先日のLIFE STYLEに掲載されていた記事です。(2012年8月27日刊)
余少群 但行好事,莫问前程
芸能界において余少群は「いい子」であり「分かっている人」だ。
友達の前ではとぼけた様子で「萌え」を売り、サービス精神に徹することができる。
家ではお茶を入れ、読書、料理、掃除などをする完璧な「おうち大好き男」。
また、パックなどしなくても誰よりも色白だと天生の美しさをぬけぬけと吹聴し、伝統劇の学生時代は他の人と釣り合うよう背が高くならないことを祈り、カルシウムがある魚を食べなかった愚かさも平気でばらしていまう。
だが「上昇期の俳優」として「殻を破る」・「チャンスをつかむ」・「計画を立てる」ということは、あまり意味がないことを余少群は冷静に理解している。
彼が信じるのは時間による熟練と今現在の努力だけだ。いつも自分に言い聞かせるのは「但行好事,莫問前程」(先々の結果を気にするより目の前のことを一生懸命やる)。特に30代に突入してから( ←数え年です)、新たな価値観の位置づけを探っている。別に固定化するわけではなくもっと自分らしく生きるために。
《精品》の表紙の撮影現場でのインタビューは「普段着のおしゃべり」だった。
《梅蘭芳》の時の世間の驚き、《倩女幽魂》の時の世間の不満。それらがなくなった今、紙の枷を脱ぎ捨てて身軽になった余少群は、さらに挑戦的な仕事で経験を蓄積するステージに突入した。
垢ぬけない農村の青年(《愛情不NG》)、2重人格のITエリート(《e恋迷情》)、武術に優れた丘機処の弟子(《止殺》)、唐の太宗・李世民(《隋唐の英雄》)。さらにこれから林兆華監督と共に舞台劇へ…。
余少群は中国人が重視する「外圆内方」(表面は穏やかに人と協調し内面にはしっかりした自分を持つ)という言葉を賢く実践する。話し上手で正直、そして自分が何を必要としているかを知っている。
記者:《愛情不NG》 《e恋迷情》 《止殺》 《隋唐英雄》…今年のあなたは模範労働者のようだけど、いつも「ひ弱そうな書生」ではいたくないということ?
余少群:ずっと似たような役ではつまらないでしょう。撮影とは時に非常に味気ないもの。同じようなことを繰り返す必要ある?新鮮な感じがほしいと思います。でもいろいろな役をやると「余少群は殻を破るのか?」とか何とか言われる。ちょっと無意味だね、それは天の時・地の利・人の和が一緒になって生み出す結果だから。オファーが来るかも含め、観客の好み、市場の動向、そういうのは自分の思い通りにできない。コントロールできるのは自分だけ。自分がやろうと思う通りにしっかりできればそれでいい。
記者:今は多くの現代劇をやりはじめたけど、どう?あなたのミニブログではよく芝居を楽しんでいる様子を見せびらかしてるね。
余少群:(笑)朝っぱなからカツラをつけなくていいし、メイクもそんなにしなくていい…。撮影ってもともと大変だから…これ以上苦しい思いをしたら、もうつまらなくなってしまう。
記者:あなた女の子たちの歓心を買おうとしてない?劉亦菲は以前あなたのこと、ブリッコして萌えを売ってはいたぶられてるって。
余少群:たぶん他の男性のようにクールなタイプじゃないんだろう。自分の性格を分析すると、親しくない時はちょっと堅苦しいかもしれないが、仲良くなった人のことはすごく楽しませたい。おどけ役も問題なし。
記者:ミニブログからもあなたが非常に娯楽精神があるとわかる。女の子に扮装し、パロディをやり、、飲む・食べる・遊ぶを満喫して。大勢の80后に負けてないね。
余少群:母の言葉を借りると、きっと僕と一緒なる女の子はとても幸せ!家の中も外も上手くやれるって。「上得庁堂、入得厨房」(客間では優雅に、キッチンでは有能に)、この言葉は普通はいい奥さんを形容するけど、僕はそういう人。仕事には命をかけているが家庭もちゃんとする。家事は喜んでするし、家族の世話もする。
記者:かの有名な「おとめ座」じゃないよね?
