あるところに…
いっぴきのねこがいました。
ねこはあるものがだいすきでした。
それは、にんげんのブラシです。
ねこは、じぶんだけのブラシをもっていました。
ブラシをどうつかうかというと、かんたんです。
まずブラシのうえにあたまをもってきて…
ねこはだいたいいつも
おくちまわりからいっときます。
ほっぺとしょっかくのところもいっときます。
ブラシにかゆいところをこすりつけるだけで
ねこにとっては、てんにものぼるきもちになります。
みぎがおわれば
ひだりをいっときます。
こちらも、てんにものぼるきもちになります。
てんにものぼる…がつづきます。
ねこはブラシのじかんをたのしみます。
ブラシよ、ごくろうであった
たいようよ、そつがないな
にんげんよ、そなたもたいぎであった
ねこはこころのなかでそういい
ねむりはじめます。
そしてだいすきなブラシのゆめを
いつまでもみつづけるのです。
「ねこのだいすきなじかん(未刊)」より