元俳優、押尾学被告(31)=麻薬取締法違反で起訴=が東京・銀座のクラブホステス、田中香織さん=当時(30)=と合成麻薬MDMAを服用し田中さんが死亡した事件で、警視庁捜査1課は4日、田中さんが服用後に容体が急変したにもかかわらず放置、死亡させたとして、保護責任者遺棄致死の疑いで押尾被告を再逮捕した。逮捕は3度目。


捜査1課によると、押尾容疑者は「(田中さんの)容体が急変して、そのまま死亡した」などと容疑を否認しているという。



銀座のクラブホステス、田中香織さんの死亡から約5カ月。捜査1課は押尾容疑者を「保護責任者遺棄容疑」ではなく、「同遺棄致死容疑」で再逮捕した。



 現場となった六本木ヒルズのマンション一室は、押尾容疑者と田中さんの2人きり。捜査は難航したが、押尾容疑者が連絡をとった関係者から聴取を重ね、すぐに119番通報していれば「救命」できた可能性が高いと判断。同致死容疑での立件に踏み切った。



 捜査1課によると、田中さんは昨年8月2日、合成麻薬(MDMA)を飲んだ後、午後6時ごろに容体が急変。駆け付けた関係者が3時間以上も経過した午後9時19分に119番通報したが、救急隊が8分後に到着した際には既に死亡し、押尾容疑者は別の部屋に立ち去っていた。



 田中さんの容体急変後、押尾容疑者が元マネジャーや知人らに電話やメールをしていたことが分かり、会話やメールの内容も詳しく分析。司法解剖や複数の医師から聴取した結果、田中さんは午後7時ごろに死亡した可能性が高いと推定され、押尾容疑者が119番通報できる余裕は十分にあったと判断した。



 一方、押尾容疑者はMDMAについて「田中さんからもらった」と供述しているが、捜査1課は知人の衣料品ネット販売業、泉田勇介被告(31)=麻薬取締法違反罪で起訴=から譲り受けて田中さんに渡したとしている。この点も「保護責任者性」を補強する有力材料視されている。



 今回の再逮捕容疑は昨年8月2日、田中さんにMDMAを服用させて錯乱状態に陥らせた際、自らのMDMA使用発覚を恐れ、救急車を要請するなど適切な救命措置をとらず、田中さんを死亡させた疑い。押尾容疑者は「(田中さんの)容体が急変し、そのまま死亡した」と容疑を否認している。



 押尾容疑者は麻薬取締法違反(使用)の罪で懲役1年6月(執行猶予5年)の有罪判決が確定しているが、今回の逮捕は「捜査1課が満を持して動いた以上、公判で実刑になる可能性は高い」と司法関係者は指摘。



板倉宏・日大名誉教授(76)も、執行猶予が取り消された場合、懲役10年程度の実刑もありうるとしている。