余少群:(大笑)天秤座だよ!撮影が終わって深夜北京に帰ったことが何度かあったが、掃除する人も頼むめないので荷物をおいてすぐに家中を片づけた。そうじゃないと眠れないので。
記者:汚く散らかっているのが苦手っていう強迫症?
余少群:そうだね。他の人は次の日にやろうと考えるだろうけど僕は絶対ダメ!あと、外出恐怖症もある。家を出たらすぐに門を閉めたっけ?電気は消した?水は止めた?鍵は?って。
記者:汗!「おうち大好き男(=宅男)」の定義をあてはめてもいい?
余少群:ぴったり。この前、住宅雑誌の撮影をしたんだけど、編集者が来て「わぁ、あなたの家はどこよりも苦労せず、すぐに撮影できる家ですね」と言われた。普通はタレントの家に行ってもあれこれ飾り付けを施してから撮影するけど、僕は「宅男」だから、じつに省力化できる(大笑)。
記者:「宅男」としては料理も上手でしょ?いつも友達を呼んでちょっと飲んだり?
余少群:そう。北京では湖北料理が食べられないから、煮込み料理を作って経紀人にあげたりする。みんな超美味しいって言ってるよ。
記者:不思議に思うのだけど、「宅男」としてはどんなふうに仕事と日常を調整するわけ?以前《止殺》と《隋唐英雄》を掛け持ちして、最後は過労で倒れたでしょう。俳優の仕事のハードさはなかなか管理できないから、比較的ゆったりした仕事の状態をどうやって保証するのでしょう。
余少群:あの時はちょうど二つの撮影がぶつかってしまったから状態は非常に良くなかった。実はあのような密度の高い仕事はあまりできない。一つのことは一つの仕事と見ているからとても疲れる。本来は、役を体験して楽しめることが望み。そういう心理状態であれば良い仕事ができる。もしこの仕事でいくら稼げるとか、人気がどうとか有名になれるとかを考えたらおジャンだよ、どんなこともうまくやれない。あの頃はプレッシャーが大きかったけれど、たとえ6時間睡眠のところを一時間早く起きてでも、毎日お茶を入れてたしなんでから仕事した。自分の生活を捨てることはできないから。
記者:あなたは今上昇期にあって、きっとオファーもたくさんあるでしょう。どう調節してる?思いどおりにならないことがいろいろあるんじゃない?
余少群:まあね。しかしこの世に絶対的な自由というものはない。相対的な、選択の自由は持てるでしょ、夏は暑すぎて撮影に行きたくないから仕事を受けない、とか。
記者:緊迫感はない?比較的良い段階にある時に仕事をたくさんしておこうといったような。
余少群:この数年の経験から言って、多くのことは自分の計画通りではなかった。僕が計画を立てられるのは自分自身のことだけ。体、心を良い状態で保つ。それ以外の「上昇期」といった類いはちょっと邪魔な話だよ。僕自身が良い例で、《梅蘭芳》の時は毎日家と劇団を往復するだけの伝統劇の役者だった。映画を撮影する機会に恵まれたが「わわ!チェン・カイコーの映画、人気がでるかな、立派な賞をとれるかな」とは考えず、撮影が終わったらまた伝統劇の舞台に立つつもりでいた。実はその時の経験を手本として今の状態に来られたんだ。多くの人はあなたは上昇期だと言うけど、どこが上昇?って思う。僕は「但行好事、莫問前程」の言葉がとても好き。一つのことをするのに心を砕き知恵を絞る、あとはあまり結果を気にかけるなって。
記者:無理に求めないということ?
余少群:そうだよ。事務所の人たちを含めて皆さんが、この段階の男優の中でのあなたはすばらしいって言うけど別にそうは思わない、仕事でしょ。
記者:でも芸能界の雰囲気ってあるじゃない、影響されない?
余少群:だから業界の集まりに参加することはあまりなくて、せいぜい片手で数えられるぐらい。この前ファッション界の集まりに出席しなくてはいけなかったんだけど、すごい抵抗した。行って何するの?僕はファッション界の人間じゃないし、大スターでもないよ、家でDVDを見たり何か食べるもの作る方がいい。
記者:この仕事に就いてから自分は成長したと思ってる?
余少群:成長は必然的だと思う。
(続く)
にほんブログ村