまりこういった役で東山さんを観劇することは

ないのですが、パンフのビジュアル(お髭有)より

舞台でのお髭なしの方が私は好みでした(関係ないけど)

ストラウス博士が浪々と歌い上げるシーンがあるのですが

前回戸井さんが歌っていらした時感動したのでそのシーンは

期待大で拝見。戸井さんの歌の様な感動までは

行かなかったのですが(私の期待が大きすぎただけ<(_ _)>)

元々東山さんの声は大好きなので高音上がり切らなくても

重々幸せでございました🥰

 

そしてそしてやはり大好きなかざみん事長澤風海さんです。

私は長澤さんのダンスが大好きで💓

人間以外の役が結構多い長澤さんですが( ´艸`)

やはり目が追ってしまいます。

長澤さんは白ねずみのアルジャーノンの役なのですが

なんというか、もうねえ・・・

愛らしく可愛く・・

台詞はないのにダンスでの表現で全てを語ってくれる。

きっとね・・・

それは演技というものだけではなく長澤さんならではの

世界観なんだと思うのです。

長澤さんのメッセージの中に

チャーリーを優しく包む光のようなアルジャーノンで

いられたら・・・

と、ありました。

まさに、長澤さんのアルジャーノンはいつでもチャーリーに

寄り添っていました。

チャーリーにとってもそしてアルジャーノンにとっても

ふたりにしか分からない過酷で切ない未来がそこに

あったからなのかもしれません。

 

 

こちらは前回の時のビジュアル

こちらのカザミンも捨てがたい🥰

 

 

チャーリーはピークを越えた自分の知能は衰退するのみで

ありそれを止める事が出来ない事実に覚悟を決めます。

チャーリーは自分自身の判断能力があるうちに

自分の進退を決めます。自ら知的障害者の施設へと

自分の居場所を決めたのです。

 

そして最後にチャーリーはこう言葉を残します。

 

ついしん

どーかついでがあったらうらにわのアルジャーノンの

おはかの花束をそなえてやって下さい。

 

亡くなったアルジャーノンがそんなチャーリ―を

優しく見つめているのです。

 

号泣でしたえーん

 

また、小説引っ張り出して読んでみよう・・・