初段時代までの自分の将棋は、攻めることが多かった。単純に、攻めが好きだったのだ。
そのような棋風だと、受けが弱い相手には快勝できるが、強豪には的確に受けられて、指し切りに追い込まれる傾向にある。
本局は中盤で、普段と逆の指し方をした。お相手からの攻めの「面倒をみる」指し方だ。
本局のポイント:盤面を制圧した角打ち
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【対局日】平成2年7月7日
【対局場所】東京将棋会館道場
【駒割り】香落ち
【持ち時間】無制限
【対戦相手の棋力】3段
【当方の手番】下手
【戦型】力戦_1七桂(vs石田流)
【手数】102手
【結果】下手の勝ち
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上手は、香落ち戦の定跡の一つと思われる「石田流」に組んできた。
下手は特に策があったわけではなく、いわば「手なり」の序盤戦。9筋の位はポイントを稼いだ形だが、右桂の活用を狙って1七桂としたのはどうだったか。遊び駒になりやすいだけに、序盤の勝負手ともいえた。
【第1図】開戦時の局面
https://shogi.io/kifus/258143
上手の飛車をターゲットに開戦するも、軽く飛車を横にかわされ、空振った格好に。ここから、上手が局面をリードしていく。
ここで下手は、大好きな攻めを諦め、馬を自陣に引き付けて粘りに出た。
この方針が良かったようで、持ち直す。
かなりの駒得になったものの、自陣の駒がバラバラになり、危なっかしい状況は続いていた。
【第2図】問題の局面
第2図は、次の一手が難しい茫洋とした局面だった。
ここで、3七角と指したのが、結果的に本局を制した会心の一手になった。
自陣の浮き駒に紐をつけることで、上手からの3九飛の狙いを未然に防ぐとともに、将来的に上手の玉を睨んでいる。つまり、攻防を兼備する意味を持ち、将来性に富んだ一手。
これにより、直後に2五桂と、遊び駒を働かせるゆっくりした手が間に合って、下手の指しやすさがはっきりした。
=================【昔の記録に書かれた「まとめ」】=================
本局は連敗脱出の一局である。当時、乱暴な指し回しで墓穴を掘っていたが、本局は「相手の面倒を見る 気持ちで」「じっくりゆっくりと指す」方針をとった。結果的に、以上の方針が当たって、相手のミスを引き出し、疲れない勝利を収めることができた。
本局のハイライトは(66手目の)3七角・・・会心の手だった。この後、(68手目の)2五桂まで回って、下手の優勢をはっきりさせた。
とはいえ、いまから見ると、序盤の作戦には疑問がある。香落ちの下手は、速攻で1筋を攻めないと、逆に後手番の損が出てしまう。香落ちはもっと研究しないといけない。
(平成3年9月29日)
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今読み直すと、「香落ちはもっと研究しないといけない」という感想には相当の違和感がある。
なぜなら、香落ち戦は、他の道場ではあまり指さなかったから。
そのため、だろう。香落ちの研究はさっぱり進まないまま、現在に至っている。いまだに、香落ち定跡を殆ど知らない。
【棋譜】
(2024年1月19日)