食は楽しみであると同時に儀式でもある。で、フランス人は、「食事は人生の質を決める文化的行為」と考えていると。食事は単なる栄養摂取ではなくて、「誰とどこでどんな雰囲気で食べるか」っていうのを非常に重視する。
吉野敏明
引用元:なぜフランス人には肥満はほとんどいないのにアメリカ人はあんなに太っているのか?
――アメリカの食事の哲学「便利さ」と「ながら食い」VS フランスの哲学「食は美学」――
あなたの食事はどっち?
なぜ、同じ先進国でも、フランスには肥満が少なく、アメリカには太った人が多いのか――それは単に「何を食べるか」ではなく、「どう食べるか」「どんな心構えで食事をとるか」の違いにあります。アメリカは“便利さ”と“ながら食い”による食事が日常化。一方フランスでは、食事は美学であり儀式。日々の習慣や文化に根づいた食の在り方が、両国の肥満率の差を生んでいるのです。今回の動画は、私たちの食事の在り方を問い直すきっかけとなるでしょう。
1. 肥満率の国際比較と設定された基準
よしりんはまず、肥満の定義として成人のBMI(体格指数)で30以上を指標としたうえで、国ごとの肥満率の違いに注目します。アメリカではBMI30以上の割合が非常に高く、約41%と報告されるほど。対照的に、フランスや他の国では肥満率ははるかに低くなっており、日本では更に肥満率が低く、むしろ痩せの人が多いと語ります。
このような統計の差は、単に民族的な体質や遺伝の違いによるものではなく、生活習慣・食事習慣・文化の差こそが大きな要因だったのです。
「民族が直接太りやすいとか太りにくいとかいうことはない」
つまり、どの国の人間か、というより、「どのような食事・生活を選ぶか」が重要なのです。
2. アメリカの「便利さ」と「ながら食い」がもたらす肥満
よしりんによれば、アメリカの食生活の根底には「便利さの追求」があり、それが肥満の温床になっているといいます。ファストフード、揚げ物、ポテトチップス、ハンバーガーなどは脂質と糖質が非常に高く、満腹感に比べてカロリー過多。さらに、加工食品、冷凍食品、インスタント食品なども多く摂られ、油やトランス脂肪、糖が過剰になりがちです。
また、コーラやエナジードリンクのような甘く高カロリーな飲料も頻繁に飲まれ、砂糖の摂りすぎが肥満を促進してしまう。このような食事に加えて、食事を「食べる時間」ではなく、「移動中」「仕事中」「ながら作業中」に済ませる“ながら食い”が日常化。
さらに、アメリカでは車社会であり、徒歩や公共交通での移動が少ないため、日常的な身体活動が低くなり運動不足も深刻。こうした「高カロリー摂取 × 運動不足 × ながら食い」のカルチャーが、肥満率の高さを生み出しているのです。
「アメリカはもう広すぎるから、隣の家に行くだけでも車で行くぐらい。歩かない」
つまり、便利さの代償として、健康や体型が犠牲になっているというわけです。
3. フランスの「食は美学」、儀式としての食事
一方でフランス人は、食事を単なる栄養摂取や空腹を満たす行為ではなく、人生の質を左右する文化的行為、儀式として捉えています。これこそ、よく言われるフレンチパラドックスです。
彼らは一人で慌ただしく食べるのではなく、家族やパートナーと時間をかけて座って食べる習慣を大切にする。さらに、スマホを見ながら、仕事しながら、歩きながら――といった“ながら食い”は非常に少ないとのこと。
また、食事内容にも特徴があります。量より質を重視し、少量でも上質なものを味わうことで、満足感を得る文化。チーズ、ワイン、オリーブオイル、ナッツといった良質な脂質、発酵食品やサラダなど、体と腸内環境を整える食品を好み、かつ心から「食を楽しむ」ことを重んじます。
こうしたライフスタイルにより、たとえ脂質の多い料理を食べたとしても、過剰なカロリー摂取になりにくく、また日々の徒歩や市場への買い物、公共交通の利用で自然と身体活動も確保され、結果として肥満体型が少なくなる――それがフランス流の「食の哲学」です。
「食事は楽しみであると同時に儀式である」
この言葉に、フランスの食文化の核心があります。
4. “食の哲学”の違いを現代日本にも投げかける
では、私たち日本人はどちらの食文化に近いか。よしりんは、日本もかつてはフランスのように「質を重んじ、家で作り、座って食べる」という習慣があったと指摘します。しかし、コンビニ、冷凍食品、自販機、加工食品などの普及により、アメリカ型の“便利さ重視 × ながら食い”が徐々に広まりつつある――それが問題だと述べます。
特に現代は忙しさに追われ、立ち食いや移動中、仕事中に食事を済ませる人も多く、気付かぬうちに摂取カロリーや糖・脂質が増え、運動量が減る。これでは、日本もアメリカのように肥満や生活習慣病が増えてしまいます。
だからこそ、私たちもフランス流の「食は美学」の考えを見直すべきだ――よしりんはそう呼びかけるわけです。
「アメリカ人を見習うな。食はただの栄養じゃない」
この言葉は、今の私たちにとって重要な問いかけです。
5. 日常に取り入れたい、よしりん流「質のある食と生活」
よしりんは自身の生活についても語ります。できるだけ自宅で作った食事を取り、スーパーマーケットで材料を買って帰る習慣を守る。外出したときは徒歩や公共交通を使い、意識的に歩くことで自然に運動量を確保できます。
また、食事中は「味わう」ことを大切にし、スマホやテレビを見ながら食べるような“ながら食い”は避ける。食事を楽しみ、ゆっくり味わうことで、少量でも満足感が得られるというのが彼の信条です。
このように、「食事=生活の一部」として丁寧に扱うことで、心身の健康、そして体型や生活習慣を守ることができるのです。
「少量でも上質な食材を味わう、それが美しい生き方」
この価値観があれば、肥満だけでなく、健康全体を守る“食の哲学”になるのです。
まとめ
フランスとアメリカの肥満率に大きな差があるのは、単に食材や食べるものの違いだけでなく、「食との向き合い方」「食事をどう捉えるか」という文化やライフスタイルの違いにあります。ファストフードやインスタント食品、ながら食い、車中心の生活といったアメリカ型の“便利さ”に慣れてしまえば、知らず知らずのうちに過剰なカロリーを摂取し、運動量は減り、肥満や生活習慣病のリスクは高まります。
一方、フランスのように「食は美学」「食は儀式」と捉え、少量でも上質なものを味わい、家で丁寧に作り、座って食べる。さらに徒歩や公共交通を活かして日常の中に自然な運動を取り入れる。そんな“質のある食と生活”こそ、現代人にとって大切な選択肢だったのです。