昨日、弁護士会の財産管理人研修会に行ってきました。
さいたま家裁より、裁判官、書記官を講師としてお招きして、
主に相続財産管理人として行う手続の基礎的なことを講義していただきました。
人が亡くなると相続が発生しますが、身寄りがなく相続人がいないケースや、
相続人がいても、全員が相続放棄してしまうケースがあります。
そのような場合、不動産や預貯金、負債等の相続財産のみが残ってしまうので、
債権者などの利害関係人の申立てにより、相続財産管理人が選任されます。
これは、候補者名簿に登載された弁護士の中から裁判所が選任することになります。
相続財産管理人の職務としては、
文字通り、残された相続財産を管理するとともに、
官報公告によって相続人を捜索、その存否を確定し、
債務があれば相続財産の中から弁済を行い、
被相続人と生計を同じくしていた者やその療養看護に努めた者などの
「特別縁故者」がいれば、その者に相続財産を分与することが挙げられます。
そのようにして清算された財産で、なお残余があれば、国庫に帰属させます。
ところで、この「国庫帰属」というのが、少々、曲者です。
国庫への引き継ぎについては、実務上、原則として相続財産を換価して現金で引き継ぐ
ものとされています。
選任された管理人向けの裁判所からの連絡文書にも、「現金で引き継いでいただく」旨の記載があるようです。
残余財産が預貯金や金銭等の流動資産のみであれば楽なのですが、
誰も欲しがらない山林や原野など、換価できない不動産が残るケースがあります。
このような場合、いつまでも管理人の職務を終えることができないことになり、
固定資産税の負担や土砂崩れや倒木等で隣地に損害を及ぼすなどのリスクを
負い続けることになってしまいます。
昨日は、このような観点からの質問も出ていましたが、
裁判所としても、換価できない不動産が残るケースについては、
いつも管理人の先生と頭を悩ませているとのことであり、
それでも、管理事務の終了は認めてもらえないようでした。
しかし、実務の本によると、不動産は、国有財産を管理する財務局に引き継ぐものとされており、
その不動産を所管することになる財務局との財産引継書の取り交わしをするようです。
しかし、財務局とて、管理に不適な財産は簡単には引き継いでくれません。
民法の条文をみると、残余財産については「国庫に帰属する。」(民法959条)とあります。
この文言からすると、当然に帰属するように読めるので、財務局はイヤとは言えないんじゃないかとも思えるのですが、
実務上は、財務局との合意が必要になっているようで、
裁判所としても、基本的には換価できることを待っていて、当然に不動産を国庫帰属させるという考えは採っていないようです。
そこで、私は、裁判所で「不動産を国庫帰属させる」旨の審判はできないのかと質問しましたが、そのような例は知り得る限りはないとのことでした。
調べてみると、家事事件手続法上、国庫帰属については審判事項とはなっていないので、
法律上、「無理」ということなのだと思いますが…
民法には「国庫帰属する」と規定されているのに、
国庫に帰属できず、財産管理人の事務を終了できない実務というのはどうなんだろうなぁ…
私が関東財務局に在籍していた頃から疑問に思っていたことですが、
昨日の研修でも悩みが解けることはありませんでした。
来年度の財産管理人名簿登録希望は出したものの、
実際に、そのようなケースに当たったらと思うと、ちょっと寒気がしました(^^;
少々、マニアックな話題でした。