California Institute of Technology Beckman Lawn ー 日蝕観察

 

本日は90年以上ぶりにアメリカ本土を皆既日食が横断する日。ここロサンゼルスでは最大62%まで太陽が月の影になるだけなのだが、それでもロサンゼルス中が日蝕に沸き立った。

 

メディアが日蝕を本格的ニュースにし出したのは前日の日曜日。私を含め、大多数のロサンゼルス住民は、「えっ、日蝕って明日なの?」とまさにラストミニットになって慌てたと思う。Solar Eclipseを検索すると、「直接太陽を見てはいけない。網膜が傷つきます。」という物々しい警告。空を簡単に仰ぎ見ればいいというものではなく、何らかの装置がないと見ることができないと気付く。サングラス、フロッピーディスク(!)、どんなに色が濃くても普通のプラスティックもダメ。昔のように「下敷きを二枚重ねてみる」なども絶対にダメだとか。NASAが公認した特別なシートを使った眼鏡以外では、太陽を見てはいけないことになっている。

 

慌ててその眼鏡をアマゾンで検索すると、3ドル程度のはずのものが55ドル以上になっている。しかも当日デリバリーできる商品は無し。ターゲットやセブンイレブンなどに電話するも、売れ切れ。「せっかくの日蝕なのに見れないのかも」と足元が浮き立つような焦りを感じ、YouTubeなどを検索しまくるとシリアルの箱でピンホールカメラを作って日蝕を見る方法が紹介されていた。さっそくシリアルの中身を空けて空箱を確保。二つ開けた穴の一つにアルミフォイルをはり、釘で穴を開けたエクリプスビューアーを作ってみたが、こんなもので本当に見えるのだろうか。念のために大きめの段ボール箱でも同じような方法でピンホールカメラを作成。さらに検索を続けると、溶接用のヘルメットでも太陽を見ていいそうだが、適切な暗さのフィルターがついたヘルメットもあちこちで売れ切れているとか。たぶん、今からHome Depotに行っても遅いだろう。

 

本当に日蝕を見ることができるのだろうか。不安を抱えたまま迎えた当日。娘を連れていくつかある日蝕観察パーティの会場であるCalifornia Institute of Technologyの広場に9時半ごろ到着。近くには駐車できず、数ブロック先から歩いていくと、あっちからもこっちからも老若男女が集まってくる。芝生の広場はすでに人でいっぱいだ。

 

折り畳み椅子を芝生に置き、早速シリアルの箱を取り出して覗いてみるが、太陽の映像をみているのか、単に穴から入った光を見ているのかが、分からない。ほとんどの人が専用眼鏡をきちんと持参しているが、中に同じようなシリアルの箱を持っている人を発見。穴の大きさを小さくすべきとのアドバイスを受け、持参してきた予備のフォイルとセロテープでさっそく修正したものの、やはりうまく映らない。日蝕はその間も、どんどんと進行している様子。ダメ元で、ダンボール箱の方の穴を修正。箱を頭から被ってみたところ、三日月型の光が箱の穴と反対側の面に映っている! ピンホールカメラ、成功したのか? しかしダンボール箱を頭から被った私は周りからどのように見えるのだろうか。

 

数歩離れたところに立っている、科学者風のグループに娘を遣わせ、例の眼鏡を貸して貰って太陽を見てこさせる。娘によると、ダンボール内の映像は、実物と似た形だとか。私もついにたまらなくなり、そこら辺の人にお願いして眼鏡を一瞬使わせてもらう。眼鏡を通してみると、赤い太陽がくっきりと三日月方になっている。ああ、これが日蝕。気温がぐんぐん下がって、辺りの照度が低くなっている。ダンボール内の映像も、ダンボールを目の前にかざしてやや距離をとってみると、くっきりと正確に眼鏡で見たのとはさかさまの映像が見えることが分かった。成功だ。

 

10時21分になると、あたりから歓声と拍手が起こる。日蝕が最大になったのだ。すると驚いたことにかなりの人が帰り始めるではないか。考えてみれば月曜日の午前中。みんな忙しいのだ。きちっとした身なりの若い人が近づいてきて、例の眼鏡を手渡してくれた。自分は帰るから、くれるというのだ。ありがたい! 娘も他の人から眼鏡をもらっている。

 

その後は念願の眼鏡をかけ、欠けた太陽が元の円に戻るまで、折り畳み椅子にゆっくりと身を沈めて観察した。