『ある男の話し。』


その男はいつも優しく

人に対して精一杯な男だった。




その男の精一杯には理由があった。


男は自分に起こった出来事を
ゆっくり優しく話しだす。



「とても仲のいい友達がいたんだよね、

ある日、些細なことで口論になった。


何で喧嘩になったか覚えてないくらい
どうでもいいことだったと思う。


それから1週間が過ぎて、
もうそろそろ謝ろうと連絡を取ったの。

飲みにでも誘おうと思ってね。

謝ろうと思って。


でも電話に出たのはやつの家族だった。


そいつ、死んでしまってたんだよ。


突然 亡くなってしまったんだと家族の人から
聞かされた。



待ってくれって思ったよ。


俺、まだ謝ってないって
お前にありがとうも言えてないって。


何も伝えられなかったんだよ。



ごめんなさいも
ありがとうも。」



これが男が人に優しい理由だった。



明日は来ないかも知れないから

その日できる全部で接するのだと。


あたしの持ってる感覚とシンクロするなぁって、



気がつくと
ポロポロ泣いてたわ。



一期一会の意味を噛み締めた。



明日は逢えないかも知れないじゃない?

だから今日出来る全てがいい。



〜ごめんなさい、ありがとう、愛してます。


今日も出来る全てを
伝えようと思うのよ、あたし。


もし誰かに謝れずにいるなら
すぐに「ごめんなさい」を言おう。


もし誰かに感謝の気持ちを伝えられていないなら
「ありがとう」を何万回も言おう。

そしてたくさん
「愛してる」って言おう。


明日は来ないかも知れないからね。