今日は、放射線測定におけるADCビット数の決定について取り上げます。

放射線計測において一般的な前置増幅器と波形整形器で処理されたアナログ波形は、波高値が放射線により付与されたエネルギーに比例します。この波高値の情報はADC(アナログ・デジタル変換器)により入手することになります。
このADCビット数は、検出器の(エネルギー分解能)と(検出上限エネルギー)に合わせて設定することになります。

注意)検出器の(エネルギー分解能)と(検出上限エネルギー)については、ここでは述べていません。

ただ経験上はADCビットは12or16ビットのどちらかだと思うので、
オススメの方法としては、12/16ビットそれぞれに対してADC分解能を求め、それから(エネルギー分解能)に対してADCビット数が足りているかどうか、(検出上限エネルギー)はどれくらいになるのかを確認するという流れで良いかと思います。

1) ADC分解能を求める

ADC分解能[eV/ADU]の定義
The definition of ADC resolution [eV/ADU] 

ADC分解能 [eV/ADU] = 動作電圧[V] / ADCビット数[ADU] x 1電子正孔対を生成するのに必要な光子エネルギー[eV/e-] / 検出器ゲイン[V/e-] 

ADC resolution [eV/ADU] = Vrange [V] / ADC bits [ADU] x ε_si [eV/e-] / g [V/e-]                        (1)
where Vrange is the input range of ADC, bits is the unit of ADC (=ADU), ε_si is amount of energy that making a pair of hole and electron in silicon, g is the gain, and q is the value of elementary charge.

例) 動作電圧範囲0-5V、g = 7.0 uV/e-のシリコン検出器(ε_si = 3.42eV/e-)の時、12/16bitのADCのそれぞれのADC分解能は?

12bit -> 596eV/ADU
16bit ->  37eV/ADU

2) エネルギー分解能に対して計算したADC分解能が要求を満たしているか確認する

例2)検出器のエネルギー分解能が500eV/60keVの時、12/16ビットのADC分解能は要求を満たすのか?

もし検出器のエネルギー分解能が500eV/60keVの時、60keVの全光電ピークに10点はサンプリング点があったほうが良いので、500eV/60keV % 10 = 50eV/60keVは最低必要ということになる。
したがって、
12bit -> 596eV/ADUなので、60keVにおいて1点しかサンプリングできないので使用は不適切である。
16bit -> 37eV/ADUは、60keVにおいて13-14点サンプリングできるので、こちらを使用すべきである。

12bitではなく、16ビットを使用すべきである。

3) 検出上限エネルギーを調べる

例3)上の12/16ビットのADC分解能の場合、検出上限エネルギーはいくつになるか?

596 [eV/ADU] * 2^12 = 37 * 2^16 = 2.4 MeV (12ビットも16ビットも同じ)

これは検出器ゲインと動作電圧による値なので、同じ値になる。
この値がもし低ければそもそもの検出器仕様を変更したほうが良い。

注意点:今回述べませんでしたが、検出器自体の分解能の評価は別途行う必要があります。まだ明確に関係性がわかってないのですが、両者の関係についてはまたわかり次第説明を追加したいと思います!