患者さんとの会話といっても、医療の話ではなく、雑談で、けれどとても印象に残ったこと。
Aさんは、60代後半で私が定期的に外来で診ている穏やかな方です
ご主人は、お亡くなりなっていて、義理のお母様と同居されていました。
義理のお母様と仲も良くて、とてもきちんとお世話をされていました。
近所に娘さんも住んでおり、週2-3回は仕事で帰りが遅い娘さんの代わりに保育園にお孫さんを迎えに行き
夕飯を食べさせたりもしてらっしゃいました。
(えらい!)
いつも笑顔で明るい方。
ところが、ある時、同居されていた義理のお母様がお亡くなりになってしまいました。
Aさんは、深く悲しみ、外来でも落ち込んでいる様子でした。
「先生、なんかやる気が起きないんですけど、、1日1回くらいはスーパーに行ったり外に出るようにしています。」
とおっしゃっていました。
今まで義理のお母様のお世話を頑張っていたAさんは、深い悲しみと、急にすることがなくなった空虚な感じなのかなと
思ったのと同時に、女性が元気が出ない時は自分を満たす事も必要かな?と私は少し思ったので、
「Aさん、たまには自分一人で、外にランチでも行ったらどうですか?」と何気なく言ってみました。
すると、、、
Aさんの顔にパッと光がさしたように、Aさんの顔がみるみる輝いたのです!
たった一言での変化に、私は、全身鳥肌がたつような感覚を覚えました。
医師になって15年以上仕事をしてきて、色んなアドバイスや治療の話をしてきたけれど、
たった一言で、あんな風に人の表情が光輝くのをみたのは初めてでした。
Aさんは「先生、ひとりでランチに行くなんて、考えた事がありませんでした。」とおっしゃっていました。
Aさんは経済的には問題なく、今までもご家族やお友達と外食はされていたと思います。
ただ、「自分だけのために」「自分を満たすために」ランチをしたり、出かけるという発想がなかったそうです。
自分だけのために出かけたりする事にも罪悪感があったそうで、
デパートに行くにも「何か他の用事があるから、ついでに行こう」とか「人のために買い物をする必要があるから行こう」
とか理由がないと行かなかったと、おっしゃっていました。
次の外来の時にAさんは、嬉しそうに話してくれました。
「今まで、自分一人の時は、家で作って食べた方が安いし、ランチするなんて考えたことがありませんでした。
でも、週1日だけ近くのカフェでランチするようにしたら、ワンコインのランチなんですけど、もう、美味しくて、幸せで♡
自分一人でランチするのって、こんなに楽しかったんですね!」と。
Aさんの場合、自分だけの贅沢をする事に
「罪悪感」を持っていて
今回、たまたま私に言われた一言で
自分だけの贅沢をする事に自分で「許可」が
出せたのだと思います。
Aさんように、真面目で、他の人の世話を一生懸命されてきている方って多いと思います。
そんな方こそ、時々は自分を満たしてあげて欲しい。
ランチ以外でも、好きな洋服を買うとか
自分一人で美術館に行くとか、などなど
自分のしたい事を心に聞いてみて
自分を満たすのに遠慮はいりません