難しい病気を直すのが上医じゃなくて、病気そのものにさせない、病気の初期の段階で患者さんも分からないうちに見つけてしまって直すってのが、上医なわけです。
吉野敏明
引用元:耳鳴り、難聴、めまいの症状がある人は要注意?メニエール氏病について〜前編〜
メニエール病は「めまいの病気」というイメージが強いですが、その本質はもっと深く、150年以上前から医師たちを悩ませ続けてきた複雑な疾患です。本記事では、よしりんが、メニエール病の定義と歴史的発見に焦点を当て、現代までどのように理解が深まってきたかを丁寧に解説します。めまいに悩む方はもちろん、身体の仕組みに興味がある方にも役立つ構成です。
1.メニエール病とは何か──よしりんが語る“本当の定義”
まず、よしりんは冒頭でこう語ります。
「メニエール病は、“内耳が水ぶくれになる病気”と理解してください」
この“水ぶくれ”こそが、医学的には 内リンパ水腫(すいしゅ) と呼ばれる状態です。内耳には、音を感じる蝸牛(かぎゅう)と、平衡感覚を担う三半規管や前庭があります。これらはリンパ液で満たされており、通常は一定のバランスを保って機能しています。しかし、そのリンパ液が増えすぎると圧力が上昇し、内耳内部が膨らみ、本来の働きが妨げられるのです。
よしりんはここで、分かりやすい例えを用います。
「内耳ってね、すっごく繊細な袋なんです。そこに余計な水が溜まったら、そりゃ正常に動けなくなるんです」
この内リンパ水腫が起こると、以下の代表的症状が発生します。
・激しい回転性めまい
・繰り返す発作
・耳鳴り
・難聴
・耳が詰まる感じ(耳閉感)
特に特徴的なのは「繰り返す発作」です。
一度のめまいでは診断できず、反復することがメニエール病の大きなポイントになります。
さらに重要なのは、メニエール病は 自律神経やストレスにも影響を受けやすい という点です。睡眠不足・過労・心の緊張が重なると発作が起こりやすくなることから、「現代病」という側面もあります。
2.歴史に刻まれたメニエール病──“150年前の発見”
この疾患が初めて医学の前に現れたのは1861年。フランスの医師 プロスパー・メニエール(Prosper Ménière) が、ある重要な発見をしました。
よしりんは歴史を語る場面で、こう言います。
「彼はね、みんなが“脳のせい”と思っていためまいを、“内耳のせいだ”と喝破したんです。時代を100年先に進めた人ですよ」
当時、めまいの原因は脳出血や精神疾患と考えられており、耳の病気とは結びつけられていませんでした。その中でメニエールは、
・めまい
・耳鳴り
・難聴
が同時に見られる患者を調べ、「これは内耳で起きている障害だ」と世界で初めて明確に記録しました。
この報告は医学界を揺るがし、後に彼の名を取ってメニエール病と呼ばれるようになりました。20世紀になると、内耳の研究が進み、1950年代には、「内リンパ水腫がメニエール病の主要な原因である」という説が確立されます。
よしりんはここで補足します。
「つまりね、150年かけて“めまいは耳から来る”という理解が世界中に広まったわけです」
現代では、ストレス・循環障害・免疫異常・自律神経の乱れなど、多面的な要因が関係することが分かり、研究はさらに進化しています。ですが、その根本には、メニエールが示した“めまいの源は内耳にある”という歴史的発見が今なお息づいているのです。
3.医科と歯科の分断──病気治療の歴史的背景
よしりん曰く、
「昔は内科も外科も、歯科も漢方も分かれていませんでした。治療は全身を見て行うのが普通だったんです」
しかし近代に入り、特にアメリカでは医師免許制度や大学の派閥争いにより、医科と歯科が分断されました。結果として、以下のような問題が生まれました。
* 医師は内科や外科に特化
* 歯科医師は口腔の治療に特化
* 全身との関連や航空粘膜の治療は個別に行われ、統合的に診る体制が崩れた
よしりんは歴史的背景をこう説明します。
「明治時代に日本は欧米の制度を模倣しましたが、医科と歯科の分断が残ってしまった。これがメニエール病の不幸の始まりでもあるんです」
4. 東洋医学から見たメニエール病──気・血・水の乱れ
よしりんは東洋医学的視点を次のように説明します。
「メニエール病は耳だけの問題ではありません。全身の水分や気の流れの乱れが頭部に影響して出てくる症状です」
(1)水の停滞と水毒
東洋医学では体内の水の巡りが滞ると“水毒”が生じ、内耳の内リンパ水腫と類似した症状が出ます。
「水が滞るとめまいが起こります。身体は余計な水を頭に置きたくないんです」
(2)気の滞りとストレス
感情やストレスが気の巡りを止めると、“気逆(きぎゃく)”が起き、めまいや耳鳴りが増します。
「ストレスを抱えると気が頭にぶつかる。耳が最初に悲鳴を上げるんです」
(3)肝と腎の働き
肝:気の流れを整え、自律神経を調節
腎:水分代謝、生命エネルギーの根源
「肝が弱ると気が詰まり、水が滞る。腎は水道管のようなもの。ここが弱ると水が溜まります」
(4)気・血・水のバランス
* ストレス → 気の滞り
* 加齢・疲労 → 腎の弱り
* 肝の弱り → 水の停滞
「西洋医学は耳だけを見ます。東洋医学は全身の流れを見ます。両方合わせると病気の本質に近づけます」
まとめ
よしりんは最後にこう言いました。
「メニエール病の理解は歴史と東洋医学を知ることから始まります。全身を見て、病気を未然に防ぐ。これが本来の医療の姿です」
メニエール病は単なる内耳の病気ではなく、全身のバランスの乱れが耳に現れた症状です。医科と歯科の分断という歴史的背景もあり、西洋医学だけでは症状を完全に治すのが難しいことがあります。東洋医学は気・血・水の視点から全身の流れを整えることで症状のコントロールや予防が可能です。病気を部分ではなく全体で理解することが不可欠だったのです。