大病をして、三回くらい入院して、出て来た。
家に帰った時は、スマホもなくて、SIMカードだけが家にポツンと残っていたことがあった。
入院中に、ギャンブルや将棋の達人、と患者さんの間で噂だった男性の患者さんがいた。
私は小説とか、公募に応募して、落ちていると相談したら、
お前が面白いと思っても、見ている人が面白いと思わないとダメなんだよ
と、優しく諭して教えてくれた。
時々、そのアドバイスを思い出す。
来年こそは、きっと良い年になる……と毎年思っている。
嶽本野ばら先生の小説が好きだった。
です、ます調で書かれた文章が新鮮で鮮やかに見えて、ミシンとか世界の終わりという名の雑貨店を読んで、ため息をついていた。
です、ますで書く小説家は、谷崎潤一郎とかそのへんなのだろうか。
谷崎は、『細雪』しか読んだことがない。
映画の世界の終わりという名の雑貨店も観た。
ヴィヴィアン・ウエストウッドの洋服ってオシャレだな、とかボーっと思っていた。
そのずっと後に、少し親しくなった女性に、ヴィヴィアン・ウエストウッドの事を訊いたら、
何それ? 知らない。
と言われてしまった。
そんな事を思い出した。