病院に行くとすぐに色々検査をして
ひとまず病室に行き、ベッドに横になりました。
その日は土曜日でしたのでたくさんお見舞いの方が病院内にいるということで
先生は気を使って、一時だけなので個室に入れてくださいました。
ゆうなは
『お部屋!お部屋~!』
と、周りに気を使わずにはしゃげるのが嬉しそうでした。
『ねぇ、パパ次はいつ帰ってくる?』
と聞きました。
私が
『すぐに帰れると思うよ』
と言うと
ゆうなは無邪気にパパの手を握り
『やった~!!』
と喜んでいました。
それを見てユウも私も微笑みました。
しばらくすると、私の家族やユウのお姉さんがやってきて
それぞれお別れをしているようでした。
もうすでに酸素マスクをしているだけで、特別な処置はしていませんでした。
そして一通りお話が終わると母がみんなを病室から出し
私とユウを二人にしてくれました。
二人になった瞬間、私は涙が止まらなくなり
何もユウに言えなくなりました。
そんな私にユウは私を手招きで呼び
私が床にひざをつく形でより近くに行きました。
ユウは微笑み、私の流れる涙を手で拭いてくれました。
(手話)
『なんか…私、何したら……』
と言うとユウが口をパクパクさせて、酸素マスクを取ってほしいと指を差すので
私はマスクを外しユウの口に耳を近付けました。
するとユウの口から
『あ、いし、て、るよ』
と言われ、私はもう止まらない涙を押さえることもできないまま
ユウにしがみつきました。
その言葉は初めて言われた言葉でした。
ユウは私のお腹を触り
(手話)
『会いたかったなぁ…』
と言いました。
私は
(手話)
『もうすぐだよ!もう会えるよ!もうすぐなんだから!』
ユウは笑っているだけでした。
そしてユウは私の頬に手を当て
それを離すと
(手話)
『ごめんな。俺、幸せだったよ。ユイに出会えてよかった』
私はすぐにユウの手を握り
『嫌だ!嫌だ!行かないで!!』
と手話をする余裕もなく叫びました。
ユウも
『わら、っ、て』
と手話なく言いました。
私はとても笑える状態ではありませんでしたが
無理に笑いました。
ユウは
(手話)
『君は笑っているのが一番いい』
と、出会った頃に言われたせりふを笑いながら言いました。
そして
(手話)
『子供たちのこと頼むよ』
と言うと
静かに目を閉じたり、また少し開いたりを4、5回繰り返し
口元が少し笑うようにすると
閉じたまぶたは二度と開くことはありませんでした。
私は
『ユウ?ユウ?!ユウ!!ユウ!!!』
とずっと呼び続けていました。
その声で母が病室に入ってきて、すぐに出ていくと
先生を呼んできて
先生はユウの閉じたまぶたを開いて光を当てたり
脈を見たりして
小さく呼吸をすると
時計を見て
『ご苦労様でございました』
と、言いました。
ユウは本当に眠るように逝ってしまい
ちっとも苦しまず、今にも起き上がってきそうでした。
ユウは少し笑ったような表情で、死んでしまったとは思えないくらい綺麗な顔でした。
ゆうなが病室に入ってくるとユウの顔を見て
『パパ寝ちゃったね~。せっかく遊ぼうと思ったのにぃ~。ママ?また泣いてるの~?パパ寝ちゃってつまらないもんねぇ~』
と言いました。
そしてゆうなは
『パパがね、ママは泣き虫だからゆうながいい子いい子してあげてって言ってたんだ~』
と、私の頭を撫でてくれました。
私はさらに涙が止まらなくなり
崩れ落ちてしまいました。
それを見て母は
『ゆうなちゃん、売店でお菓子買いに行こう。好きなの買ってあげるよ~』
とゆうなを連れ出そうとし、病室を出るとき振り返り軽く頷きました。
ユウのお姉さんが入ってきて
弟の姿を見ると私と同じく泣き崩れました。
しばらく二人でボーッとしていたんですが
そのうちお姉さんが
『ユイちゃん、ありがとうね。ユウスケも本当に幸せだったと思う。大変だったでしょう?ユイちゃんもお疲れさまね。
ありがとうございました。』
と言われ、私は首を横に振ることしかできませんでした。
目の前にいるユウがもう二度と起きてこないということが全く信じられなくて
周りの色々な言葉をすんなり受け入れられませんでした。
私の中では
もう次に何をしたらいいのか分かりませんでした。
お腹の中で赤ちゃんがぐ~んと動くのに気付き
なんとなく私を励ましてくれているような気がしました。
もう一度ユウの顔を見ると
とても幸福な顔をしていて
何も悔いがないように見えました。
ユウとは出会って10年、
結婚してからは5年と
人生の中ではほんの一瞬の出来事のような短い時間でしたが
この世の誰よりも幸せな一瞬だったと胸を張って言えます。
2013年7月21日午後2時34分
私の大好きな旦那様は私の大好きな笑顔を残して28歳の若さで旅立っていきました。
By ゆい
