ゆうくの決意
これまで、一応志望校は決まっていたのだけれど。ここにきて、考え直す必要がでてきた。
というのも…
もともと、就職や大学のことを考えて、それにつながる中学選びをしようと考えていた。そして、興味深い学科を見つけたので、そこに向けて、ゆうくもやる気になっていた。
でも、今ひとつ具体的にイメージができない。やりたい仕事も浮かんでこない。まだ、学んでいないのだから、当たり前といえば当たり前だけど。
「ママは大学でどんな勉強をしたの?」
「大学で使った教科書、見てみる?」
「見せて!」
「これが工学部の教科書。これは情報学。これは経済学、統計学、確率論、経営学、金融論、商学…。それから、これはママのバイブル。」
「バイブル?」
「聖書のことなんだけど。ママが研究するときに指針となった本っていう意味。」
「これ、面白いの?変な式がたくさん並んでるけど。」
「うん。ママは楽しいと思えたけど。興味を持てなかったら、つまらないかも。」
「…。」
ヤバっ。余計なことを言ってしまった。これで、大学に行きたくなくなってしまっては逆効果だ。
「あ、医学部の教科書もあるよ。」
「どうして持ってるの?」
「ゆうくが生まれる前、ママが病気になったときにね、原因が分からなくていろいろ検査されたんだけど。自分でも調べてみたくて、大きな書店で見つけた本なんだ。」
「ふーん。」
「入院中に読んでいたら、たまたま回診があって、研修医らしき先生が『この本を教科書で使いました』って年配の先生に言っていたの。」
「それで教科書って分かったんだ。」
「うん。」
ゆうくに手渡したのはいいが…
最近、理科の勉強を嫌がっているし、捗っていない。こんなときに、専門用語だらけの教科書を見せてしまうとは、またもや、やぶ蛇か。
本をめくるゆうくをびくびくしながら見つめ、次に発せられる言葉を待っていた。
「ママ…。」
「何?どう?」
「医学部に行ったら、一日中、この本を読んでいていいの?」
「もちろん。」
「算国理社はやらなくていいの?」
「うん。大学1年生のときだけは一般教養で少しやるけど、2年からは医学ばかりやるんだよ。」
「ママ、ぼく…、
医学部に行きたい。絶対、医学部にする!」
「えー。ほんとうに?専門用語、たくさん覚えられる?」
「うん。今の勉強と同時にはできないけど、算国理社がないならできる。」
「もちろんママは応援するよ。前にも言ったけど、ママは医学部に行ってほしかったから。」
「ぼく、医学部にしか行かない!」
これ!この言葉。
ゆうくの口から聞きたかった言葉。
ママに言われて目指すのではなく、自身で考えて決めて欲しかった。
「ママが教科書を持っていてよかった。」
「ママの病気が原因不明でよかった。」
こうして、志望校を再検討するため、医学部に強い学校を調べなおすことになった。
医学部に強い学校は?
すぐに思いつくのは、海城、駒東、暁星。共学だと、渋幕、東邦かな?
ランキングをまとめた記事やサイトがいくつもあるけど、だいたい合格実績って延べ人数だから、一人の優秀な生徒が、私立10大学ほど受ければ、それだけで結果がよく見えてしまう。
実際に狙うのは私立中堅だとしても、医学部に強い学校選びには、国公立大現役合格率を使うのがよいかもしれない。
たまたま見つけた、週刊ダイヤモンド「医学部&医者」。
ちょっと数値を拾ってみよう。
国公立大現役合格率(国公立大現役合格者数、私立大+防衛大現役合格者数)
海城 11.9%(36、70)
開成 6.9%(27、47)
聖光学院 9.2%(21、57)
渋幕 6.0%(21、47)
駒東 7.9%(18、28)
麻布 4.4%(13、5)
筑駒 6.9%(11、12)
広尾 4.1%(11、30)
早稲田 3.2%(10、1)
芝 3.2%(9、22)
東邦 2.9%(9、50)
暁星 5.1%(8、52)
国公立大現役合格率でみれば、海城、聖光、駒東が上位となる。
それから、気になる私立大合格者数。海城、聖光に次いで、暁星、東邦、渋幕が多い。
「聖光は学力的にも距離的にも厳しいから、海城か駒東かな?共学なら渋幕、東邦?」
「えーっ。志望校変えるの?」
「だって、医学部に行きたいんでしょ?」
「まあそうだけど。」
「医学部を狙うなら、情報が多い学校の方がいいんじゃない?対策をしてくれるところもあるし。仲間もいるし。」
「ぼくは、海城と聞いただけでめまいがする…。」
「え?」
「生理的に受け付けない…。」
「あ、あの社会の問題?」
「うん。拒否反応が出る…。」
「まあ確かに。数百字の記述が数問というのはちょっときついけど、練習すればできるよ。」
「…。」
「ダメ?」
「…。」
こんな感じで、志望校が決まらないまま、サピックスオープンを迎えることに。
サピックスオープンの結果
いつもと同じ時間に終了かと思いきや、14時30分まで。お弁当持参で、午前にB問題4教科、午後にA問題4教科。
「午後もあるの?」
「うん。でも、この前早稲アカで午前と午後に受けたとき、慣れたから大丈夫って言ってたよ。」
「そうだっけ?」
「組分けと違って激ムズだから、覚悟しないとね。」
「なんか、憂鬱だなあ。」
今回は、いつもと違う。緊張して、テンション低めで受けたサピックスオープン。
2024.4.14
SAPIX 第1回志望校判定サピックスオープン
4科目 480位/7260名 偏差値 64.7
3科目 659位/7280名 偏差値 63.3
2科目 594位/7283名 偏差値 63.9
「あー。国語Bが大変なことに。」
「ひどいな…。」
「他は…。ミスも多いけどまずまずかな?」
「社会Aがよかった。一問間違いだ。」
「緯度の問題、ママ当ててるじゃん。前日に、北緯35度が通る県、地図を見せて教えたのに。」
「この問題を見たとき、ヤバいと思ったんだよね。ママに言われたのに、ちゃんと覚えなかったから。」
「まあ仕方ない。今覚えればいいよ(と言っても覚えないよね…)。
上位は、社会A、国語A、算数Bだね。算数Bで頑張れたのが良かったね。理科は…もうちょっと学習時間を増やそう。国語の記述もね。」
「うん。」
まだ志望校は決まっていないけれど、医学部に強そうな学校のシミュレーション結果。